2017.03.27column
ミュージアムを介して、楽しい出会いが続きます
25 日は所蔵フィルムのデジタル化(簡易テレシネ)作業の合間に、幾組かのお客さまがおいでくださり、終日賑わって楽しい一日でした。最初にいらしたのは、確か2度目の東京町田の海軍骨董館の原千秋さん。収集したニュース映像の断片の中から日本の空母が映っている映像をご覧いただき「これも重要です」「これも」と次々言っていただき、修復と保存をしてきた甲斐があったと思いました。
そしてやや遅れていらしたのは、原さんを案内いただいた東京の中原逸郎さん。昨年2月20日に「石田民三監督生誕115年記念上映+研究発表会」をして下さった方です。その時の様子はこちら。中原逸郎さんは、今年も研究発表会をしたいと申し出てくださいました。正式には改めてご案内いたしますが、6月3日または4日に演題「外(よそ)モノが創った京都花街―石田民三と吉井勇を中心に―」です。中原さんから以前に発表された論文を手土産にいただきましたので、そのことにも触れて、別に書こうと思います。
次にお越しくださったのは、K-POP アーティスト(韓国の歌手グループ) 超新星のファン、2人。メンバーの一人ソンジェさん初主演映画『Guest House』が今年公開されると教えてもらいました。5月にはファンミーティングのイベントも計画されているそうなので、せっかく来てくださるファンの方に喜んで貰えるよう何か工夫できればと思っています。それにしても入隊中のソンモさんを思う優しくて熱い思いは、雑誌取材のため、当館に半日ソンモさんとご一緒しただけの私にとっても、とても嬉しいことです。
続いてのお客様は南大内児童館の小学生5人と引率の先生2人。中には以前お母様と一緒に来たことがある男子も。
児童館が当館を見学施設に選んでくださったことが、とても嬉しいです。5月4日に京都の四条大宮周辺で開催される「第5回大宮グッドフェスティバル」に初参加することにしました。大宮駅前ロータリーでデモンストレーションをし、ミュージアムでマジックロール、ソーマトロープ、新しいフィルムに絵を描いてもらって作るアニメーションなどの体験をして貰おうと思っています。もちろんサイレント時代の貴重なアニメ―ションの数々もご覧いただきます。当日、写真のような光景がたくさん見られたら良いなぁと願っています。
続いて来館されたのは、東京藝術大学演奏藝術センター非常勤講師の葛西周(あまね)さん。7月15日(土)に研究発表していただく音楽学研究の白井史人さんの先輩にあたられ、当館の無声映画時代の楽譜や以前復元した記録映画『金鵄輝く建国の聖地』をご覧いただきました。博士論文では紀元二千六百年のことを扱われたそうで、今後『金鵄…』の音楽について調べてみるとおっしゃっていただけましたので、いずれ発表していただく機会もあるでしょう。
私としては先日来、寄贈していただいた占領下の台湾を記録した日本映画DVD(『南進台湾』など含む。1940年)や1945~70年にかけての台湾映画史をまとめた本『台湾電影撮影技術発展概述』、韓国映像資料院が復元した『授業料』(1940年)の活用を模索していたのですが、葛西さんから『南進台湾』について論文を書かれたばかりの奈良教育大学の劉麟玉先生のことを教えて貰いました。さらに、お会いした翌日「26日に同志社女子大学で開催された国際シンポジウムで劉先生に早速当館に寄贈資料があることをお伝えした」と連絡をいただきました。有難いことです。いつか劉先生に講演していただき、これら貴重な映像の上映会ができたら良いなぁと願っています。
閉館後にふらりと来館されたのは、イタリアからお越しの音楽史研究のElena Abbadoさんとチェロ奏者Fracesco Dillonさん。語学が不得手な私は身振り手振りで対応したので、お二人とは十分対話ができたとは言いにくいのですが、それでもお互いの思いは通じたと思います。エレナさんは3月19日~23日東京藝術大学を主会場にアジアで初めて開催された第20回国際音楽学会に参加されたのだそうです。音楽研究では世界で一番規模が大きい学会の5年に一度の大会。2時間ほど前に帰られた葛西さんも丁度その学会のことを話されていたばかりなので、その偶然にびっくり。エレナさんと葛西さんに面識はなかったそうですが、早速葛西さんにエレナさんのことをお伝えしました。いつかどこかでお会いされる機会もあるでしょう。こうして志を同じくする人同志が繋がっていくのは、素敵だなぁと思います。
丁度葛西さんにお目にかけたばかりの戦前の楽譜がありましたので、それらと戦前のアニメーションをご覧いただきました。日本にはとりわけ戦前のフィルムが残っていなくて、それらを発掘して、復元し、次世代に継承できるようできるだけフィルムで保存する活動をしていることを、しどろもどろになりながら説明しました。エレナさんとフランチェスコさんから「それは大切な活動だ」と言っていただけたので、それとなく伝わったのだろうと思います。
フランチェスコさんは28日と31日に東京でチェロの演奏会をするそうです。チラシがあればと思ったのですが「ホテルに置いてきた」と言われたので、せめて記念写真をとリクエスト。気軽に了承していただき、二人仲良くポーズまで取っていただきましたのに、あろうことかメモリーカード挿入を忘れていて幻に…。Facebookでお二人と繋がりましたので、正直に詫びたところ、彼から「we´ ll take a photo next time in Italia! :-))!」と返事が届きました。
彼との会話に「CINECITTA」という単語が聞きとれたので、つい先ごろイタリア旅行された向平さんご夫妻から土産にいただいたばかりのこの本にサインをして貰いました。後でネットで検索しましたら、彼はイタリアで有名な演奏家。詳しくはこちらを。スラリと背が高く、とてもハンサム。その彼が弾くチェロの音色はどんなに魅力的でしょう
イタリアで毎年開催されるポルデノーネ無声映画祭(Le Giornate del Cinema Muto)は、同ジャンルの映画祭では世界でもっとも信頼のある大規模なもの。その映画祭にひょっとしたら今年、ミュージアムに関連することがあるかもしれないので、新聞記事のコピーをお見せしながら「ポルデノーネに行くかも」と伝えました。それで、「(写真が失敗したのなら)、今度はイタリアで一緒に撮ろう!」と返ってきたのです。そして、「ok! keep us informed about the dates! ciao!」と。もはや想像の翼はイタリアへ‼
「28日と31日の演奏会には、ミュージアムの番をしないといけないから、残念ながら聴きに行けない」と申し訳なさそうに言いましたら、「わかった、2年後に京都で演奏会をするから、その時招待するよ」と言ってくださいました。夢か幻か、二人から笑顔で握手を求められ高揚した気分のまま、「ciao!」と挨拶して見送りました。
翌日はドイツから帰省中の山下秋子さんが来館。彼女にはつい先日レポートを書いていただいたばかり。レポートの中にも登場するドイツの演奏家・ヴ―フヴァルトさんへの届け物をお願いしました。山下さんは、いつも日本とドイツの文化の懸け橋として応援してくださっています。
そして、休館日の今日は台北の大学でドキュメンタリーの勉強をしている徐麗婷さんが来館。
所蔵している記録映像を興味深くご覧になっていました。やはり身振り手振りでの対応になりましたが、気持ちは通じたよう。彼女と一緒に届いたばかりのガラス種板を見ました。こうしたものをご覧になるのは初めてだそうです。
海外に渡っていたものです。可愛いですね。他にも宮大工さんが持っておられた姫路城を撮影した昔のガラス乾板が何枚か新しくコレクションの仲間入り。これらの調査もこれからです。「台湾にもこうしたガラス種板があれば興味深いので、調べてみては?」と声かけしました。
ミュージアムを開館したことで、世界中から所蔵品に関心を寄せる人々が集まってくださることは、大きな喜びです。縁あって所蔵することになったモノたちに、言葉が話せるとしたら間違いなく「ありがとう」と言うことでしょう。