おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2023.05.20column

古典写真技法を駆使した写真展「carnation×reincarnation」無事終了

第11回目を数える「KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭2023」KG+の会場に念願叶って初めてなることができました。4月15日から5月14日までの1か月間、Classical Photograph古典写真技法を広める活動をされている若林久未来さんとアルマ・シャンツァーさんのお二人による写真展「carnation×reincarnation」を開催し、おかげさまで期間中に多くの新たな出会いがありました。

12折りした上掲マップの黄色06に、作品写真付きで当館での展示の情報が載っています。同じ黄色で目立つ縦長の旗を毎朝表に出して会場であることをお知らせし続けた効果があり、これまで当館のことをご存じじゃなかった人たちが次々と玄関の暖簾をくぐって来て下さいました。

開館日当日の連れ合いによるトークイベント、翌16日の古典写真技法の一つサイアノタイプでアニメの仕組みが分かるソーマトロープを作ってみるワークショップ、23日イランから留学中の女性アーティスト3名をお招きしてのイランティータイムと、それぞれ振り返りを書いていますので、お時間があるときに各リンク先をクリックしてご覧頂ければ嬉しいです。

以下に記憶に残った出会いから幾人かをご紹介。

4月20日フランスの日刊紙リベラシオンで仕事をされているライターのイザベルさんとカメラマンのアランさんが来て下さいました。もちろん目的は写真展の取材でしたが、当館の活動にも大変興味を示してくださり、「欧州へ来るときは必ず連絡をして」と連絡先を教えて貰いました。この日は天気が良かったので、若林さんから教えて貰ったばかりのサイアノタイプで、自分でも日光写真を試していたところ。お二人はそういった様子にも興味を示して下さいました。

世界地図のパリにピンを刺してマッピング。カメラマンの男性は、日本のブリキ玩具に関心があったので、手元にあった本をプレゼントして喜んで貰いました。これも文化を通しての民際の一環。

香港から語学の勉強に来日している彼は、古典写真に関心を持って、期間中3回も足を運び作家のお二人とも交流。私が手にしているのは彼のカメラです。

ニュージーランドのオークランドから来館いただいたご家族はとてもフレンドリーで、楽しんで展示をご覧頂き、良い時間を共有できました。他にも大阪のドイツ文化センター繋がりでハンブルグから見学に来て下さった写真家の人もおられました。最終日の14日は14時で終了しましたが、写真展出展者の皆さんは他の会場を見に行くチャンスがなかったことから駆け足で見に来てくださった方が夕方まで幾人もおられました。

その内のお一人がシュヴァーブ・トムさん。私もほとんど写真展会場に足を運べていないのですが、お客様から「ザ ターミナル キョウトには、防空壕がある」と教えて貰ったので、「現代に遺る防空壕」見たさに出かけました。目指す防空壕は2つあり、地下の狭くて四角い空間にもそれぞれ写真が展示してありました。この防空壕については別に自分のブログで紹介できたらと思っています。

玄関入ってすぐに天井から下がるこの作品が目に飛び込んできました。シュヴァーブ・トムさんの作品です。

玄関ホール壁面にも彼の大きな横長の作品が展示してあります。スポーツ判定に用いる高速カメラを用いた作品のようです。ザ ターミナル キョウトでの展示テーマは「室礼」で、木工職人さんと写真家さんがコラボした作品を美しい京町家の造りを活かして展示。その中にアルマ・シャンツァーさんの作品も並んでいて驚いたのですが(上掲写真にも2作品が写っています)、こうして湿板写真の面白さを広く知って貰うことが出来て良かったと思います。「アルマは、この四角い箱を作るのは勿論、4本の足の取り付けも全部自分でやった」のだと、5月9日当館で出会ったDANJIさん(下掲写真中央)から聞きました。モノづくりが得意な彼が指導したのだそうです。

一緒に来館下さったCafé Froschのすみさん(上掲写真左)ともおしゃべりしていたら、共通の人々の名前が次々と出て。しまいにはポーランドの“Kino Manual”のお二人の名前も。「じゃ、2019年11月に来館の時、手描きしてもらったフィルムを手に記念写真を撮って送ろう」と提案して実行したところ、早速ポーランドから“Hello! Nice to hear you! It is a nice surprise with Cafe FROSH, we met Sami-san during out last trip to Japan several years ago. It is very nice that you have met in your Museum. Kino Manual.”と返事がきて、何て世の中は広いようで狭く、面白いのだろうと思いました。

さて、5月14日、最終日にご家族と来館いただいた先のシュヴァーブ・トムさんにも、ホームタウンをピンでマーキングして貰ったら、チェコのプラハに。その後カナダに移住して、現在は京都に居を構えておられるのだそうです。

ご家族は映画関係の仕事をされているので、このカメラを気に入って写真を撮りました。

お父さんが懐かしがるだろうからと、16ミリのBOLEXの写真を送信しておられたのも印象深く。シュヴァームさんは組み立て式の光学玩具を以前作って展示したことがをあるそうなので「今度機会があればお借りして披露しましょう」と提案しました。

もうお一人、大阪公立大学でガラスの研究をされている山本さんとも知り合いました。手元にあった「ピープショー」やアニメーションを楽しめる道具などを見ながら、「連携して面白い道具が作れないかしら?」などと話しました。お名前が“柱”さん。親御さんの思いが伝わって来て、名は体を表す、そのままの印象。

古典写真技法に魅せられた人々がクロージングパーティーにお集まりいただき、和やかな時間を過ごしました。若林さんの教室に通うと決めた人や、既に師事して今回のKG+で「ギャラリーヒルゲート」で展示をされたMaco(上掲写真後姿)さんもおられます。作品展タイトルは「原発:時を超える風景」で、「もう少し先に知り合っていたら、会場に駆けつけて観に行ったのに」と残念に思いました。

一昨日、ご本人からこの写真展のために作られた図録が届きました。古典写真の一つ、1842年に考案されたヴァンダイク・ブラウン・プリント技法を用いた写真。どれも大きな作品なのだそうです。添えられていた文章に「作品は原発をテーマとしたもので、風景の中でこの人工的な構造物がどのように見えるのか。また人の一生をはるかに超えて存在し続ける“核の時間”を内包する原発が“ひとの時間”と共存することが可能なのか、など原発がかかえる様々な問題を考えるきっかけになってほしいとの思いで構成したものです」と書いてあります。本来の姿を浮かび上がらせるため、色彩を排し、精細な描写を欠くこの手法を採ったのだそうです。

今は簡単に誰でも写真が撮れますが、目的の表現に近づくためにいろんな写真技法を知っているのも大切なのだなぁと思います。

こうした素晴らしい方々との出会いが持てたのも、写真展会場になれたからこそ。若林久未来さん、アルマ・シャンツァーさん本当にありがとうございました。そして、期間中にお越しくださった皆様にも心より御礼を申し上げます。ありがとうございました!!!!!

 

 

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