おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2023.04.21column

写真展「carnation×reincarnation」に関連し、23日「イラン・ティータイム」開催‼

4月19日付け京都新聞で、23日15時から開催する「イラン・ティータイム」のお知らせを書いて頂きました。

KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭2023の KG+で当館で写真を展示して下さっているうちのお一人、アルマ・シャンツァーさんのチラシ掲載プロフィール部分を拡大掲載しました。アルマさんの湿板写真はこの女性の作品の他に別の女性2人を同じ手法で撮った作品もあり、とてもインパクトがあります。写真祭公式サイトのKG+pick upのコーナーで紹介もされていますので、そこでご覧になって足を運んで下さる人が結構あります。被写体になった女性3人ともイラン出身の若い女性です。

先ほど来館された方は、毎年この写真祭を楽しみにご覧になっているそうですが、アルマさんのこの作品は古い写真だと思ってご覧になっていました。それで、「モデルになった女性が23日(日)ここに来られますよ」とお伝えしたら凄く驚かれて。

展示物には、クラシック写真に関する年表のほか、5つの古典写真技法についても説明パネルを掲示しています。そのうちの一つ、アルマさんが取り組んでいる湿板写真について、ここで紹介すると、

…………生のガラスに張り付く像は信じられないような質感と解像度を持っています。170年前に発明された技術とは到底思えません。実際に撮影を体験してみると、その優雅で美しいプロセスに、現代には無い時間を感じとることができます。湿板写真は、1861年イギリスのフレデリック・スコット・アーチャー氏が発明した写真技法です。ガラス板や金属板にコロジオンという薬品を塗布し感光板とします。その板が湿っている間に撮影プロセスを完了しないといけないことから「湿板写真」または「wet plate photography」という名前がつきました。日本では、坂本龍馬の写真が有名です。そもそも撮影とは、光を記録する作業です。被写体に当たった光がレンズを通してセンサー、フィルム、乳剤などの感光剤に到達します。その時の光の濃淡を記録したものが写真です。湿板写真も当然、前述の条件を満たしています。さらに、原版が反射原稿として直接鑑賞できること、物理的に複製ができない唯一無二のモノであることで、他の写真とは一線を画しています。湿板写真を鑑賞するとき、鑑賞者は時空を超えて被写体と繋がっている、と言えるでしょう。…………

ぜひ、間近で湿板写真がどういうものかご覧下さい。さて、KG+の写真展が開始される前日の14日、展示の準備をしている途中でアルマさんの作品でモデルを務めた女性も来館。頭髪を隠すヒジャブ(へジャブ)を被っておられました。私たちには馴染みがないヒジャブへの関心から、いくつか質問もさせて頂きましたが、皆さんの中にもイランの女性が置かれている立場などに関心を持つ方もおられるでしょう。

そこで、23日15時~「イラン・ティータイム イラン女性作家との交流会」をします。ゲストにお招きするのはアルマさんの作品のモデルを務められた三名様。イラン出身で、現在は京都市内の大学院生としてアニメーションとマンガを勉強中。

ナビゲーターはアルマ・シャンツァーさん。当日はお菓子とお茶が付いて参加費1500円です(入館料込み)。ご予約は最初に掲載した新聞案内記事の通り当館にご連絡いただいても構いません。電話073-803-0033、電子メールinfo@toyfilm-museum.jp

せっかくイランの女性をゲストにお招きしてお話を伺うのだから、と思っていたところに18日付け京都新聞夕刊に映画『聖地には雲が巣を張る』の紹介記事が載っていましたので、あまりイランのことを深くは知らないので、何かの参考になればと思って18時10分からの上映を見に行きました。

映画館内の宣伝も大きく掲げられて目を惹きました。最近では映画館でご覧になる人がどんどん減る傾向ですが、注目されている作品だけに結構入っていました。昨年のカンヌ国際映画祭でジャーナリストのラヒミを演じたザーラ・アミール・エブラヒミが主演女優賞を受賞していますし、“スパイダー・キラー”と呼ばれた殺人鬼サイードを演じたメフディ・バジェスタニも昨年のストックホルム国際映画祭で主演男優賞(作品賞も)を受賞し、確かに「ゾッとする映画」でしたが、見ごたえがある作品でした。

テヘランに次ぐイラン第二の都市マシュハドは同国唯一シーア派の聖地であるだけでなく、麻薬の密輸ルートにあたる立地でもあるそうです。2001~2001年、この地で“スパイダー・キラー”が16人もの娼婦を殺害した連続殺人事件がありましたが、被害者の多くは麻薬中毒者であったとされています。この事件があった時、市内には5000人の娼婦がいたと警察が発表していますが、彼女らの多くが貧しい家庭環境で育っている背景も無視できません。激しい暴力に晒されても売春が非合法とされて、むち打ち100回の刑とか、既婚女性の場合は投石刑に処せられるので、彼女たちは訴えることが難しいです。

16人も殺人した“スパイダー・キラー”の所業に対し、街には「汚れた女たちを聖地から排除している」と評価して、犯人を英雄視する人たちの姿もありました。危険を顧みず事件を追及するラヒミは厚化粧をして娼婦を装って広場に立ち、犯人と接触をしようとします。どうなることかとハラハラドキドキしてスクリーンを見つめました。演じたエブラヒミは2000年代イランの国民的女優として活躍していた最中に、私的な動画が流出したという疑惑が取り出され、それまでのキャリアが絶たれてイランからフランスに亡命を余儀なくされる経験をしています。その経験がヒラミ役に反映されています。彼女がイランで出演した2本の映画は、政府の検閲で上映禁止になっているそうです。自らの経験からくる気迫に満ちた演技は主演女優賞に相応しいものでした。

イランで生まれたアリ・アッバシ監督自身も北欧を拠点に活動していて、本作はイランでの撮影許可が下りず、イランでの上映の可能性もないそうです。監督はその理由を「イランを舞台にある種の現実を描いた数少ない映画だからだと思います」と語っています。この映画ではラヒミが危険な目に遭いながらも取材ができていますが、この事件が起こった2000年前後から多くの新聞や雑誌が発行禁止になり、ジャーナリストも弾圧を受けています。2022年9月にヒジャブ着用義務に違反したとして風紀警察に拘束された22歳の女性が急死する出来事がありました。これが契機になって、若い女性を中心に全土で抗議デモが広がっています。イラン社会に根強いとされるミソジニー(女性蔑視)、過酷な弾圧下で「女性、命、自由」のスローガンを叫ぶ姿に、今、国際社会が注目しています。23日のトークイベントでこうしたことが話題に上がるのか否か正直やってみないとわかりませんが、少なくとも、この映画から私たちが考えることは多いように思います。

アルマさんから届いているメールによれば、ゲストのイラン人女性の作品を鑑賞した後で、お茶とお菓子を食べながら、同国の文化と女性の自由について話し合うという内容です。皆様のご参加をお待ちしております‼

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