おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2022.04.24column

「京都のれん探偵」をご覧になった方から、珍しいフィルム3本と映写機の寄贈を受けました‼

4月22日午後に来館いただいた男性4人の仲良しさん。そのうちのお一人、大阪からお越しの古田照久さん(昭和22年生まれ)は、11日に放送された「京都のれん探偵」(17時半ごろ)を偶然ご覧になっていて、「あっ、ここだ!」と思って訪ねてきてくださったのだそうです。私の顔を見て「この人や!」と仰って‼ 思っていたより映っていたのは短くて、あっという間でしたが、それでもミュージアムが無声映画をはじめとするフィルムの保存活動をしていることは伝わったようです。SNSでも反応はあり、中には「MBS毎日放送『よんチャンTV』の『京都のれん探偵』のコーナーで、おもちゃ映画ミュージアム(@info51596118 )が紹介されていた。 一度行ってみたい場所だったので、もう少し映してほしかったなぁ」という書き込みがあり、とっても嬉しかったです。放送日のゲストには“ミルクボーイ”のお二人も出演されていたので、無理をしても2階で映像編集作業をしていた連れ合いを呼べばよかったと後悔。お二人とも大阪芸術大学出身で、一人は放送学科ですが、もうお一人は映像学科卒業。連れ合いの授業も受けておられて、「あっ、僕の先生や!」となれば、もっと賑やかな展開になったのではないかと勝手に想像しています。

ともあれ、放送をご覧になった古田さんは、これまで大切に保存されていた16ミリの手回し映写機とフィルムを手に来館。丁度どこかに寄贈しようと考えておられたのだそうです。

プリンスの16ミリフィルム用手回し映写機。箱に仕舞って大切にされていたので綺麗で可愛らしいです。60年ほど前、一生懸命お金を貯めて、大阪松屋町の店で1600円で購入したそうです。コードが傷んでいたので、当日は当館にある16ミリ映写機でご覧いただきました。その様子をこちらに。

フィルムは大河内傅次郎主演『丹下左膳第二篇 剣戟の巻』(1934年、日活京都撮影所)の一部。監督は「時代劇の父」とも呼ばれる伊藤大輔。当館所蔵35ミリフィルムの“おもちゃ映画”と同じバージョンでしたが、16ミリなので、画質的には当館のものの方がきれいで、しかも「終」もあるという違いがありました。「『丹下左膳』の映像は覚えている」と古田さん。

続けてご覧いただいたフィルムは『仇討選手』(1931年12月18日公開、日活太秦撮影所)の一部でした。権力者にもてあそばれ、俄か侍に仕立て上げられた市井の人が無残に殺されていく様子を描く傾向映画のひとつで、内田吐夢監督の傑作のひとつとされていますが、ちゃんと残っていないのが惜しいです。当館に1分ほどの35ミリフィルムの“おもちゃ映画”があり、見比べてみると、当館所蔵の方がタイトルがあり、画質や字幕ももう少し綺麗なのですが、寄贈いただいた16ミリフィルムの方が30秒長く、主人公が自害(切腹)する場面までは映っているので、とても貴重な映像です。

当館の35ミリフィルムに、その新たに見つかった場面を加えて編集したのが、この映像です。

原作・脚本は小林正。主人公の由松が大河内傅次郎、その父を三枡豊、お静を山田五十鈴が演じています。日活のデータでは、115分だったそうですので、わずか1分30秒の映像しか残っていないのが残念です。

今の子どもたちは“ちゃんばら”という言葉を知らないそうですが、古田さんがこのフィルムを家でご覧になっていたのは、小学校5、6年生の頃だそうですので、「チャンバラごっこの思い出がありますか?」と尋ねてみましたら、「家には棒が何本もあり、風呂敷を身に着けてチャンバラごっこをした」そうです。他にも「フィルムは、(フィルム)セメントで接合したが、つけるところの厚みが出ないよう、剃刀の刃で先端をこすって薄くした」と子どもの頃の思い出を語ってくださいました。記憶にしっかり刻まれているチャンバラ映画を手回しの映写機で楽しんだ頃の懐かしい日々。

一緒に話を聞いていた8ミリ研究家の河田隆史さんは「1960年ぐらいに、16ミリや35ミリの家庭で楽しむためのフィルムが松屋町で売られていたことが分かり、この後は8ミリに移行するので、その最後の最後の時期に販売されていたということが分かり、興味深い」と話しておられました。

さて、もう一つ16ミリフィルムがありましたが、テレビ局で用いられていたフィルムで、パーフォレーションが片側にしかありません。両穴なら裏掛けしたり、上下を逆にして試せるのですが、片穴では破損した送り孔も一つなので、フィルムスキャナーにかけられず、今回はupしていません。

タイトルは『どろん秘帖』。1960年5月29日~1961年2月26日に40回にわたって、ABCテレビで日曜日の12時15分~45分に放送されていた番組。主な出演者は、戦後の上方漫才を代表する兄弟コンビの中田ダイマル・ラケットさんと、宝塚映画(東宝)女優の環 三千世さんら。“どろん”は忍術で、“秘帖”はスパイという意味のようで、忍術学校を舞台にした連続喜劇。演出は昨年5月16日に亡くなった澤田隆治さん。澤田さんの代表作に『てなもんや三度笠』や『花王名人劇場』などがあります。古田さんのお父さまの知り合いに朝日放送の方がおられて、“フィルムが好きな少年だ”ということで、オープニングに流したものを譲ってもらったのだそうです。

“大阪テレビフィルム”と書いてありましたが、ネットで検索すると、1956(昭和31)年に西日本で最初に開局した民間のテレビ局だそうです。1959年6月にラジオ単営局だった朝日放送(ABC)と合併し、ラジオ・テレビ兼営局となった朝日放送のテレビジョン放送部門となったようです。

ひょっとしたら、このフィルムも珍しい一本なのかもしれません。それもこれも、姉が手作りしてくれた黄色い暖簾が風に揺れて、それが「京都のれん探偵」の毎日放送アナウンサー福島暢啓さんの目にとまった幸運から。全くもってありがたい繋がりです。感謝の言葉しか思い浮かびません!!!!!

今日、古い電気コードを取り替え、さらに60年前の電球をLED電球に取り替えて映写してみました。小さく映っているのが見えますでしょうか。早速展示に加えています。22日に当館の映写機で上映した折の本体は熱くなっていましたが、LEDなら熱くならずに触っても安心です。けれども、このちっちゃな電球が4,920円もしたので、この価格にやけどしそう😢

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