おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2024.06.01column

紙フィルムデジタル化作業

米国バックネル大学エリック・フェーデン教授と日本語が堪能なエリザベス先生が28日に次いで今日も来館。今、芳名帳を振り返ってみましたら、最初の来館は開館して間もない2015年6月4日の事でした。随分早くからお二人と出会っていたことに、今更ながら驚いています。エリック先生は、活弁に魅せられ、次いで錦影絵に魅せられ、そして2019年頃から紙フィルムに魅せられておられます。コロナ前にはお手製の紙フィルムスキャナーを考案して、幾度となく通ってデジタル化に挑戦。その後のコロナ禍で外出がままならない中、試行錯誤しながら紙フィルムを傷つけることなくスキャンしてデジタル化する装置「きょうりんりん」を開発されました。

今回の来日では、先に東京でデジタル化作業を終え、27日神戸でも作業。すっかり手慣れた様子のプログラム専門と映画学専門の3人の学生さんを伴って、5月28日に当館でデジタル化の作業をされました。その後、3人の学生さんたちはひと足先に帰国され(寿司やてんぷら、お好み焼きなどを食べて日本食を満喫されたようです)、昨日は千里の国立民族学博物館(みんぱく)でもデジタル化作業ができたそうです。昨年からアプローチしていたのですが、なかなか許可を得られず随分心配しましたが、無事にスキャンが許可されたことを心底嬉しく思いながら報告を聞きました。既にスキャンしている作品もあって、そういった作品については比較検討しながら良い所を纏めて仕上げるやりかたで進められます。中には、一度も紙フィルムプロジェクターにかけられていない新品の紙フィルムもあったそうです。レコードについてはもう一度スキャンするとのこと。今回の日本訪問では、合計130本の紙フィルムをデジタル化してデータを集められたということです。大変な量です‼

去る4月11日に、ニューヨーク映画博物館で開催された「オーファンフィルム・シンポジウム2024」でエリック先生たちが紙フィルムについて発表されたことは、かなり大きな反響があったようで、今後たくさんの場所で発表ができそうだとのことでした。最初にデジタル化で協力させていただいたご縁で、当館の紙フィルムを用いての発表となり、それをご覧になってニューヨークから訪ねてきて下さった方も2人おられます。「6800マイル以上離れているのに来てくれたことは、素晴らしい‼」とエリック先生。全く同感です。今後先生があちこちで発表されることで、オリジナルを持っているところを訪ねて下さる人も増えるでしょう。「昨年と今回紙フィルムのデジタル化に協力して下さった個人・機関と成果を共有して、今後の展開を一緒に考えて進めたいと話して下さいました。

これは、館内に展示している1992年英国のBKSTSが制作した様々なフィルム規格とサウンドトラックを紹介したパネルですが、同じようなものがニューヨークのコダック・イーストマン・ミュージアムにもあって、そこのアーカイブの方がエリック先生の発表を聴いて、写真紹介で「紙フィルム」のフォーマットも加えたいと依頼されたのだそうです。データには「おもちゃ映画ミュージアム」と書いて下さるようなので、そのことも嬉しかったです。様々なフィルム規格の中に、僅か5~6年しか製造されなかったとはいえ、日本独自のメディア「紙フィルム」が認められ掲載して頂けるのは大変嬉しいことで、エリック先生たちの尽力の賜物です。

今回の成果を発表することで、他にも紙フィルムをお持ちの方が名乗り出て下されば喜ばしい限りです。おそらく来年もエリック先生は「きょうりんりん」を持って来日して下さることでしょう。映画祭で上映したり、映画館での上映、特に大学での上映などをしていくことで、メディア考古学、映画学、アニメーション、東アジア研究など多方面の分野にわたって関心を持って下さる人が現れるでしょう。その方たちの研究に貢献できれば嬉しいです。

エリック先生は、紙フィルムのデジタル化に取り組むと同時に、1月5日に講演して頂いたUCLAのエルキ・フータモ先生、早稲田大学名誉教授の草原真知子先生らと一緒にメディア考古学の本を出版しようと、執筆中なのだそうです。その本を手にするのも待ち遠しい思いです。「紙フィルムのデジタル化は、僕のライフワークになるだろう」と笑顔で話されました。

一つだけ気になったエリック先生の言葉に「アメリカではアニメが一番!」。どういう作品編集にして上映するのかが大事だと申した時の、言葉でした。1932年に印刷会社のレフシーが特許を申請した時には既にカラーコピーができました。映画はまだモノクロの時代でしたから、それをコピーした実写版の紙フィルムは当然モノクロですが、絵は手描きですからカラーのマンガを描けば動くカラーのマンガを見ることが出来ました。カラーのアニメーションにレコードを同期させて見るのはさぞかし楽しかったでしょうね。

エリック先生の言葉を聞きながら、「実写の映画よりアニメーション映画が上をいく人気だというのは日本もアメリカも一緒なのだ」、そう思っているところに、豊島区立トキワ荘マンガミュージアムから、特別企画展「鈴木伸一のアニメーションづくりは楽しい‼~トキワ荘からアニメの世界へ~」のポスターとチラシが届きました。

鈴木伸一先生は、ベテランアニメーターの人たちと結成した「G9+1」の作品を、京都国際映画祭で上映した折りに、当館にも来て下さったことがあります。その先生の歩みと、アニメーションについて学べる特別展があることを壱岐 國芳さんのFacebook投稿で知って、つい、「欲しい」と無理な願いを書いたところ、壱岐さんのお声がけで送って下さいました💗

早速アニメーションの仕組みが分かるプラキシノスコープやゾートロープなどを並べた展示場所に飾りました。

鈴木伸一先生は1933年12月4日生まれだそうです。紙フィルムの特許を申請したのがその前年の1932年。戦争の激化に伴い、1938年に製造禁止令が出ますから、先生がまだ小さい子どもだったころの話。先生のお家にも“おもちゃ映画”や紙フィルムはなかったかしらね?「先生、どうでした?」とポスターに話しかけています。

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