おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2015.12.17column

「第5回無声映画の夕べ」のお客様

12月12日午後3時から、「第5回無声映画の夕べ」を開催しました。上映したのは、今年発見された『実録忠臣蔵』(1926年、日活大将軍、池田富保監督)。日本最初の映画スター尾上松之助さんが最晩年に出演し、天の巻、地の巻、人の巻の全てが揃っていたことから映画史的にも貴重だと話題になりました。全編通しで活弁付上映するのは、京都国際映画祭2015に於いて、10月18日大江能楽堂で片岡一郎さんの活弁、川嶋信子さんの薩摩琵琶演奏による上映に次いで2回目。活弁をお願いしたのは、以前からぜひ聞いてみたいと思っていた坂本頼光さん。東京からお越しいただきました。

当初の心配をよそに、おかげさまで30席全てが埋まり、活気に満ちた京町家になり安堵しました。本当は、赤穂浪士が本懐を遂げた14日にしようと思ったのですが、浪士ゆかりの地でそれぞれイベントがあり、そういう人たちが参加できなくなるのではないかと考えて、前倒し。その甲斐あって、東京から赤穂観光大使の方が真っ先に申し込みをしてくださいました。

続いて名古屋、奈良、兵庫、大阪と広範囲からのお申し込みが連なり、更には、シンガポール、さらに遠いカナダからもおいでくださり、感激しました。カナダからのお客様は、業界紙ヴァラエティのアジア映画批評家としてトップのマギー・リーさん。多くの映画祭、博物館、美術館でのコンサルタントとキュレーションの仕事をされている女性で、やはり映画関係のお仕事をされているシンガポールの友人チョーリン・リーさんと一緒に来館いただきました。二人を案内してくれたのは、以前台北映画祭のリポートを寄稿していただいた中西佳代子さん。

おもちゃ映画ミュージアムにとって今年大きな出来事は、この『実録忠臣蔵』発見と7月に台北映画祭に招待されたことです。この映画祭を契機に、たくさんの人が台湾から来てくださり、温かい交流が続いています。11月15日に台北映画祭プログラミングディレクターのミンさんがご主人と来館されましたが、ミンさんに中西さんを紹介してくださったのが、マギー・リーさんでした。

11月24日に放送され、12月22日にも世界140か国に向けて再放送されるNHKワールド日本映画紹介番組『J-FLICS』では、夏に行った「映画の復元と保存に関するワークショップ」、台北映画祭、大江能楽堂での『実録忠臣蔵』上映などそれぞれの様子も含めた「おもちゃ映画ミュージアム」についても、マギーさんがスタジオで紹介してくださいました。そうした優れた方々に実際にミュージアムに来ていただき、日本独特の活弁上映をご覧いただいたことは、大変嬉しいことです。この縁が次につながれば良いなぁと願っています。

他にも、映画『何が彼女をそうさせたか』(1930年、鈴木重吉監督)を作った帝国キネマ創始者山川吉太郎氏のひ孫さん、映画研究者、映画をこよなく愛する人々など様々な顔ぶれの人々が集まってくださいました。とりわけ嬉しかったのは、尾上松之助さんのお孫さんが来てくださったことでした。その存在をイベント前日の11日に初めて知って、とても驚きました。偶然新聞で上映告知記事をお読みになった方が彼女に連絡を取ってくださり、おじいさまである松之助さんの映画を観てもらうことができました。ご本人はこれまで余り多くを語ってこられなかったようですが、お父様の房吉さんから、松之助さんが立派な人だったと良く聞かされたそうです。「一般の主婦になってますので、子供のころにブロマイドやフィルムを遊んで回してみていた思い出ばかりがあります。一度実際に活動写真がどんなものか、自分の目で観てみたいと思って、来ました」と挨拶されました。

この作品が作られた時代は、既に阪東妻三郎さんらが登場。池田富保監督の演出は、旧劇からの脱却が図られ、リアリズムを重視しています。松之助さんの演技も、それまでの「旧態依然」「変わり映えがしない」などと評されていたものではなく、大石内蔵助1役に徹し、彼の心理を繊細に見事に演じています。松之助さんの活動写真人生集大成となった『実録忠臣蔵』を、お孫さんに観ていただけて本当に良かったなぁと思います。

[第5回無声映画の夕べ]キャプション入リサイズjpg

 予定時間をオーバーしての終演となり、家路を急がれた方も多くおられました。段取りが悪く、ご迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳ございませんでした。残ってくださった方々で、いつもの記念撮影。Facebookつながりだった幾人もの人々と、実際にお会いでき、おしゃべりできたのが楽しくも、嬉しくもありました。

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