おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2022.10.10column

楽しい集いだった‼「三大喜劇王のニコニコ大会Part3」

昨日の「三大喜劇王のニコニコ大会Part3」は盛況のうちに無事終えることができました。お母さまから「勧められた」という若いカップルが、活弁と生演奏で観る無声映画の面白さにすっかり心をつかまれた様子が余りに嬉しかったので、終了後に残っていた皆さんと手回し映写体験をして貰ったり、正会員・サポーター特典用に用意した片岡一郎弁士の解説付きDVD『ちゃんばら時代』をご覧いただいたりして(たくさんの拍手がおきました)、いつまでも無声映画の余韻に浸っていたい雰囲気の上映会でした。

本番直前の活動写真弁士大森くみこさん(左)とサイレント映画ピアニスト天宮遥さん。

作品解説をしてくださったチャップリンコレクター河田隆史さん。それぞれの作品の見どころを書いた資料も配布して下さいました。河田さんの背後に映り込んでいるポスターは、連れ合いらが復元した『何が彼女をそうさせたか』です。鈴木重吉監督、高津慶子主演で1930年に帝国キネマ長瀬撮影所で製作された傾向映画の代表作です。後で少し触れますので書き添えました。

河田さんのわかりやすい解説に熱心に聞き入る参加者の皆さん。遠方からも来てくださり、ご覧通りの定員いっぱいで催すことができました。参加者の皆様、登壇者の3名様、誠にありがとうございました‼

いつもの振り返りとはちょっと違って、早い目の集合写真掲載で。文字通り「ニコニコ」してご覧いただいた作品を上映順に紹介しますと、

1.チャップリンの『スケート』 The Rink、1917年、25分、大森さんの活弁付き。

チャーリー・チャップリン(1889-1977)の絶妙なスケートのコミック演技が最大の見どころ。チャップリンがイギリス時代にカルノ劇団で『スケーティング』という寸劇を演じて鍛えていたことが活きています。

2.キートンの『白人酋長』The Paleface、1922年、10分。

バスター・キートン(1895-1966)はヴォードヴィルの舞台役者の両親のもとに生まれ、4歳から舞台に立ちました。1917年に映画デビューし、「偉大なる無表情」とキートン帽と呼ばれるカンカン帽がトレードマークでした。

3.ロイドの『その日暮らし』From hand to mouth、1919年、17分、大森さんの活弁付き。

ハロルド・ロイド(1883-1971)はキートンやチャップリンと違って、ストーリー上の状況で笑いを作ります。珍妙な体の動きや抜群の運動神経による可笑しさで、ギャグは作りませんでした。どこにでもいる平凡で気弱な若者を演じるコメディアンでした。

4.チャーリー・チャップリンの『消防夫』The Fireman、1916年、14分。

10月15日の京都国際映画祭2022では、同じ作品に大森さんが活弁を付けて上映します。欧米では今も昔も無声映画は音楽付きで観ますので、どのような言語の人でも「観ればわかる」ように作られてきました。一方、話芸が発達した日本では、音楽のみならず活弁を付けて楽しむ文化がトーキー化されるまで続きました。昨日参加いただいた皆さまには、ぜひ活弁ありと無しとの違いをお楽しみください。

なお、1~4については、新着情報でも紹介していますので、ご参照ください。

5.おまけ上映したのは、アンディとビリーの『酔っぱらいの放浪者』、1926年、12分。

アンディ・クライドとビリー・ビーバンの作品の原題について“Whipering Whiskers”ではないか、という助言が喜劇映画研究会新野敏也代表より得られました。マック・セネット製作で、監督はデル・ロード。IMDbよれば「私立探偵と間違われたビリーは、盗まれたルビーの足跡をたどって云々」とありますので、おそらく当館にあるのは映画のラスト部分なのでしょう。テンポの良さやギャグのセンスなど超秀逸でした。

新野さんによれば、ANDY and BILLY in"The RAILROAD STOWAWAYS”のタイトルは、1962年にフジテレビで放映したアメリカのTV番組「テケテケおじさん(原題Funny Manns)」用に改題されたものだそうです。この放映時に活弁ナレーションを担当していたのが渥美清さんだったそうです。アメリカ本国の放映年が1961年で、日本では1962年でした。当館所蔵の映像には、放浪者二人が鉄道に無賃乗車し、見回りに来た車掌に切符がないことを見抜かれて、急いで食堂車に紛れ込みますが、結局見つかってしまって、食堂車の厨房で働かされることになり…という場面が出てきます。

この二人のコンビでは、他に“Hayfoot,Strawfoot?”  “Circus Today”  “Trimmed in Gold” “Wandering Willies”もあって、短編計5作品が1926年に製作されています。 “Wandering Willies”については、2018年1月26日に開催した「新野敏也のレーザーポインター教室4」で上映して頂きました。ビリー・ビーバンは柔和な外見と大きな髭が特徴で、マック・セネット製作の映画で主演を演じるスターの一人でした。1926年にアンディ・クライドとコンビを結成して「放浪の二人組」を演じてヒットします。

ともあれ、三大喜劇王に限らず、今話題になっているチャーリー・バワーズや今回上映したビリー・ビーバンやアンディ・クライドなど今では埋もれてしまった感がある喜劇俳優さんたちがまだまだたくさんおられたことが分かります。新野さんによれば「アンディ・クライド&ビリー・ビーバンのコンビ作品、または単独主演作は、製作当時ほとんど日本に輸入されなかった」そうです。初めてこの作品を観た大森さんは「活弁を付けたくなりました」と話していましたが、ぜひ、こうした無声映画時代末期に活躍し、今では忘れ去られている名喜劇俳優さんたちの作品を集めて、催しができたら良いなぁと思います。

すべての作品は、天宮遥さんの華麗なピアノ演奏付きでお楽しみいただきました。

活弁士になって10周年を迎えた大森さんは、その記念公演として10月2日OSシネマズ神戸ハーバーランドに続き、11月4日にも第七藝術劇場で『何が彼女をそうさせたか』(前述)を活弁上映します。アクリル板にもその作品ポスターが映り込んでいますね。演奏は鳥飼りょうさん。山口ももえさんによるアコーディオンミニライブもあります。お問い合わせは同劇場へ。

11月5日には、大森さんと天宮さんのコンビで、ユニヴァーサル映画『オペラ座の怪人』(1925年日本公開当時の邦題)が上映されます。会場は毎日新聞オーバルホール。同新聞大阪開発㈱へ要予約。天宮さんも11月3日10時、神戸のパル・シネマ祭50周年記念オープニングで、ハロルド・ロイドの『福の神』の演奏をされます。

無声映画をライブで楽しむ催しが増えているのは本当に嬉しいことです。未経験の方は今日から一部無料配信が始まっている京都国際映画祭2022のプログラムでぜひ体験してみて下さい。当館からはジキルとハイドの物語『狂える悪魔』(1920年)とラリー・シモン主演『気弱なドライバー』(1925年)を、喜劇映画研究会からはラリー・シモンの『ホテルマン』(1921年)とキートンの『カメラマン』(1928年)がご覧いただけます。京都国際映画祭2022の公式サイトから登録をして、ログインなさってください。

 
 
スクリーン下に置いた「ニコニコ大会」のポスターが良いですね。ただ、提供・京都映画株式会社とあるのは、疑問です。京都映画株式会社は、戦後松竹太秦撮影所の所有者として管理した会社でしたが、配給会社ではありませんでした。今は存在せず、撮影所は松竹が直接運営しています。その会社が「ニコニコ大会」を催していたのでしょうか?これも知っておられる方はお教えください。
 
このポスターでは、ロイドが一番大きく描かれていて、キートン、そして人気者のチャップリンが意外に小さいのが気になった大森さんが、「チャップリンのファンの方、挙手!」「キートンが好きな方は?」「ロイドがいいという方は?」と挙手を求められましたが、意外や意外、チャップリンが少なかったです。河田さん、内心ショックを受けたかな?キートンには根強いファンがいますし、ロイドは新発見が多いことから新鮮に感じて人気があるのかも。古くて新しい“活弁”の魅力の広がりと、フィルムの発見による無声映画時代のスターの発掘と再評価が今後ますます進展することを願って、9日の振り返りとします。長々お読みくださってありがとうございました。

 

 

 

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