2023.03.03column
インターンシップ生と過ごした10日間
2月16日~3月1日の10日間、当館にインターンシップ生として来て下さった京都芸術デザイン専門学校1年涌田ひよりさん(左)と古賀優月子さんです。これまで2019年8月半ばに二人の女子学生さんをお迎えしてから、2月半ばの時期と年2回、インターンシップ生の方を受け入れてきました。改めて数えてみると、これまでに14名を数えます。年々孫ほどの年齢差が開き、学生さんの方が内心面食らったことでしょうが、数多くある受け入れ先から選んで来て下さったことに心より感謝しています。
これまではインターンシップ期間中に活弁と生演奏付きで無声映画を観るような当館らしいイベントがあって、その実施を手伝って貰っていましたが、たまたま今回はそうした催しがない時期での研修になってしまいました。別の機会にぜひ生で無声映画の上映を見て貰う体験をして貰えたら、と思っています。若い観客にご覧頂いてその面白さを知って貰うことが、日本独特の活弁文化を次世代へ継承するには欠かせないと思っています。
何が良いかと一緒に考えて、グッズを考案して貰うことにしました。写真はそのひとつ、“ピープショー”。当館で販売している吉田稔美さんの作品をお手本に当館らしいものを製作依頼しました。吉田さん著『ピープショー のぞきからくり』(2020年、玉川大学出版部)によれば、「ピープショーとは、遠近法による一種のだまし絵とのぞき穴の絞り効果を利用した紙絵の玩具のこと。小さな穴から平面絵のレイヤーをのぞくと、思いがけない奥行きが楽しめる」もので、「17世紀末頃のヨーロッパで遠近法の啓蒙の為に考案され、ほどなくして繊細で軽く携帯しやすい紙製品に発展し広まった」そうです。とここまで本から引用して書き写していると、3月1日このブログで書いたシャドーボックスのことを思い出します。こちらは17世紀中頃と少し早い時期のようですが、同じようにヨーロッパから伝播した紙文化なのですね。
2月26日、終了2日前に試作品を初めて見せて貰い、ダメ出しをしたのですが、中二日でこちらの意図を組んで最終日に間に合わせてくれました。その柔軟な対応をしてくれる素直さが素晴らしいです。
古賀さんの作品で「浦島太郎」のアニメーションをご覧頂いている様子を作り出しています。
そして、こちらは涌田さんの作品。展示物もいろいろ描かれていて、奥のスクリーンでは映画のワンシーンが覗き見えます。せっかくなので、今度少し大きめの紙で試作してみます。この見本品、今日のお客様が早速手にして覗いて見て下さっていました。「可愛い💗」と仰っていたことを、忘れないうちにここに書いておきます。皆様も来館の折にぜひ試してみて下さいね。
他に、シールとマスキングテープのデザインもしてくれました。皆さんに手に取ってもらえるようなグッズに仕上がれば一番です。他にも国内各施設にチラシを送る手伝いをして貰い、作業がはかどって大助かりでした。わずか10日の経験でしたが、ホウレンソウ(報・連・相)の大切さをお互い再確認しながら一緒に過ごした経験を活かして、自分たちが目指したい場で活躍していってくれることを祈ります。二人に出会えたことを本当に嬉しく思っています。
さて、「マジック・ランタン~さまざまな幻灯の楽しみ~」展初日に来て下さった3名は、京都府立大時代に理科系で学んだお仲間。当館で展示しているものに大変興味を持ってくださいました。いろいろおしゃべりしている中で、左端の女性がお母さまのことを思い出して話して下さいました。
大正時代、お母様は写真にも夢中で、階段下の場所を暗室にして現像しておられたそうです。子どもの頃を撮った写真やガラスの写真版がたくさんあったそうですが、代替わりの時にご家族が処分されてしまったとか。舞鶴市西部の由良川に近いところの風景や風物が記録されていたかもしれず、もったいないことをされたなぁと思いましたが、仕方がないこと。この方のお友達が美しい蝶の標本をたくさんもっておられるのだそうですが、結構手入れが大変らしく「自分の死後は捨てられるだろう」と仰っているとか。こうした事例も含めて、決して他人ごとではないと思いながら聞いておりました。インターンシップ生二人が「めったに見られないものを見せて頂けたので良かった」と言ってくれた連れ合いのコレクションの数々ですが、その今後を考えると…。
たまたまネットで目にした飯沢耕太郎の写真談話を読むと、日本で最初の女性写真家は幕末の洋学者島 霞谷(かこく)の妻、島 隆(りゅう)というインテリ女性だそう。続けて「大正から昭和にかけてアマチュア写真家がでてくると、写真を趣味にする女性も少しずつ増えて行ったけど、本当にごく僅かだった」と書いておられますので、お話を聞かせて下さった女性のお母さまも、無名ですが、その僅かなうちの一人だったということですね。だとしたら、なおさら当時の女性の眼でカメラに収めた写真がどのようなものだったのかと惜しく思います。
お母さまのことが大変興味深く思えたので、いつもの無茶ぶりを発揮して「記憶にあるお母様と写真の思い出を書いて欲しい」と依頼しました。幸いにも了解して下さいましたので、届いた暁にはご紹介できる日も来るでしょう。といいますのも、今回の展示は「拡大してみんなで見ることが出来る」幻灯ですが、続く4月15日からの展示はヴァンダイクプリントや湿板写真など古典技法を用いた写真展です。19世紀映画が誕生した背景には、幻灯機同様、写真も欠かせない要素としてあります。写真展のご案内はチラシデザインができ次第ご案内いたしますので、今しばらくお待ちください。