おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2017.12.25column

二つのアニメ―ション作品、『KUBO  二本の弦の秘密』『ゴッホ 最期の手紙』

今日は、大阪のブルグ7へ行って『KUBO 二本の弦の秘密』の人形撮影会へ行くつもりだったのですが、「シネリーブル梅田で『ゴッホ』をやっている」と家人が言うので、方向音痴の心配から「また道に迷い、遅れて見られなくなってもいけない」と、予定を変更してシネリーブル梅田へ向かいました。『ゴッホ』は、道に迷って試写会開始に遅れて、見損ねた作品だったのです。一方の『KUBO』は12月15日19時半から、京都のTジョイで一度見ました。

DSC0339811月26日、日中両国で人形アニメ―ションの礎を築いた持永只仁さんのミニ展覧会を無事に終了し、ご息女の持永伯子さんと一緒に会食した折り、自主アニメ制作者でもある森下豊美さん(写真右)から、「『KUBO』は凄いですよ。他にもこれから上映される人形アニメがあるので、今人形アニメの波が来ていますよ!」と熱く言われなければ、ひょっとしたら観に行っていなかったかもしれません。人形アニメ繋がりということもあり、参考になればと思って映画館に入ったのですが、比較的狭いシアターだったとは言え、ほぼ満席。関心の高さがうかがわれました。何も知らなければ今どきの3DCGかと思うでしょうが、この作品はエフェクトの一部以外は実際に作った人形を用いて製作されていて、その素晴らしさに圧倒され、「もう一度見なければ」と思っていました。

パンフレットによれば、総製作期間94週、総製作時間1,149,015時間、クボの人形の数30体、巨大骸骨の身長4.9m(ストップモーション・アニメ史上最大)、クボの表情の数4,800万通り、サルの顔の表情3,000万通り、総コマ数133,096コマ、一つのカットで使われた顔の最大個数408個等々大変な数字が並び、気が遠くなるような根気と忍耐を要した傑作です。ライカのCEOで本作の監督も務めたトラヴィス・ナイトさんは、子どもの頃から大の日本ファン。黒澤明監督、宮崎駿監督の影響を受け、日本のわびさびの心をテーマに「和の世界」を描きました。プロデューサーのアリアンヌ・サトナーさんは『ナイトメアー・ビフォー・クリスマス』(1993)で、また、美術のネルソン・ロウリーさんも『ティム・バートンのコープスブライド』(2005)でティム・バートン監督と組んでいます。

そのティム・バートン監督が1995年に出版された『Burton on Burton』(2011年邦訳題「映画作家が自身を語る ティム・バートン」で出版)の中の『ナイトメアー・ビフォー・クリスマス』の章で、持永只仁さんが作った『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』(1964年)や『怪物の狂宴』(1967年)への愛着について書いておられます。持永さんの人形アニメーションは、当時14歳だったティム・バートンさんに気に入られ、後に監督された『ヴィンセント(1982年)や『ナイトメアー・ビフォー・クリスマス』にインスピレーションを与えました。

持永只仁監督の影響は、こうして今話題を集めている『KUBO』にも引き継がれているのです。もう一度大きなスクリーンで観て来ようと思っています。

DSC_0022で、12月25日は梅田スカイビルのシネリーブル梅田へ。どうにか開始時間に間に合いましたので、25日迄開催中のドイツ・クリスマスマーケットを楽しみました。

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上映前の16時頃の様子。中央にマーケットのシンボル「新梅田シティ・クリスマスツリー」が聳え立っています。大きいです。

DSCPDC_0001_BURST20171225154可愛らしいクリスマスオーナメントの数々、ドイツのクリスマスに欠かせないソーセージなどのグルメを販売する24軒の木製小屋「ヒュッテ」がマーケットのシンボル、クリスマスツリーの周りに並んでいました。奥に見えているのは120年の歴史を持つアンティーク・メリーゴーランド。大人も子どもも楽しそうでした。

DSC_0018キリスト誕生の様子を表す展示も(慣れないスマホを構える私が映り込んでいますが、ご愛嬌ということで)。

さて、『ゴッホ 最期の手紙』は2017年アヌシー国際アニメーション映画祭で観客賞を受賞するなど世界が注目している作品。今年、国産アニメーション誕生100年を記念し、森下豊美さん、新美ぬゑさんから声かけをして貰い僅かばかり協力させていただいた「にっぽんアニメーションことはじめ展」(京都国際マンガミュージアムと川崎市市民ミュージアム)では副題に「動く漫画」の言葉がありましたが、『ゴッホ 最期の手紙』の場合は、「動く絵画」です。世界中から選ばれて集められた125人の絵描きさん(日本からは画家の古賀陽子さんが参加)が、特訓を受けてゴッホのタッチをマスターして、描いた油彩画は総枚数62,450枚!1秒12枚の油絵を高精細写真によって「動く油絵」で構成されました。

私的なことですが、2014年に受けた学芸員実習の第1回目は、講義の後、ギャラリー展示体験でした。グループごとにテーマを決めて、各自作品コピー1枚を額装し、文字数制限付きキャプションを作り、会場に照明の具合も考え乍らバランスよく展示し、その後ギャラリートークをし、質問に答えるという内容でした。私たちのグループが選んだのが、ゴッホでした。ネットでゴッホについて調べながら、その場を凌ぎました。弟テオの献身的援助に依存し、ゴーギャンとの共同生活が破綻したことで精神を病み、自分の耳を切り落とし、最後に銃で自殺。37歳という若さでした。多くの作品を描きながら、生前に売れたのはたった1枚だけだった等々。しかし、この作品は、このように世間一般で言われているのとは異なる画家ゴッホの死の本当の原因を探ろうとするサスペンス仕立てになっていて、しかも世界初の全編「動く油絵」で構成されている点からも話題を集めています。

来年1月20日~3月4日に京都国立近代美術館「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」が開催され、その折、ゴッホが最期の日々を過ごしたパリ郊外のオーヴェール=シュル=オワーズでの主治医で映画にも登場するポール・ガシェが所蔵していた日本人用の芳名録3冊も公開されるそうです。こちらもぜひ見に行こうと思っています。

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映画が終わった頃は、すっかり暗くなっていて、新梅田シティ・ワンダースクエアの会場はもの凄い人出。

DSC_0030こうして聖なる夜は更けていきました。これまで余りアニメーションとは縁がなかったのですが、国産アニメーション誕生100年ということで、今年は本当にたくさんのアニメ―ション関係の人と出会い、優れた作品も見ることができました。

東京国立近代美術館フィルムセンターが今年立ち上げ、年内いっぱい試験的に公開されているWEBサイト「日本アニメーションクラシックス」は、大変素晴らしいものです。来年度以降も継続公開を望む声が多く寄せられ、64作品のうち、49作品が継続して公開されることが決定しました!調整中の15作品の中には、瀬尾光世 さんの『あひる陸戦隊』も含まれていて、持永只仁さんが、新人時代に背景を手がけた作品です。 

また、「日本動画の父」とも言われる 政岡憲三 さんのデビュー作「難船ス物語 第壱篇 猿ヶ嶋」も同様 に、当面は年内いっぱいの公開ですので、今のうちにご覧いただければと思います。 

 

 

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