おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2026.07.13column

母衣武者生人形

7月3日(月)から展示している母衣武者生人形。

格好良いのでぜひ間近でご覧いただきたいです。今日は生人形研究の第一人者福岡教育大学教授本田代志子先生が遠方から来てくださいました。本当は、14~16日まで、場所を移して“Gallery HOSHI COUPE”でこの母衣武者を展示するため16時に搬出するので、その解体現場を見て貰いたかったのですが、時間がないということで、3日の展示風景の写真をいくつかご覧いただきました。本田先生を所蔵者の馬場真二郎さんにご紹介できなかったのが残念でした。

一目見て、松本喜三郎や安本亀八の作ではないと仰って。それは私も手を見た時にすぐそう思いましたが、例えばロンドンで行われた日英博覧会(1910年)のように「風俗の変遷に関する歴史的出品」をして、日本には上古から始まって明治になるまでどのような長い歴史があったかを歴史パノラマで示そうという目的のために作られたうちの1体ではないかと思ったのですが、国内外の博物館で日本のこうした生人形を多く見てこられた先生は、「効率的な造形ではないので、おそらく何かの目的のために制作を依頼された器用な人が作られたものではないか。初めてみた造りだ」と仰っていました。

ひごで木の輪っかを作って和紙を貼って造形しています。余談ですが、これを見ていた連れ合いが「『大魔神』の本物も竹ひごで作られていた」と思い出して。

イタリアの博物館にも日本の生人形は何体かあって、それは本物の甲冑を身に付けて見せるための人形だそうで、「この立派な大太刀を見せるための生人形ではないかしら?」と先生は仰いましたが、大太刀は所蔵者の馬場さんが別に見つけたものだそうです。この大太刀だけでも見ごたえがあります。ここまで大きな太刀はそう見当たらないでしょう。ひときわ目を惹く背中の母衣は竹組で軽いものでした。首から上は胴に差し込む形になっていました。

眉毛や鬚が黒く塗られていて「もとは植毛されていたのではないかしら?」と、ここでも先生が仰っていたので、馬場さんに尋ねたところ、「受け取った当初から毛が抜けていて描かれていた。髪の毛もなく頭部全体が真っ白に石膏で塗り固められていたので、丁寧にはがしたら、ご覧の通りのドーランの肌色が出て来て、これは日本で作られた当時の色だと思う。髪は自分で植毛して整えた」のだそうです。「傷むたびに上から塗って直していたのだろう」と馬場さん。頭の手拭いについても本田先生がお尋ねだったので確認したら、剣鉾奉納で知られる粟田神社祭礼の貰った手拭いで、近年のものだそうです。

もともと京都市立芸術大学で油絵を勉強しておられたので、こうした美的センスは抜群で、100年以上前の生人形を美しく展示することができました。馬場さんは「素晴らしい工芸品ではないけれど、だからこそ、この手は残らないので貴重だ」と話しておられました。私もそのように思います。

京都市歴史資料館長下坂守先生の講演で、「(祇園祭巡行には)母衣武者は、16世紀末から17世紀の半ばくらいまでは出ていたと思います。それが やがて出なくなるのは幕府が規制したからと推定されます。幕府は武具の携帯をきらい、何度か鑓や弓の数を制限しています。」と教えて下さいました。

これは、出光美術館所蔵「祇園祭礼図屏風」(重要文化財、桃山時代、17世紀)。

こちらは、サントリー美術館所蔵「洛中洛外図屏風」伝筆・土佐光高、江戸時代17世紀後半。大きな母衣武者が描かれています。

京都国立博物館所蔵『祇園祭礼図屏風』の第一扇に描かれた母衣武者。他に第三扇にも描かれ、

第五扇には弦召、犬神人、棒の衆と呼ばれた6人のあとを、お供を連れた母衣武者が行列しています。できることならいつの日か、祇園祭神幸祭・還幸祭に母衣武者が一緒に行列する日が来ると良いなぁと勝手に夢見ています。とはいえ、年々祇園祭の頃の気温が高くなって、甲冑姿で大きな母衣を背負っての行列は過酷でしょうから、夢の中だけで終わりそうですが。ともあれ、17日の巡行が少しでも涼しい中で雨に遭わず滞りなく終えられることを祈念しております。

最後に14~16日まで、 “Gallery HOSHI COUPE” (京都市下京区松原通東洞院東入)での展示チラシを掲載。ギャラリーが面している松原通が昔の五条通で、このまま東へまっすぐ進むと弓矢町に至ります。弓矢町では15、16日10時~17時、町会所「弓箭閣」ほか町内各所で武具飾り。17日16時に甲冑姿の武者7名が「弓箭閣」を出発して祇園祭神幸祭に供奉されます。当館での母衣武者生人形展示は17日~20日(月・海の日)までです。この機会にぜひ、武者行列ともども古風を伝える母衣武者生人形をご覧ください‼

 

 

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