2026.06.28column
国立映画アーカイブのクラウドファンディングの衝撃と溜息、そして怒り

先日からSNSで国立映画アーカイブのクラウドファンディングが話題になっていますが、今朝の京都新聞社会面に大きくこのことが取り上げられていました。ぜひゆっくりと読んでください。
地元紙だから、見出しに「京都の撮影所」の大きな文字も見られますが、なにも国立映画アーカイブに保存されているのは京都の撮影所作品ばかりではありません。栩木章さんが4月館長に就任されてから、毎月のように届いていた展覧会や特集上映会の案内郵便がなくなったのは理解できますし、冊子状の印刷物もなくなったのも致し方ないとは思います。「予算が大幅に減らされた」というのは耳にしていたからです。
でも一方で、経済産業省は、DeNAのスマホゲーム開発に15億円支援をするとのことです。全く税金の使い方に納得いきません。自分たちの目先の儲けばかりに血走って、長い間積み重ねてきた人の精神の柱である「文化」を顧みず、蔑ろにする姿勢に私は怒りを覚えます。このクラウドファンディング実施の問題については、世界の映画関係者も憂いて発信して下さっています。何も国内だけ、内輪の問題ではないのです。映画は人類のかけがえのない記憶遺産です‼
当館の引っ越しに際し、お金がないことから皆様に応援を呼び掛けたクラウドファンディング。おかげで目標額を上回って達成でき、今があるわけですが、実際に挑戦してみてなかなかに大変でした。優秀なスタッフさんが国立映画アーカイブにはおられるので、問題なく進行されているのでしょうが、私どもの場合は引っ越し作業と並行してでしたから、仲間の手も借りながら夫婦二人でやっていくのは思い返しても大変な日々でした。そして、正直に言えばクラウドファンディングの会社への支払いも相当額に上り、目標額1億円と言えども実際の活動に使える金額はもっと少なくなるので、寄付金を呼び掛けるのが一番、それぞれの方の善意にお答えする方法だと思います。
けれどもクラウドファンディングのサイトを使うことで、国立映画アーカイブの仕事内容が広く理解していただけ、アーカイブの重要性を知っていただく良い機会になるとも思います。栩木館長様が就任前、私用で当館に来られた折り、私が公的映画博物館設置への協力をいろんな施設や機関にお願いしていても難しいという話をした時に、「全く人ごとではない」と仰っていた姿が印象に残っています。困難な時期に就任されたと思いますが、現政権は異常な政策続きをしています。そう遠くない将来に政権が変わることを期待し、本当に国民にとって、世界の人々にとっても大切な文化遺産が次世代に継承できるようにしていかねばと強く思います。
facebookで舩橋 淳(ふなはし あつし)監督が投稿されている文章を載せます。
国立映画アーカイブが25日より、クラウドファンディングを開始。第一目標は1億円。
専用サイトには「活動の安定的な継続と将来への発展に向け」と理由があるが、そこでは背景の全ては説明されていません。ストレートな国政批判になるからです。
なので、報道や僕ら映画人が言葉を尽くして、何が起きているか話す必要があります。
まず安倍・菅政権から続く「文化を産業化して稼げ」という政府全体の成長戦略が、脈々とありました。
去年11月財務省の財政審が「国立博物館・美術館は公費(税金)への依存度が高く、入場料収入が不十分である」と厳しく指摘。
文化庁は当初、文化財の保護や研究の観点から抵抗しましたが、財務省からの予算削減圧力を前に妥協せざるを得ず、今年2月末「2030年度までに展示事業費の65%以上を入場料などの自己収入でまかなう」というノルマを中期目標に書き込むことになりました。
29年度に40%を下回る場合、「社会的に求められている役割を十分に果たせていない」と判断され、再編の対象となるそうです。
この公費依存度を引き下げる方針に従い、予算も削減。
国立映画アーカイブの2026年度の運営費交付金は3億5856万円。
25年度の6億3665万円、24年度の6億8291万円から大幅に減らされました。
フランス(約38億円)や韓国(約15億円)など海外の同種施設と比べて元々規模が小さかった予算がさらに半減する危機的状況に陥りました。
稼がないと、 「社会的に求められている役割を十分に果たせていない」
国立の文化機関の貢献度をはかる指標は、収益でよいのでしょうか?
経済的指標で測ることができない、文化貢献度がありますよね。
同アーカイブ(かつて僕らはフィルムセンターと呼んだ)9万本以上のフィルムや貴重な映画関連資料があり、定期的行われる様々な特集上映が一本520円で見られます。
学生時代ここに足繁く通い、小津、成瀬、中川信夫、川島雄三、ルノワールなどの特集にどっぷり浸りききりました。文字通り、私の映画的記憶・リソースの多くがここで勉強させていただいたもの。
映画文化先進国には、必ずこのように「入り浸れる」映画アーカイブがあります。ニューヨークには、MoMA、Anthology Film Archive, Lincoln Center があり、学生証があれば無料もしくは大幅割引。このような場所は、映画ファン、映画人が生まれるゆりかごといえます。
脈々と続く映画文化の歴史に、激安で触れることができる場所が、どれだけ大事なことか。
お金のない学生時代、500円玉ひとつで映画を見て心が豊かになったことが何度とあります。
同時に、過去の貴重なフィルムを発掘・修復・保存し、映画文化がさらに豊かになるような発展努力も継続しています。
我が国が誇ることのできる映画の殿堂とは、マジでここだと思います。
だれでも格安で見られることで広がってきた映画文化の裾野が、いま蹂躙されようとしています。
映画だけではありません。国立美術館・博物館の文化的貢献度を、経済的指標で図る愚に対し、僕たちは異を唱えていかなければいけないと思います。