おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2023.12.23column

児童文化史研究家で“おもちゃ絵”コレクター、故アン・へリング先生遺愛の幻燈ガラスを寄贈頂きました。併せて先生のコレクション展のご案内💝

12月19日、法政大学名誉教授で、児童文化史を研究されていたアン・へリング先生(1938-2021)遺愛の幻燈用ガラス絵『サルカニ合戦』(12枚揃い)、紙フィルム4作品とそれを見るための道具1個を寄贈して頂きました。

先生は“おもちゃ絵”のコレクターとして知られています。先生の著書『かみ遊びの文化 おもちゃ絵づくし』(2019年、多摩川大学出版部)の中の言葉を引用すれば「おもちゃ絵とは、江戸・明治期に少年少女たちが日常的に遊んでいた実用品としての錦絵のこと。豆本や図鑑は書籍の役目、着せ替えや千代紙、組上燈籠は細工用、絵双六はボードゲームと、その種類と用途は多岐にわたる。長年おもちゃ絵を蒐集し、研究を重ねてきたアン・へリングが、多数の個人コレクションとともにその歴史と魅力を紹介。日本の多彩な出版文化を築いた礎には、おもちゃ絵があった」。そうした思いのアン・へリング先生が、興味を持って集められた大切な品の一部が、縁を頂いた私どもに寄贈して頂けることを本当にありがたく、光栄に思っています。

さて、初めて見た紙フィルムを使った遊び道具ですが、紙箱にフランス語で書かれた説明書と、写真のように紙フィルム(フィルム・ストリップ)を装填した黒い道具(ビュアー?)が入っていました。上蓋には”ZEDI”という名称と「懐中電灯型紙幻燈機」のイラストがあります。装填した紙フィルムを下に引っ張ると、画面と画面の間にある孔(穴)が電燈の光を通すようになっていて鏡に反射して、そこを通過する紙フィルムの画面を照らします。次の画面に続けるときは光がなく暗いまま。再び孔のところで光に照らされた画が見えます。絵フィルムを少し早く引っ張ることで、画面が点滅し、アニメーションのような変化が見えて楽しめるという遊具らしいです。

訳は「フィルム枠は電池ケースに取り付け可能で、上映を楽しむときは暗い部屋に吊るすか、日中は暗い部屋に常に置いておきます。フィルムストリップを使わないときは外します。フィルムストリップ間の高さは約20センチ以上必要です。前面のフィルムストリップを引っ張るときには、底部には2本の針が交互に付いているので、均等な動きを素早く、中断することなく引っ張ることが出来ます。フィルムは2枚に分けてプリントする必要があります。紙が裂けるのを防ぐために、正面方向に結び目が絡まないようにします。懐中電灯として使うには、フィルムフレームの代わりにレンズ付きカバーを挿入します。」でしょうか?ちょっとよくわかりません。説明より、挿絵の方が分かりやすいです。一度試したいのですが、紙が劣化して穴の開いたところから弾けて破れてしまいますので、今はこのまま置いておき、紙フィルムの複製を作ってから試すことにしてみましょう。もうひとつ、黒い道具の「D・R・P」と書かれた部分背後に乾電池を入れる「電池ケース」があったのでしょうが、それがないので、それも何とか工夫しないと見られません。

そのアン・へリング先生にちなんだ展覧会が東京都墨田区横川の「たばこと塩の博物館」で開催されていて、そのチラシも同封されていました。同館では今月27日まで「見て楽し 遊んで楽し 江戸のおもちゃ絵」Part2の第一部が開催中です。様々なおもちゃ絵を展示していて、その多くが「個人蔵」だということですから、貴重な展示です。その中にへリング先生のコレクションもあるようですので、近ければどんなに忙しくても見に行ったのですが、東京は私には遠くて😢 ですが、1月4~28日に開催される第二部はへリング先生のコレクションのみで構成し、テーマごとのおもちゃ絵を見せて下さるそうです。楽しみですね💗第二部期間中には何とか都合をつけて見に行こうと思っています。その時、へリング先生亡きあとも一生懸命ご夫妻で尽くしておられる助手の山田恭子さんや、上掲リーフレットでアン・へリング先生のイラストを手掛けられた吉田稔美さんとお会いできたら嬉しい。

皆様もぜひ、たばこと塩の博物館での「見て楽し 遊んで楽し 江戸のおもちゃ絵」をご覧になりにお出かけください‼

アン・へリング先生が夢中になられた日本の紙文化ですが、その繋がりともいえるのでしょうか、当館所蔵紙フィルムにのめり込まれたのも同じアメリカ人でバックネル大学のエリック・フェデン教授です。先日連絡がきて、新年4月10~13日ニューヨークの映画博物館で開催されるオーファン・フィルム・シンポジウムで当館所蔵紙フィルムを用いて発表されるとのことです。きっと先生も興味を持たれると思うので、参考にへリング先生遺愛の“ZEDI”の画像をお送りしようと思います。

【1月3日追記】

年末の28日に催しの打ち合わせのため来館してくださった京都大学大学院生の原田麻衣さん。フランス留学の経験がおありなので、グッドタイミングとばかり、上記道具の取り扱い説明書を翻訳して貰いました。おそらくドイツ語からフランス語に訳されているので、翻訳の過程でいくつか単語の誤りなどもみられるそうですが、その内容は以下の通り。

                          使い方

ケースには一般的な懐中電灯の電池を入れる。小さな洋梨型電球を使用して電球線を横にすると良い映像効果が得られる。

フィルムフレームをバッテリーケースにセットする。フィルムフレームは暗い部屋に吊るすか、日中は暗い隅に置く。フィルムストリップは図1のように折り、フィルムフレームの台座に差し込む。フィルムストリップの間には図2に示すように、上部に約20cm突出した延長部がある。全面のフィルムストリップは両手で交互に下から、素早く途切れることなく引っ張る。フィルムは結合部が絡まないように引っ張らなければならない。

懐中電灯として使用する場合は、フィルムフレームの代わりにレンズ付きカバーを挿入するだけでよい(図3を参照)。

 

以上だそうです。「フランス語およびドイツ語で検索してもなかなか情報が出てこないので、もし電球をセットして実際に見られるようになるとかなり貴重な機会になるだろうと想像します。実際に懐中電灯としても使えるなんて面白いですね」と原田さん。明日、メディア考古学のエルキ・フータモ先生と草原真知子先生が来られるので、展示と講演会の打ち合わせが終わった後にお見せしましょう。

原田さん、初対面なのに面倒なことをお頼みしてすみませんでした。でも大いに助かりました。ありがとうございました!!!!!

 

 

記事検索

最新記事

年別一覧

カテゴリー