2023.05.25column
アルマさん手作りの幻燈機
京都国際写真祭2023が終わって11目の今日、ヴァンダイクプリント技法の若林久未来さんとオーストリア出身で湿板写真のアルマ・シャンツァーさん(写真)が来館。彼女が手にしているのが、自ら作ったマジック・ランタン(幻燈機)。ミュージアムに寄贈頂きました。
早速試して見ました。放熱の穴が上蓋に綺麗に並んで開いています。レンズを通して大きなスクリーンに投影した画像は、こちら。
少し、距離を調整すれば、もっとはっきり見えるはず。
右端にセットした照明は、工事現場で使う6500ルーメンの明るいものを使用。投影したのはOHPフィルムにプリントした鶴の絵。焦点を出来るだけ合わせられるよう位置を調整するためにガムテープで仮止めをしています。
考えてから完成するまでに1週間ぐらいかかったそうです。段ボール箱で試しながら、最後はレーザーカッターで切って組み立て。
作ってみようと思い立ったのは、京都国際写真祭直前まで開催していた「マジック・ランタン~さまざまな幻燈の楽しみ~」展で、連れ合いが工夫して作った「レフシー幻燈」を見たことから。菓子箱に色鉛筆が入っていた丸い箱と100均のレンズ、中に紙芝居の絵をセットできる仕掛けを施しています。
もうひとつ、Audiのビーマーフレックスプロジェクタークロックを工夫した幻燈機。この二つを見て、何か作れないかと思ったのだそうです。思うのは誰でもできますが、実際にやってみるのが立派です。
この鶴の画像は、京都国際写真祭2023の会場の一つ、The Terminal Kyotoでの「室礼」展会場で展示されていました。
それは、古い木枠の桶の中に投影されていました。実は、今、この写真を取り出してみて漸く天井に据え付けられていた幻燈機に気が付きました。下ばかり覗いていて、上を見ず、「そうだったんだぁ!」という思い。その奥にも写真が1枚投影されています。ここは地下の狭くて四角い防空壕。戦争中、空襲警報が鳴ると、家人たちはここに逃れ、息をひそめて隠れていたのですね。
お客様から「防空壕がある」と教えて貰ったので出かけましたが、驚いたことに、この家には、もうひとつ防空壕がありました。実際に防空壕を見たのは初めて。今まで残っていたのが凄いです。
アルマさんの鶴の湿板写真が会場の他の場所にも展示してありました。この木箱も脚もみんな自分でハンドメイド。お父さんはオーストリアで大工の仕事もされていたことがあるようですから、その血筋ですね。
アルマさん、手作りマジック・ランタン寄贈、どうも有難うございました‼ 早速展示室に飾りましたよ。