おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2024.03.11column

時代劇の紙フィルム『荒木又右衛門』を寄贈して頂きました‼

嬉しい寄贈品がありました。

北海道の松山さんからレフシーの紙フィルム2巻をお送りいただきました。それが何と時代劇だったから嬉しさも飛び切り‼

辻吉郎監督『荒木又右衛門』(1931年)の上下2巻。当館には日本軍の戦争を記録した映像やカラーで印刷したアニメーションが紙フィルムでございますが、時代劇がなかったので、最初に松山さんからお知らせを受け取った時に「おもちゃ映画と勘違いしておられるのではないかしら?」と思いました。けれども届いたのは上掲写真のとおり時代劇の実写版でした。そして新品に近いような綺麗さです。

「フィルム蒐集は流石に自重していたのですが、業者が道内であったこと、出品画像に見たことがない場面があったことから臍を固めて購入しました。届いたものを確認してみると、片岡千恵蔵の本多正勝と大河内傅次郎の荒木又右衛門との対面場面から始まります」という事で、早速見てみましたら、当館所蔵のおもちゃ映画にはない部分でした。それぞれの紙箱には「三越」のマークがあり「¥0.60」と書かれた値札が貼られていました。三越百貨店の玩具売り場で販売されていたものでしょう。紙フィルムが考案されたのが1932年ですので、その年の物価で見てみましたところ、映画館入場料が50銭、豆腐1丁5銭、金1グラム当たり3円8銭、大福1個が2銭。いろんなことを我慢して小遣いを貯めて買えない値段ではありませんね。

時代劇の紙フィルムがあったこと、『荒木又右衛門』の当館には無かった部分が得られたことで、大変嬉しいです。昨年当館で講演もして下さり、当館所蔵の紙フィルムから始まり、いろんな方が所蔵されている紙フィルムのデジタル化に着手されたアメリカのバックネル大学エリック・フェーデン教授が今年も5~6月に来日されます。早速この寄贈頂いた紙フィルムもデジタル化して貰いましょう。おもちゃ映画と紙フィルムの二つの映像を合わせれば、当時の人々が楽しんだ『荒木又右衛門』の映像がどんなだったかを窺い知る一助になるでしょう。

時代劇の紙フィルムがあったことから、他のコレクターさんにも尋ねてみましたところ、『大忠臣蔵』太巻で3巻1セットの作品をお持ちの方がおられました。この作品もできることならデジタル化して見てみたいものです。神戸映画資料館の安井館長にも尋ねて見ましたら、時代劇はお持ちではありませんでした。その代わりと言っては何ですが、北村量太郎という人が中学・高校生時代に自作した以下の紙フィルム2作品をお持ちでした。昨年の発掘映画祭で上映されたのでご覧になった方もあるでしょう。

①『魔法使と王子』 1930年代/2分[6fps]/元素材:紙フィルム/無声 東海映画第一回作品 作者:北村量太郎

②『百合若大臣』 1930年代/12分[6fps]/元素材:紙 作者:北村量太郎

見逃していたので、この12分の大作がどのようなものか興味津々です。ふと、当館で2回にわたって展示した熊本市内にお住まいだった当時15歳の少年だった芹川文彰さんがペン画で描き通した『(実録)忠臣蔵』(1926年)のことを思い出しました。約500枚もあります。熊本の劇場でご覧になった記憶だけで描いた巧みな絵です。北村量太郎さんや、芹川文彰さんのような無名の多くの人々の存在が、今日“クール”と呼ばれる日本の漫画やアニメーション躍進の土台を築いたのでしょう。芹川さんだけでなく、北村量太郎さんについても、その熱量の凄さに圧倒される思いです。

余計なお節介と思いつつ呼びかけをしたいです。「もしも、お手元に紙フィルムをお持ちでしたら、デジタル化にご協力いただけませんでしょうか?」。今年4月エリック先生はアメリカのニューヨーク映画博物館で「紙フィルム」についての講演をされます。その発表に当館も協力できることを嬉しく思います。いずれサイトを公開されるでしょうから、それも楽しみになさってください。1932年にレフシーが特許を申請した紙フィルムは、戦争激化に伴い1938年に製造禁止になり短命に終わった日本独特のメディアです。




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