おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2022.08.19column

聴講「川端文学の21世紀―アダプテーションの地平ー」

川端康成学会大会-川端康成没後50周年記念国際シンポジウムをzoomで聴講しました。世界中から参加した専門家ばかりのところで場違い感は半端なかったですが、夕方5時半頃に終わった会の午後の部「川端文学の21世紀ーアダプテーションの地平ー」を最後まで聞かせて貰いました。「完璧な翻訳はない。完璧な翻訳は本当に必要か?言葉の裏に隠れているものを一生懸命探りながら、だいたいこの点で良いだろうという地点で放つ」「作品の美しさ、面白さを自分の国の人に届けたいという思いが出てきて翻訳することへの責任感が大きくなってくる。翻訳の可能性への信頼がないとできない」「長期にわたって様々な言語に翻訳されて親しまれている川端文学のような例はそう多くはない」「翻訳と原文が全く同じだったら翻訳をする必要がない。川端のような力強い文章は翻訳に耐える文学だと思う」等々興味深い言葉が聞かれました。
 
川端康成は他のメディアにアダプテーション(翻案)することに対して、とても柔軟な考え方を持っておられたようです。映画は自作に対する評価の一つだと言っていて、テレビドラマ化も面白がっておられたそうです。7月に今年も取り上げた映画『祇園祭』の脚本家がプロデューサーを通して「原作者は脚本に満足しているから、一字一句替えるな。替えたら裁判も辞さない」と言ったのとは真逆だと思いながら聞きました。「アダプテーションしたことで死んでしまう文学は長らえない」との言葉も聞かれました。
9月3日は映画化に関してはこれまで6回も制作された『伊豆の踊子』の第一作に西村小楽天が活弁を付けた録音バージョンで上映します。監督の五所平之助は、川端康成原作の『狂った一頁』(1926年)に関心を寄せていて、『伊豆の踊子』が出た時から映画化を考えていたそうです。キネマ旬報ベストテンで8位に輝き、当時の評価としては良かった作品です。劇場公開時と同様、西村小楽天が五所監督自らの指名で披露した本作からは、「映像を見ながら小楽天の活弁を聞いて笑い声をあげる観客の反応がわかり、とても臨場感がある」と講師の福田淳子先生。まだまだお席に余裕がありますので、世界中で今も魅了され続けている川端康成の世界に、ぜひ遊びにいらしてください‼
 
話が脇に逸れますが、ラディスラフ・スタレレヴィッチ監督のパペット・アニメーション『狐物語』(1930年、公開は1937年)が大変面白いのですが、フランス語なので、もっと内容が分かりたいと思って、無謀にもフランス在住の日本人とフランス人の若いお二人に日本語訳を依頼しました。二人は快く応じてくださいましたが、日本語で言えば古語にあたるような言葉もあって、相当難儀されたようです。今日のシンポジウムでは翻訳のことが話題の多くを占めていました。それを聞きながら、改めて、お二人の大変な尽力を思い、深くお礼を伝えねばと思っています。弦太さん、オリアンさん、本当にありがとうございました。感謝しています!!!!!

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