おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2023.03.22column

盛況だった大阪アジアン映画祭2023(1)~特別企画「大阪万博と髙橋克雄」

3月10日から開催された第18回大阪アジアン映画祭は19日無事に終了しました。アジア全域から51作品を選び、10日間にわたって大阪市内5会場で上映。今年はコロナ禍でできなかった海外からのゲストをお招きしての開催で賑やかさが戻り、チケット争奪戦の活況でした。私が見に行った台湾や香港の映画では、彼の地からお越しのお客様、あるいは日本にお住まいになっている方々が沢山集まって下さっていたようで、映画のシーンと同時に感情を表現し、トークイベントでも通訳を介する前にリアクション。アジアの映画祭として大きく育ち、国内外広範囲の皆さんが楽しみにされているイベントになっているのが実感できました。映画は、その国の文化を理解するのに有効なメディアです。普段なかなかアジア各地の映画を観る機会がありませんから、映画を通して相互理解を進める場としても貴重だと思います。

当館が企画に協力したプログラム「大阪万博と髙橋克雄」が3月15日13時、初めて会場に加わった大阪中之島美術館で上映されました。

2025年に大阪・関西万博が開催されるのを控え、1970年大阪万博当時につくられた髙橋克雄監督の貴重な映像を、修復に尽力されたご息女髙橋佳里子さんのご協力でご覧頂きました。右端で本プログラムの説明をされているのが、大阪アジアン映画祭事務局長の川喜多綾子さんです。

大阪万博は映像の時代到来を告げる博覧会でしたが、当時作られた映像はほとんど残っていないのだそうです。そうした中で日本政府館5号館展示映像として高橋監督が作られた映像『ミセス21世紀』が残っていたのは、とても貴重なこと。当時は『ルドルフとイッパイアッテナ』で著名な杉浦範茂さんの原画をもとに6面のマルチスクリーンに色鮮やかな21世紀未来予想図を映しました。佳里子さんによると「当時はビデオもなく、録画もできなかったので、その場限りの展示映像作品でした。万博後に杉浦さんの原画を監督が一枚一枚撮影したスライドを編集・撮影して制作」されたのが、この日ご覧頂いた「復刻版」です。当時のタイトルは『21世紀の生活』。

ドローンのようなものが浮かぶ空、筒状の交通網がビルを通り抜けた近未来予想図を色鮮やかに描いています。今やドローンが活用されていますし、来る2025年万博では空飛ぶタクシーが披露されると報道されています。

タッチパネルを操作しようとしている人でしょうか。自動掃除機が作動するシーンもありました。1970年に夢見ていた生活が、次々現実になっています。

この映像が髙橋監督の遺品の中から見つかったのは2018年春のこと。ほぼ半世紀ぶりに日の目を浴びたのにその映像はとても鮮やかです。髙橋監督、よくぞ残して下さいました。

『オーストラリアと日本 東経135度の隣人』は、髙橋監督が万博でオーストラリア館を担当され、それまで深い交流があったことから思いつかれてシナリオを執筆。これが監督初めての海外旅行によるドキュメンタリー映画です。完成は万博開催後の1971年2月。

このフィルム発見に至ったのは、2018年3月一通の問い合わせを佳里子さんが受けたことから。「父が小学6年のときに万博会場でロケに協力した映画のことを知りたい。一緒に出演した同級生がこの年還暦を迎えるため、再上映したい」との依頼でした。ロケに協力したのは、大阪府の桃園小学校と新設されたばかりの津雲台小学校の6年生児童たちでした。万博会場だけでなく、新校舎内の教室にもカメラが入ってオーストラリア館案内役の女性と日本の子どもたちの交流が記録されています。

髙橋監督たちは国内配給も希望されたそうですが、海外に配給されるばかりだったそうで、今回の大阪アジアン映画祭が国内での初公開になります。映画に出演されていたかつての小学6年生の皆さんも、この観客の中におられたのなら良いのですが。

この作品に日本語字幕をつけて下さったボランティアの皆さんです。急な企画で時間がない中での作業になってしまい迷惑をおかけしましたが、本当に助かりました。字幕有りと無しでは理解を助けるのに雲泥の差です。心から感謝申し上げます。この出会いを大切にして、これからも連携していけたら良いなぁと願っています。

3作品目は髙橋監督の代表作の一つ『かぐやひめ』(1972年)。この作品の日本語字幕は、2018年10月18日~11月11日当館で「平和へのメッセージ 映像作家 髙橋克雄の世界」展をした時に随時上映するために当方で付けた思い出深い作品。日本を紹介する目的で12か国語で作られ、皇室外交に大いに貢献した作品ですが、日本語版は作られなかったのだそうです。2018年の展覧会の折には、佳里子さんのご協力で人形三体をお借りして展示しましたが、これは東宮御所以来30年振りのことでした。

それにしても大勢のお客様にご覧頂けて本当に嬉しく思います。ご来場いただいた皆様に心より御礼を申し上げます。ありがとうございました‼ 佳里子さんによると、1970年大阪万博以前に高橋監督は『一寸法師』(1966年)を作って、1967年カナダのモントリオール万博に参加されます。その時に海外の映像展示力に圧倒されて、研究のためそのままアメリカに渡ります。翌年テキサス州で開催されたサンアントニオ国際博覧会の日本政府館での映像展示に成功し、その仕事で評価されます。その映像『夢の国・ジパング・開国前夜』(1968年)が佳里子さんの手元にあるそうなので、来年Part2 として上映出来たら良いなぁと思っています。

 

記事検索

最新記事

年別一覧

カテゴリー