2026.06.06column
京都芸術大学学生さんたちの見学
5月26日京都芸術大学大学院教授大西宏志先生と学生さんたち11名がご来館。「芸術環境分野特論13 情報メディア特論 学外研修」という長いタイトルの見学会でした。先日、大西先生から当日の写真と学生さんたちの感想文を送って頂きましたので、ご紹介します。
先ず、大西先生との出会いから。昨年11月9日、京都文化博物館で開催された「IAD/国際アニメーションデー2025 in 京都」の会場でのことです。

ASIFA-JAPAN(国際アニメーションフィルム協会日本支部)会長でもある大西先生が、10月28日が“国際アニメーションの日”になった背景を話して下さり、モノを知らない私は、 “国際アニメーションの日”があることをその時初めて知りました。1888年、フランスのシャルル・エミール・レイノーが “テアトル・オプティーク(視覚劇場)”を発表し、1892年10月28日パリのグレヴァン蝋人形館でこの装置を用いて、世界で最初の動く絵の興行をしました。10月28日はそれを記念して制定されたということです。
以来、私の頭の中にはこの “テアトル・オプティーク”が居座り、何とかこのミニチュアを作って展示出来ないものかと妄想しています。その前日10月27日がユネスコの“世界視聴覚遺産の日”ということもあり、この学びを活かして、今年は10月25日(日)川本喜八郎監督長編アニメーション『蓮如とその母』(1981年)を上映しようと思っています。講師には、川本さんを傍でご覧になっていた東京工芸大学アニメーション学科准教授細川晋先生をお招きします。5月26日見学に来てくださった学生さんたちにも見に来てくださると嬉しい。

さて、見学会の振り返り。説明する太田の右に立っておられるのが大西先生、そして学生さんたちです。全員中国からの留学生さんで、凄い倍率を勝ち抜いた優秀な人ばかり。とても熱心に聞いてくださっています。

今の若者はフィルムそのものを知らない世代ですから、実際に35㎜フィルムに触って映写体験をしてもらいました。一番右端に写っている孔 祥遠さんは、この日最後まで残って興味深く見学して下さり、すばらしい感想文を書いてくださいました。
「本日は、おもちゃ映画ミュージアムの二人の先生方による大変丁寧なご説明をしていただき、本当にありがとうございました。私は大学時代に8mmや16mmフィルムによる短編作品を制作した経験があり、フィルムそのものに対して一定の親しみを持っていました。しかし、これまでの経験はどちらかといえば制作者としての視点に偏っており、カメラの構造やフィルムの素材性、現像の過程、さらには保存やアーカイブの問題については、十分に深く理解できていなかったように思います。
今回の見学を通して、映像とは単に撮影して完成するものではなく、その背後には多くの技術や人の手による工程が存在していることを改めて実感しました。特に、フィルムというものが単なる映像の記録媒体ではなく、時間や記憶を物質として残す存在であるという点が非常に印象的でした。デジタル化が進んだ現在では、映像は非常に手軽に撮影・複製・保存できるようになりましたが、その一方で、映像の持つ物質的な重みや実在感について意識する機会は以前より少なくなっているようにも感じます。
私は映画を学んでいる立場として、今回の見学を通して、映像を「作品」としてだけではなく、それを支える技術や歴史、そして物質性という観点から捉える重要性についても改めて考えさせられました。現在、私自身の卒業制作ではテープメディアを用いた撮影を行っていますが、同時に作品の中に8mmフィルムの映像を取り入れるべきかについても考えています。それは単に映像表現の違いを求めるためではなく、映像の持つ物質性そのものについて考える試みの一つでもあります。デジタル映像が主流となった現在だからこそ、メディアごとに異なる質感や時間性、そして身体感覚の違いがどのような意味を持つのかを改めて問い直したいと考えています。今回の見学は、そのような自分自身の制作や研究について考える上でも非常に有意義な経験となりました。」
読みながら、彼が取り組んだこれまでの作品や、取り組んでいる卒業制作作品をぜひ、当館でも上映して下さったら嬉しいなぁと思います。もちろん他の学生さんたちの作品も見たいです。

「手回し映写機の上映体験を行い、とても興味深かった。残像や仮現運動の原理によって、静止している絵が動いて見える仕組みを実際に体験でき、非常に印象に残った。資料を読むだけではなく、自分で機械を操作することで、初期映像技術における人々の創意工夫や、 “絵を動かしたい”という当時の好奇心をより深く感じることができた。とても忘れられない見学体験だった。」(王 思逸さん)

これも19世紀にフランスで誕生したと思われる“ポリオラマ・パノプティーク(Polyorama Panoptique)” 。木で再生したバージョンもあるのですが、紙パックを用いたバージョンを覗いて体験中。透かし絵を楽しむ覗き眼鏡。穴から覗きながら光源に向けて上の窓を開けると。昼の光景が見え、閉じると、裏から光が透過して夜景が見えます。針先で開けた小さな穴が、星々の煌めきや家々の明かりに見えて綺麗です。自分のお気に入りの写真や絵で試してみてください。「夏休みの自由研究に如何?」と置いています。この道具の体験者で最も印象に残っているのは、東京大学史料編纂所写真担当谷 昭佳先生と早稲田大学文学学術院教授細馬宏通先生かな。いろんな“ポリオラマ・パノプティーク”が並ぶと面白いでしょうね。
おもちゃ映写機や様々な光学玩具に触れて「昔の人々が初めてこのような映画玩具を見た時、どのような気持ちになったのかを想像した。」と宋 永恒さん。

映写機や幻灯機に触れて、興味を持ってご覧いただいているのが嬉しい。奥にはいくつかのポスターを展示しています。
「映画が好きなので、昔の映画ポスターを見ることが特に印象に残った。中でも『The Sound of Music』や『Jaws』のポスターを実際に見たときはとても感動した。普段はインターネット上の画像でしか見たことがなかったが、実物のポスターには当時の映画館の雰囲気や時代の空気が感じられ、単なる広告ではなく映画文化そのものを伝える資料だと思った。また、実際に触れながら映画の原理を体験する展示は、映画を身近に感じられて興味深かった。現在は配信サービスによって手軽に映画を鑑賞できる時代になったが、こうした歴史的資料に触れることで、映画が長い歴史の中で受け継がれてきた文化遺産であることを実感した。」(張 伊寧さん)。

「これまで創作活動の中で1920年代のカメラを描いたことがあったが、実際を見るのは今回が初めてであった。そのため、かつて実際に人々によって使用されていた多くの機械を目の前で見ることができたことに感動した。また、上映されたアニメーションも非常に興味深かった。映像そのものはそれほど特別なものではなかったが、ナレーションによる演出によって作品がより魅力的なものになっていた。その体験を通じて、映画全体における音声演出の重要性について改めて考えさせられた。」(黄 爍軒さん)
ご覧いただいた戦前のアニメーションは、まだセルを使わず、切り紙で作られているので、大変手間がかかっている作品です。最も、デジタル世代の学生さんは“セル”もご存じないでしょうから、次から“セル”もご覧にいれながら説明するようにしなきゃと反省しました。紙フィルムが印象に残ったという学生さんも。
「今まで本でしか見たことがなかった実物をたくさん見ることができて、とても嬉しかったです。例えばプラクシノスコープなどです。実際に自分で体験してみると、本で見るだけでは分からない新しい発見がありました。特に紙のフィルムが印象に残りました。私は紙のフィルムがあることを初めて知りました。使われていた期間はとても短かったそうですが、とても面白いと思いました。」(李 晗沛さん)
デジタルスキャナーで、古いフィルムのアーカイブに取り組んでいることや昔の映像機器を3Dプリンタで再現していることに「とっても感動的で、今回の見学で一番好きな部分だと思う」と書いてくださった曹 楚嫻さん。実際に体験してみて「映画は単なるデータではなく、自分の手で操作できる“実体”でもありえるのだと突然気付いた。物理的な上映を繰り返す中でフィルムに刻まれていく時間の痕跡を見つめ、かつての編集作業も全て実物を手で触って行われていたのだと考えると、とても不思議な感覚を覚えた。仮想のデジタルから具体的な物質へと立ち返り、私は映画の最初の姿に再び触れたような気がした。」と書いてくださった李 夢婷さんも。
最後に費 雨霏さんのレポートから。
「今回の見学で特に印象に残ったのは、『文化や技術は、すぐに利益になるかどうかだけで判断してはいけない』という話だった。先生は、日本では売れるものや一般向けの商品は発展しやすい一方で、映画用カメラやフィルム保存のような専門的な技術は、商業的な利益が少ないため軽視されやすかったと話していた。一方でアメリカでは長い時間をかけて回収することを前提に、大規模な設備や保存技術に投資してきたという点がとても興味深かった。
また日本の初期映画の多くが失われていることを知り、映像を保存することは、単に古い作品を残すだけではなく、その時代の文化や技術、考え方を未来へ残すことなのだと感じた。現在はデジタル化が進み、映像編集もパソコン上で簡単に行えるが、もともとは実際のフィルムを切って貼り合わせながら編集していたという話も印象的だった。技術が進化しても、 “映像をつなぎ、時間を構成する”という編集の本質自体は大きく変わっていないのだと思う。最近は多くの技術がデジタル化され、便利になる一方で、昔の仕組みや物としての実感を意識する機会が少なくなっている。しかし今回の見学を通して、現在の映像文化も、過去の機械や技術の積み重ねの上に存在していることを改めて感じた。」
皆さん、どうもありがとうございました。読みながら、自分たちがやっていることが少しは世の中の役に立っているのかも、と感じられて嬉しく思いました。今回の見学で感じたことが、それぞれの皆さんの中で小さな糧となって、今後の活動に貢献出来たら望外な喜びです。大いなる飛翔を期待しています‼


