おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2024.05.28column

大雨の一日でしたが、心は快晴

昨日朝、元大映スチールカメラマンとして活躍されていた都筑輝孝さんの遺品の中から映画関係の資料を受け取ってきました。都筑さんからは、これまでも折に触れ寄贈頂きましたが、最後まで手元に置いておられた品々です。今、リストを作成していますが、大映の倒産間際に携わった作品が主です。大判写真45枚、スチール写真250枚、写真帳9冊、シナリオ69本です。今年はVIPO(特定非営利活動法人映画産業振興機構)の調査がありますから、活かせて丁度良かったと思います。

中でも嬉しかったのは、連れ合いの恩師のお一人、カメラマンの渡辺貢先生の大きなスチール写真があったこと。

大阪芸大映像学科でも、指導されていました。都筑さんと仲が良かったのだそうです。在りし日を思い出し、しみじみ見入っています。亡くなってもう何年たったでしょうか…。本当に良くして頂きました。一緒に歩いて山を越えて渡辺先生宅まで訪ねて行った思い出もあります。この秋には、都筑さんから寄贈して頂いた資料の展覧会ができたらと思っています。

そして今日は、朝から大雨ですが、そんな中バックネル大学エリック・フェーデン教授とエリザベス・アームストロング教授が3人の大学院生と一緒に来館。アメリカから直行された東京では85本、昨日は神戸で5本の“紙フィルム”をデジタル化する作業をしてこられました。

中でも興味深かったのは、“レフシー”や“家庭トーキー”だけでなく、「水中商店」(目黒区下目黒4丁目968)が月と星を合わせたマークを付けて販売していた紙フィルムが見つかったことです。福島加奈子さんの『混淆する戦前の映像文化―幻燈・玩具映画・小型映画』(思文閣出版、2022年)では、その会社の紙フィルムと“反射式家庭活動映写機”の存在が「実物資料等から判明した」(287頁)と書いてあるのみですが、この間に実物が2作品見つかり、しかもそのうちの一つはレコードも一緒に見つかったそうです。エリック先生のお話では、その1作品はアメリカとも関係がある内容で、これから福島さんと協力して論文を書かれるのだそうです。実物にはもちろんですが、その論文にも興味津々です。

さて、テーブルの上で学生さん3人が組み立てているのは“きょうりんりん”の2号。昨年持参された1号機より高精度だそうです。改良に貢献されたのは手前向かって左のポニーテールの男性。コンピューター・サイエンスを専攻されているそうです。あとの2人は映画学専攻で、3人はそれぞれの担当をより早く正確にできるよう特訓して来日されたそうです。全く手慣れた手つきで組み立てをし、静かにスキャンをし、入力をして、速やかに機械を片付けておられました。頼もしい若者たちでした。

コダックのジョージ・イーストマン・ミュージアムでは全ての映画の方式の規格のコレクションを進めておられますが、紙フィルムは所蔵されていないので、そこに提供し、“おもちゃ映画ミュージアム”のクレジットを入れて紹介して下さるそうです。万一当館の存在がなくなっても、活動していたことが分かるので大変嬉しいご提案です。

4月11日ニューヨーク映画博物館で開催された「オーファンフィルム・シンポジウム2024」の折、エリック先生とジャクソン・ルビアーノさんによる紙フィルムについての発表は大変な反響を呼び、他でも発表してほしいという依頼があるそうです。日本オリジナルのメディア、しかも戦争のために5~6年という短命に終わってしまった紙フィルムの存在を、多くの人々が知って、関心を寄せて下さることがとても嬉しいです。このことに多大な貢献をして下さったエリック・フェーデン教授とお仲間に心より感謝申し上げます。

もしも、お手元に「紙フィルムがあるよ」という方は、

こんな風にバラバラの断片になってしまう前に、どうぞお声がけください。貴重な紙フィルムをデジタル化して、映像をお渡しすると同時に紙フィルムもお返しします。紙フィルムのアーカイブに是非ご協力をお願いいたします。

写真の紙フィルムは、芦屋小雁さんからお借りしたうちの1本ですが、こんなバラバラの状態の中から、裏面にタイトルが印字されていることが確認できました。それは『決死の三百哩』というものでしたが、検索してもヒットしません。ですが、この2巻もののフィルムにはカウボーイやカーレースらしいシーンが出てくるところからアメリカ映画らしいです。オリジナル・タイトルが分かり、それが日本でも上映され、評判を呼んだ結果、紙フィルムにまでなってお茶の間で楽しんで見ておられた等という経緯が分かるとすれば、紙フィルムについてもう少し詳しい状況も分かってくることでしょう。他にも小雁さんから『桃太郎の荒鷲退治』と『狸の風船玉』をお借りしてデジタル化して頂きました。

他にも先ごろ北海道の松山明憲さんから寄贈いただいた日活京都の辻吉郎監督作品、大河内伝次郎の『荒木又右衛門』(上)(下)もデジタル化して頂きました。オリジナルフィルムは既に散逸し、当館のおもちゃ映画でも剣戟シーンだけしか残っていません。幸いなことに、今回の紙フィルムにはそれ以前の座敷での場面があり、おもちゃ映画に加えると最長版になる可能性があります。紙フィルムは短命に終わった映画フォーマットですが、こうした事例を目の前にすれば、貴重な取り組みだと改めて実感します。

雨の中、次の目的地に向かわれる一行の後ろ姿を見送りました。あと一か所紙フィルム所蔵館を訪問されるようですが、その首尾が上手くいきますようにと祈っております。

エリック先生から地元の創業1907年の歴史がある老舗のチョコレートを頂戴し、エリザベス先生からは手描きのシールをプレゼントして頂きました。日本語が素晴らしく綺麗で流暢なエリザベス先生は書道が得意と前回知りましたが、イラストもお上手だったのですね。今日は久しぶりにお会いできるとあって、晴れるようテルテル坊主さんに祈っていましたが、ガッカリの雨で、一番下のイラストがピッタリの一日となりました。

でも、都筑さんのおかげで懐かしい渡辺先生のお顔写真を拝見し、エリック先生とエリザベス先生にもお会いできたので、心の中は快晴でした💗

 

記事検索

最新記事

年別一覧

カテゴリー