おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2023.04.05column

アンティークなモノたち

4月2日世界遺産東寺五重塔と桜。ライトアップは4月16日まで開催中。今朝のモーニングショーでは、東寺のライトアップに400メートルの長蛇の列だとその賑わいぶりを報じていました。遅咲きで知られる仁和寺の「御室桜」が例年より一週間ほど早く満開になったそうです。今年は府立植物園の桜林、鴨川沿いの桜並木など沢山の美しい桜を愛でることができました。「新しい戦前」にならないよう願いつつ、今が平和なればこその春の楽しみです。

さて、2日に東寺を訪れたのは、桜よりも古今東西のアンティークを愛でるため。その収穫物をご紹介しましょう。

ブローニー・カメラ(Eastman Kodak,№.2 Folding Autographic Brownie)。右手のは乾板。ちゃんと撮れるようなので、4月15日から始まる写真展「carnation×reincarnation」の作家二人のうちの湿板写真(アンブロタイプ)に取り組んでいるアルマ・シャンツァーさんに挑戦して貰いたい気がします。

フォーカスを合せるスリガラスを外し、乾板を取り付けているところ。

恰好良い蛇腹は畳んであり、レンズ部を引き出してセットします。完全な状態でした。

収納ケースに、乾板と共にしまって。皮ケースがお洒落ですね。

国産のスタンド式ステレオスコープ一式(International Stereoscope Association,Tokyo,Japan)。眼鏡部分は皮革製。写している立体写真は2月25日天神市で入手した鶏卵紙の立体写真「コロンビア」。

昨日来館の橋本典久さんに教えて貰ったばかりですが、つい先ごろ3Dプリンターを駆使してステレオスコープを製作された時の経験から、先人たちのレンズの工夫に気付いたそうです。

このステレオスコープのレンズ部分を見て貰うとわかりやすいかと思いますが、左右のレンズの角度が異なっています。目の先のステレオ写真が見えやすいように、レンズの端を使い、自然な立体感をだす工夫がされています。

人間の目は真っ直ぐに見てしまうので(イラスト上段左端)、立体写真を拡大して見ることができません。それをカバーするために左右のレンズの用い方を工夫しています。19世紀の人たちの知恵に感動すら覚えました。

その橋本さん。手にしておられるのは透過してみると夜のシーンやカラーに見えるという立体写真。左と右の眼で個別に見て撮影された、少しのずれのある写真(画像)をビューワーで覗くと画像に奥行きが出て立体写真に見えます。そういう風に見る道具たちをざっとテーブルに並べておしゃべりしている時間がとても楽しく、勉強になりました。

橋本さんのリクエストで、展示ケース下段に置きっぱなしだった「プラキシノスコープ・テアトル」を久々に取り出しました。「良いものだから」と前回来館時にケース下段に仕舞いっぱなしになっているのを惜しく思われたようです。早速一緒に動かしてみました。どのように見えるのかは、橋本さんが武蔵野美術大学図書館のYouTubeで「視覚装置」の一つとして「プラキシノスコープ・テアトル」を解説付きで紹介されていますので、ぜひご覧ください。

この後、橋本さんは、島津製作所創業記念資料館へ調査のため向かわれました。その調査目的の話をしていて、帰られてから2018年に撮った写真のことを思い出しました。

2018年10月11日古川タク日本アニメーション協会名誉会長(当時は会長)が和田敏克東京造形大学教授と一緒に来館されたときの一枚。そのとき開催していた「渡辺泰展~その研究活動と功績~」見学を目的に来てくださいました。渡辺先生はアニメーション研究を牽引してこられた功労者のお一人です。古川先生が手にしておられる渡辺先生所蔵の本(アメリカで随分前に出版)の1ページに、同じ「プラキシノスコープ・テアトル」のことが載っています。右ページにはレンズのことが載っているのでしょうか、橋本さんが描かれたのと同じようなイラストが見受けられます。

ともあれ、橋本さんのお声がけで、島津製作所創業記念資料館学芸員さんが当館に興味を示して下さり、嬉しいことに「一緒に何かやりましょうと伝えてください」と伝言して下さったそうです。願ってもないことで、とてもありがたいです💖

他に「日光写真種紙」(ライオン玩具)も入手。先に書いた4月15日から始まる写真展で4回計画しているイベントの内、翌16日11時、13時、15時の3回にわたって古典写真技法を応用して、アニメーションの仕組みが分かるおもちゃ「ソーマトロープ」を作るワークショップをします。「ソーマトロープ」についても橋本さんが解説している先ほどのYouTubeでご覧になれます。今回は、片面に液剤(感光乳剤)を塗布した台紙が太陽光と反応する「サイアノタイプ」で青写真(日光写真)を作り、もう片面には参加者が自由に絵を描きます。ソーマトロープもサイアノタイプも19世紀に考案されました。

その時に、私はこの種紙でやってみようと思います。

これはPCで反転させたもの。きっとこのように出来上がるはず。写真フィルムのネガとポジと同じですね。当時人気があった時代劇映画の大スター15名の日光写真、上手くできると良いのですが。

国産小型カメラ、小西六のKonilette。可愛いです。

さらに小さい国産のSmart35 。共に35ミリカメラ。撮影できると申しますので、写真展の間に出来る事なら試してみたいです。ワークショップは材料費と入館料込みで1500円。各回10組で予約優先です。指導者は出展作家の若林久未来さんです。お子さんも楽しめますので、ご家族連れで参加されては如何でしょう。お申し込みをお待ちしております。

最後に、「最新イロハ冒儉カルタ」。100年前の1923(大正12)年1月、樺島勝一が画を担当して人気を博した「正チャンのばうけん」が『アサヒグラフ』に登場しました。翌1924年10月1~21日には、宝塚少女歌劇団月組が「正ちゃんの冒儉」を公演し、その時にお供のリス君が登場します。このカルタは、その頃に作られたものでしょうか? 都市型の「イロハかるた」は大正から昭和前期に盛んになったそうです。

橋本さんは大学に収蔵されている貴重な視覚装置に、研究者や学生さんたちが自由に触れることが出来るようレプリカ製作を依頼されることが増えているそうですが、こうした道具を使って行う1年生の授業は回を重ねるごとに学生さんが夢中になっているそうです。ガラス越しでは分からない、触れて体験することでわかる面白さ、ですね。当館も同じように考えていますが、そういう意味では、「プラキシノスコープ・テアトル」も何らかの折に、体験して貰う場を設けられたらと思います。

 

 

 

 

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