おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2023.04.14column

16~23日にアーカイブ映像「京の活動写真 下鴨映画祭」を無料配信、ぜひご覧ください‼

かねてご案内していた「京の活動写真 下鴨映画祭」の動画配信の準備が整い、いよいよ4月16~23日に無料で視聴できます。

この映画祭は尾上松之助遺品保存会松野吉孝さんが全力投球して主催され、たくさんの団体や個人から協賛、後援、協力を得て、去る3月26日京都府立文化芸術会館で実施されました。無声映画時代、人々は活動写真弁士(以降、活弁士あるいは弁士と表現)の名調子を楽しみながら、生演奏付きでご覧になっていました。その体験をして、楽しんで頂こうと東西の弁士さんと楽士さんに登壇頂き、無声映画4作品を上映しましたが、その時の記録映像を16日から1週間限定で無料配信されます。

松野さん(前列右から二人目)が「尾上松之助のことを忘れないで欲しい」と一生懸命努力され、その一つの形が「京の活動写真 下鴨映画祭」としてこの日に結実しました。松野さんの熱い思いが多くの人の心に届き、ご覧のようにたくさんの人が「下鴨映画祭」実施にご協力くださいました。

受付などでお手伝いいただいた地元の皆様方のおかげで、スムーズな入場になりました。会場には松竹下加茂撮影所や林長二郎(後の長谷川一夫)に関する資料、日本最初の映画スター“目玉の松ちゃん”こと尾上松之助に関する資料を多数展示。

催しは長時間に及びましたので、お疲れなくご覧になりやすいように当日撮影した映像を4つに分けて配信されます。期間中は映画祭公式ホームページhttps://shimogamoeigasai.comへアクセスすれば、どなたでも、何度でも無料でお楽しみいただけますので、ぜひお知り合いにもご案内いただければ嬉しいです。

 

◎オープニング=松野さんの開会の挨拶、下鴨神社の新木直人宮司様の挨拶に続いて、京都府知事からのメッセージが紹介されました。

その後、当館館長太田米男の講演「日本映画と京都-二条城撮影所から始まった京都の撮影所-」。

下掲写真は「京都の映画は後に日活社長となった横田永之助(Y)、牧野省三監督(M)、日本最初の映画スター尾上松之助(O)のYMOトリオによって始まった」と話している場面です。

次いで、映画『落花の舞』(1925年、日活大将軍撮影所、池田富保監督、尾上松之助主演)の断片約5分上映。この断片は先ごろ国立映画アーカイブで発見されました。検閲によって切除されたので当時は上映されなかったのですが、それだからこそ残った貴重な映像です。

片岡一郎さんの活弁と和洋合奏団6名(カラードモノトーン主宰の湯浅ジョウイチさん、フルートの鈴木真紀子さん、バイオリンの木ノ下亮子さん、ピアノの天宮遥さん、チェロの石川理史さん、マリンバの金丸 寛さん)の生演奏付きでの上映です。

 

◎第一部=早稲田大学演劇博物館館長(当日は副館長)児玉竜一先生の講演「松竹下加茂撮影所が生んだ『二枚目』の代名詞 林長二郎(長谷川一夫)の軌跡」と、『鳥辺山心中』(1928年、松竹下加茂撮影所、冬島泰三監督、林長二郎主演)の約40分を坂本頼光弁士と和洋合奏団の生演奏付きで上映。

今回の催しは松竹下加茂撮影所が開所して100周年を迎えた記念の意味合いもあり、撮影所があった場所周辺の皆様に諸々大変な尽力を賜りました。残念ながら1950年7月24日に起きた松竹下鴨撮影所火災でフィルムも焼失し、『鳥辺山心中』は僅かに残ったうちの貴重な1作品です。

400名の定員いっぱいの客席で嬉しい眺めです。

早稲田大学演劇博物館副館長児玉竜一先生の巧みな話術で「林長二郎(長谷川一夫)の軌跡」を拝聴後、

坂本頼光弁士と和洋合奏団の演奏で『鳥辺山心中』を上映。会場には、往年の長谷川一夫ファンがたくさんおられたように見受けました。

 

第二部=国立映画アーカイブ学芸課長の入江良郎さんの講演「史上最古にして最大!映画スター第一号『目玉の松ちゃん』の功績-」と映画『豪傑児雷也』(1921年、日活大将軍撮影所、牧野省三監督、尾上松之助主演)約20分を上映。

日頃から松野さんだけでなく、私どもも大変お世話になっている入江良郎さんの講演「『目玉の松ちゃん』の功績」に続いて、『豪傑児雷也』を上映するのですが、このスライドに用いられている美しいカラーポスターのように、この作品で松之助が演じるガマガエル忍術は子どもたちの心を掴み、一大ブームを巻き起こしました。

片岡一郎弁士(左から二人目)、関西を中心に活躍目覚ましい大森くみこ弁士、マツダ映画社期待の新人尾形直虎弁士の3名による声色掛け合いと和洋合奏団の演奏付きで上映。ちなみに片岡一郎さんは、日本に映画が入ってきてからの初期資料をたくさん蒐集しておられて、575頁ページにも及ぶ『活動写真弁史 映画に魂を吹き込む人びと』(2020年、共和国)を著された方でもあります。

 

第三部=日本映画俳優協会・理事長の大林丈史さんの来賓あいさつに続き、映画『忠臣蔵』(1926年、日活大将軍撮影所、池田富保監督、尾上松之助主演)約70分を活弁士界重鎮の澤登翠さん、片岡一郎さん、山城秀之さん、山内奈々子さん、坂本頼光さん、大森くみこさん、尾田直虎さんの弁士7名と和洋合奏団による生演奏付きで上映。東西で活躍する弁士と楽士がこんなに大勢集まって出演というのは大変珍しく、大変豪華な無声映画上映プログラムです。『忠臣蔵』は当館で発見されたもので、海外での上映を何度も重ねていて英語字幕付きです。海外の方も映像を見ながら内容もお分かりいただけるので、ぜひともこの時代劇をご覧頂ければ嬉しいです。

日本映画俳優協会理事長の大林丈史様と所属俳優さん4名のご挨拶に引き続き、いよいよこの日のフィナーレを飾った映画『忠臣蔵』上映。

舞台向かって左に弁士7名が居並び、声色掛け合いで当時さながらに演じます。

4作品上映を無事に終えて、勢揃いした弁士さんと楽士さん。マイクを手に挨拶をされているのが、澤登翠さん。『忠臣蔵』は圧巻の出来栄えで、おそらく会場におられた皆さんも大いに楽しまれたことだろうと思います。

大役を終えて笑顔で並ぶ出演者の皆様。

花束を手にした松野さん。盛会のうちに無事終えることが出来て本当に良かったですね。以下に新聞各紙が報道して下さった紙面から。

とりわけ京都新聞記事には私どもが言い続けている思いも載っていましたので、その個所に赤線を引きました。2018年8月24~26日京都で開催した「第13回映画の復元と保存に関するワークショップ」の折り、初日の見学・実習の7コースの一つとして、私は希望者を引率して「関西文化学術研究都市」を案内しました。ここには国会図書館関西館や国際電気通信基礎技術研究所、ロボット研究などの先端研究施設が入っているけいはんなオープンイノベーションセンターなどがあります。街開きからずっと見続けている学研都市、あるいは「日本のハリウッド」と呼ばれた京都市内のどこかに国立映画アーカイブの関西館があれば良いなぁとずっと思ってきました。その願いを、初めて新聞という影響力があるメディアで活字にして頂けたことを大変嬉しく思います。

話を戻して、松野さんの松之助への熱心さは比類なく、きっと天国の「松ちゃん」も一生懸命取り組まれた松野さんの活動に喜ばれたことでしょう。松之助は大衆に絶大な人気がありましたが、その演技は歌舞伎に由来する旧態依然としたものとされ、当時の評論家からは評価に値しないと言われていました。けれども、それは喜ぶ大衆に応えての演技であり、今回上映した『落花の舞』や『忠臣蔵』からは、池田富保監督と共にリアリズムを重視した演技を追求していたことが分かります。こうしたことはフィルムが残っていたからこそ言える話です。今回のことも契機となって松之助再評価に繋がることを期待しています。

苦労人だった松之助は、自分の周りの人たちばかりではなく、関東大震災で被災した人たちへの支援や、住む家のない人たちのために出世長屋を建てるなど社会福祉にも多大な貢献をしました。そのことを称えて、当時の蜷川京都府知事が1966年、「葵公園」に松之助の胸像を建立しました(その様子が上掲京都新聞右下の写真)。それから長い年月が過ぎるうちに草木が生い茂ってうっそうとし、治安も懸念される状態だったことから、松野さんや周辺の住民らが京都府に要望し、その願いが叶って2018年から公園の改修工事が始まりました。

この写真は、3月25日、リニューアルした「葵公園」(京都市左京区の鴨川と高野川の合流点に位置)除幕式の様子。

松野さんと一緒に、連れ合いも招待を受けて参列してきました。松野さんの努力が実った記念すべき式典であり、下鴨映画祭は、その完成を記念しての意味合いもありました。

茂り過ぎていたクロマツやウバメガシなどの広葉樹約100本を伐採し、桜やモミジを植樹し、全体的に見通しが良くなり、一面芝生を敷き詰めています。芝生は今は養生中ですが、夏以降に開放される見込みです。下鴨神社への園路が新しく整備され、市民が歌や踊りなどのパフォーマンスを発表できる舞台も設けられています。綺麗に整備され、多くの人々が憩える場になることを泉下の「目玉の松ちゃん」も喜んでいることでしょう。周辺情報掲示板には、私どもの恩師依田義賢先生についてもマッピングと説明文が載っていて、そのことも嬉しく思います。

ともあれ、松野さんの熱い思いで開催出来た「京の活動写真 下鴨映画祭」のアーカイブ映像配信をお一人でも多くの方にご覧頂きたいです。再度の掲載になりますが、4月16日(日)正午~23日(日)23時まで、映画祭公式ホームページhttps://shimogamoeigasai.comへアクセスして、どうぞ皆様ご覧ください。宜しくお願いいたします‼

【追記】

友人の書き込みで知りましたが、4月18日付け毎日新聞京都版でも掲載されていました。配信は23日23時までです。東西の活動写真弁士と楽士が大勢登壇しての無声映画上映会は大変稀な機会です。ぜひこの機会をお見逃しなく、ご覧頂ければ幸いに存じます。

 

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