2023.04.25column
古典写真技術のひとつ「サイアノタイプ」でやってみました‼
4月15日から始まった「KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭2023」のKG+で、初めてその作品展示会場になりました。出展作家は若林久未来さんとオーストリア・ウィーン出身のアルマ・シャンツァーさんで、作品展のタイトルは「carnation×reincarnation」。そのタイトルに込めた思いについては、23日に実施した「イラン・ティータイム」の振り返りの時に紹介できればと思います。その前に16日に実施した「みんなで手作り青写真ソーマトロープ製作ワークショップ」で日光写真の面白さを知って、暖かくて良く晴れた20日にやってみた様子を紹介します。興味がある方は挑戦してみて下さいね。
最初に作業場所を整えます。暗室での作業になりますので、全体を暗く出来る状態にします。ミュージアムのホール全体を遮光カーテンで暗くしました。感光溶液がこぼれると取れませんので、汚れても平気なビニールシートをテーブルに広げます。段ボールを置いてその上に印画紙を作る白い紙を置きます。16日にも挑戦したのですが、その時はソーマトロープを作ろうと思って厚紙にしたので、結果厚すぎて失敗しました。ツルツルした紙は液剤がのらず不向きです。塗布した感光剤を洗い流すときに用いるトレイと定着溶液を入れるトレイを別々に用意します。このトレイは裏庭の水道水が使える流し場に設置しました。感光溶液を塗布した紙を早く乾かすためのドライヤー、暗い場所で作業する時の手元明かり、定着液を吹きかける霧吹き、作業用ビニール手袋、溶液塗布用の刷毛、感光溶液を入れる容器(今回はしっかりした陶器を使用し、作業しないときは光を浴びないよう上に蓋をしました)、ここには写っていませんが、感光溶液を用意します。
その溶液は①クエン酸鉄アンモニウム(ちょっと高額)・精製水②フェリシアン化カリウム(赤血塩とも。比較的安価)・精製水の溶液の二種類で、それぞれ別々に作って、作業する直前に合わせます。クエン酸鉄アンモニウムとフェリシアン化カリウムは写真用品を売っている店で購入できるそうです。16日ワークショップの指導者若林さんが2剤を調合した溶液の残りをペットボトルに入れて渡して下さいましたので、それをアルミホイルでしっかり巻いて遮光し、冷蔵庫で保存していました。20日はその溶液を使用しました。あとは、写し出す素材です。
今回は骨董市で入手したばかりの「日光写真種紙」。
画用紙に刷毛で感光溶液をまんべんなく塗布します。余り何度も繰り返し過ぎると、紙の表現がこすれて玉になるのでほどほどにして、ムラにならないよう丁寧に塗ります。
ドライヤーをあてて紙を乾かします。
印画紙が乾いたら、今回は下に透明のアクリル板を置き、その上に手作り印画紙を載せ、その上に写したい素材を置き、上から別の透明アクリル板を置きました。アクリル板は風で写したい素材が飛ばないようにするための抑えです。
裏庭に置いて日光にあてます。印画紙が黄緑色をしていたのが、直ぐに太陽光と反応して水色に変化。最初は感光10分で試し、次は感光5分で試してみました。
これは3回目の時の写真。上下アクリル板に隙間ができないように、上から煉瓦で抑えをして出来るだけ原画が密着するようにしました。
地面の草が呼吸しているので、曇って見えます。印画紙は青色に変化しています。その日の太陽光の強さ加減もあるのでしょうが、この時は15分でやってみました。
印画紙を取り出して、黄緑色の液剤がとれるまで、トレイに張った水につけて予備洗水をします。
上からホースの水を掛けたらこのような残念な結果に。決して直接水をかけて洗い流そうとしてはいけません。
予備洗水をしたら取り出して、霧吹きで定着液をかけます。最初に吹きかけたところが残念な結果になってしまったので、次の時は定着液を入れたトレイに1分浸しました。こちらの方がうまくいきました。より一層鮮やかな青色に再発色しました。その後トレイに張った流水で洗い流し、乾燥させて出来上がり。講師の方は16日オキシドール溶液を用意されましたが、20日は教えて貰った通り、家庭用の塩素系漂白剤(白物用)を20%、水80%の割合で薄めた溶液でやってみました。
上から感光5分、感光10分、下二つが感光15分で、下から2番目は流水で溶液を落とそうとしたもの、一番下は定着液を入れたトレイで浸したもの。
というわけで、このように「サイアノタイプ」と呼ばれる古典写真技法で、カメラを使わずとも太陽光で写し取ることが出来ました。時間があるときに、これを15枚に切り取ってソーマトロープの台紙に貼り、裏面を描いて完成させてみようと思っています。
16日の時に、同じように感光溶剤を刷毛で塗ったすりガラスに葉っぱを1枚置いて、太陽光で感光させ、予備洗水、定着液に浸してから水洗いして乾かしたら、葉っぱの形がすりガラスに写し出すことができました。アルマさんたちは「太田タイプ」と言って囃してくれましたので、20日は別のすりガラス3枚にガラスネガを用いて同様にやってみました。
これが、ガラスネガ(下からライトボックスで照射した写真)。おそらく明治か大正時代のもの。お母さんと子どもが写っている2枚と祇園祭を写した写真。さて、どうなりますか。
すりガラスに感光剤の溶液を塗布し、ドライヤーで乾かします。
アクリル板の上にすりガラスを並べ、その上にガラスネガをそれぞれ置き、上からアクリル板を置いて、裏庭で太陽光にあてます。たまたま来客があり対応している間にどんどん時間が過ぎてしまい感光させた時間は計ってはいませんが、すりガラスでは、感光する面を間違えたのか、水洗の段階で絵が流れてしまいました。失敗です。でも、同じ手順で画用紙に感光溶液を塗布した印画紙では、以下のように上手くできました。
ネガ乾板の乳剤の濃度によって、左のものは、もっと露光時間が必要だったのでしょう。とはいえ紙に写った映像は、やはり良いですね。色味も味わいがあり、結構嵌りそうな自分を感じています。
24日京都芸術センターへ行き、「KG+SELECT 2023」の「小池貴之写真展 ダモイ―シベリア鉄道-」を見てきました。その最初部分に掲示してあったのがこの1枚。「サイアノタイプ紅茶調色」と書いてありました。作者がおられたら質問するところでしたが、サイアノタイプで作品を作った後に、紅茶の液に浸して作られたのでしょうか?今回の写真展を契機に知ったばかりの「サイアノタイプ」ですが、いろんな手法、表現があるのだと知った次第です。
今日来館いただいたアトリエシャテーニュで写真を教えておられる大野深美さんと話していたら、ガラスにサイアノタイプでこんなきれいな写真を写し出すことができておられました。ゼラチンを使うと良いのかなぁ。う~む、奥が深い。また挑戦してみたくなりました。
【6月20日追記】
4月20日KG+の取材でお越しくださったフランスの日刊紙リベラシオンのライターであるイザベルさんからメールが届き、この日同行のアランさんが撮って下さった写真が添えられていました。嬉しいので載せます💗