おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2015.06.25column

ようこそ フィルさん

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昨日来館されたPhil Kaffen(フィル キャフェン)さん。どんな方かも知らずに対応しましたが、とにかく話していてとっても楽しくて、日本映画について詳しい人。連れ合いの夢を叶える役に立ちたいとミュージアムの番をしていますが、にわか勉強で私が知っていることは極わずか。フィルさんと話していて、そのことがとても恥ずかしかったです。

日本語での話だけでなく、書くことも読むことも上手。一体どうして日本語の達人になったのか聞きたくてウズウズ。で、かつて熊本県の高校でAETの仕事をした経験があると教えて貰いました。どうして日本を選んだのかも尋ねると、「もともと文学が好きだった。日本文学の翻訳が原本と違うと思い、日本語を勉強した」との返事。そのうちに映画にも関心を寄せるようになったのだとか。

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話は監督の溝口健二さん、脚本家の依田義賢さん、キャメラマンの宮川一夫さんらにもおよびましたが、全てご存じ。「じゃ、」というわけで家族ぐるみでお付き合いしているロチェスター大学准教授のジョアン・バーナディさんと、彼女の尽力でメッセージをいただいたジョージ・イーストマン・ハウスのシニアキュレーターであるパオロ・ケルケ・ウサイさんの応援メッセージを張り出した前に案内。二人とも著名でご存じだったのは勿論のことでしたが、この応援メッセージを日本語訳して下さった小川ショウタさんのこともご存じで、「つい先日一緒にドイツへ行ってきたばかりだ」と聞いてまたビックリ。ミュージアム開館直前に翻訳者探しでバタバタした経緯があり、米国在住の小川さんにお礼が言いたいとずっと思っていました。奇跡的な出会いに感謝し、早速伝言を頼みました。

フィルさんとの出会いが嬉しくて名刺を交換。ニューヨーク大学准教授で、東アジア比較文学を研究されている方でした。彼がここを訪れたのは、ハーバード大学東アジア言語・文明学部准教授のアレクサンダー・ザルテンさんの紹介によるそうです。アレックスさんはミュージアムがまだ工事に入る前(実は今も工事中)に来館され、古い京町家に興味津々でした。その時彼と話したことを伝えると「如何にも彼らしいな」とにっこり。

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「どうしてミュージアムを開館しようと思ったか?」と聞かれ、「残存率が極めて低い日本の無声映画を何とか発掘し、復元し、次世代に文化遺産としてフィルムで残したい」という思いを伝えました。そして、その活動の契機になったのは6月14日に上映した無声映画「僕らの弟」でしたが、最も記念すべき仕事として手掛けたのが、傾向映画の代表作「何が彼女をそうさせたか」(1930年、鈴木重吉監督。写真は館内に展示しているポスター)だと話しました。返ってきたフィルさんの言葉は「もちろん知っています。有名な作品で、大学の授業で見せています」。この日不在の連れ合いが一緒に聞いていたなら、どんなに喜んだかと思いました。

1993年にロシアで発見されたこの作品は、1997年の京都映画祭で上映されたのを皮切りに、東京国際映画祭、海外の映画祭で演奏付きで上映されました。後に紀伊国屋書店から「クリティカル・エディション・シリーズ」として「戦艦ポチョムキン」「メトロポリス」など世界の名作のひとつに納められ、作品に寄せて一文を書かれたのが、6月14日に京都大学人文科学研究所主催で行われたレクチャー上映会「記憶の場:昭和の記憶と映画都市京都」で司会を務められた小川佐和子・同人文研助教でした。同日夜に当館で開催した「第1回無声映画の夕べ」で、連れ合いは初めて、小川先生と挨拶する機会に恵まれました。

「日本映画」を媒体に、太平洋をまたいで繋がり合えた喜びに満ちたこの日、近々アメリカに戻るというフィルさんの為に、その前日入手したばかりの貴重な映像をご覧いただきました(何の映像かは、今はまだナイショ)。地球は大きくて、とてつもなく広いと思っていましたが、人と人の出会い、交わりによって、「小さな世界」でもあると感じた一日でした。

     It's a small world

♪ 世界中誰だって 微笑みあえば仲良しさ
  みんな輪になり手をつなごう
  小さな世界
  世界はせまい 世界は同じ
  世界はまるい ただひとつ   ♪

 

 

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