おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2022.11.27column

久しぶりの高校生グループ見学💖と近年フィルム撮影が増えている背景について

今朝は、久しぶりに高校生グループが見学に。宮城県内の私立学校に通う2年生の皆さん。Welcome to our museum‼ 

私は所要で出かけなければならず、「どうしておもちゃ映画ミュージアムを見学しようと思ったのか?」「『ミュージアムと名乗っていながら、小さな古民家じゃないか』」とガッカリしなかったか?」等々、とかくマイナス思考の私は聞いてみたいことがあったのですが、聞かぬが仏、かも。

連れ合いから説明を聞いて、

実際に展示品に触れて体験してみるうちに、「オオーッ」とか「ワー」とかいう声が聞こえて、それぞれの興味・関心に触れることができた様子が垣間見えました。コロナ前は時折、彼らのような学校からの団体見学があったのですが、感染拡大が懸念されるようになって以降、まるでこうした眺めを見ることができずにいたので、とても嬉しい光景です。19日の中尾広道監督『おばけ』上映会参加者に尋ねたところ、20歳ぐらいでは既に「フィルム」が何かを知らず、30歳前後が辛うじて知っています。高校生の彼らに一生懸命フィルムのことも説明しましたが、どれぐらいフィルムを知らない世代の彼らに伝わったかしら。

話はやや逸れますが、コダックの人に聞いたところ、今16㎜フィルムへの関心が凄くて、生産が間に合わないくらいだということです。試みに最近の劇場公開作品でみると、カンヌ映画祭ACID部門に初選出された山﨑樹一郎監督『やまぶき』(16㎜)、マルセイユ国際映画祭招待作品の蔦哲一朗監督『雨の詩』(16㎜)、パブロ・ララリン監督によるダイアナ妃の伝記映画『スペンサー ダイアナの決意』(16と35㎜フィルム)、沖田修一監督が女優のんを主演にした『さかなのこ』(16㎜)、ジョーダン・ピール監督『NOPE/ノープ』(IMAXと65㎜のラージフォーマットフィルムカメラを使用)、ロカルノ国際映画祭で最優秀賞である金豹賞を受賞したエドウィン監督『復讐は私にまかせて』(16㎜)、カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞したヨアキム・トリアー監督『わたしは最悪。』(35ミリ)等とたくさんの作品がフィルムで撮影されています。今年カンヌ国際映画祭にコダックフィルムで撮影された新作は25作品も正式招待されたそうです。決してフィルムは過去のものではなく、現在も表現力の素晴らしさから用いられ続けている媒体だということをもっと知って貰いたいです。

映像で表現する時、価格や現像処理なども問題もありますが、デジタルにはデジタルの良さがあり、フィルムにはフィルムならではの良さがあるので、それらを取捨選択しながら自分の希望に沿った表現を追求できるようになっていけば良いなぁと思います。これからの時代を背負っていく若者たちに、フィルムのことを知って貰えたことは、次への希望に繋がります。

ようこそ、皆さん。出会えて嬉しかったです。実り多い京都旅行になりますように💗

【館長追記】

今回のブログで、新しい映画作品のフィルム製作について取り上げましたので、少し補足します。

なぜ、今フィルム製作が増えているのか? 一つは、原版が残ることです。デジタル・データを作業中にうっかり消去してしまいやしないか、編集作業中に重要な映像素材が増え、もしかして消えてしまうのではないかという不安から、映像原版をバックアップする意味があります。二つ目にもっと重要な点として、フィルムは白から黒までの階調が深いことが挙げられます。デジタルで暗いところを記録するため、ゲインというのを上げますが、灯りなどは白く飛んでしまいます。この階調をラチチュードと呼ぶのですが、ネガ・フィルムは軟調にできていて、デジタルの約3倍の階調を持っています。もちろんデジタルカメラでも、3CCDという形で、明かるいところ、中間、暗いところと、フィルムに相当する階調を記録することができるのですが、そのカメラはとても高価で、アマチュアが簡単に映画を撮れるというレベルのカメラではありません。ですから、大学などで使った16mmカメラで先ずフィルム撮影して、そのネガ・フィルムからデジタル化すると中間の階調幅がとても広く記録できるのです。こうした利点もあってハリウッドでは今や映画フィルムにこだわる撮影者が多いのです。単に画素数の問題ではないのです。

先に書いていますように、今コダック社では、16mmフィルムが量産されています。コストなどを考えてのことで、映画製作のハードルを下げ、若い人たちも映画を作れるようになったことを意味しています。若い世代がフィルムを知らないというのではなく、知らない人は勉強不足だからです。映画を大学で習った人たちや映画製作の情報を知ると自然に映画フィルムの良さが分かります。今、映画フィルムでの製作が注目されるのは、フィルムの良さを知った人が増えてきているからです。

私たちがフィルム・スキャナーを導入したのはアーカイブ映像だけでなく、新しい映画製作にも応援できるという意味でもあります。16mmで製作したい人達の相談にも乗りたいと思っています。

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