おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2024.06.06column

刺青展のお客様

今開催中の「毛利清二の世界 映画とテレビドラマを彩る刺青展」には、おかげさまで遠くからも観に来て下さっています。写真は『徳川いれずみ師  責め地獄』(1969年、石井輝男監督)に出演された片山由美子さんです。お綺麗ですね💗 下絵向かって右が片山さんの腕に毛利さんが描いた「血染の生首」、中央が背中に描いた「骸骨と生首」です。どんな場合も「本番で描く時は下絵が全部頭に入っているから、下絵は一切見ない」と仰っていました。

この作品のポスターも掲示していますが、中央に写っているのは諸般の事情で降板された由美てる子さん。代わりに注目されたのが新人女優の片山さんで、前半の主役を務められました。その予告編を流していますが、言葉は悪いですが、なんか無茶苦茶な過激映画かと。ちなみに石井輝男監督は今年生誕100年だそうです。

展覧会期間中上映している毛利さんのお話では、『遠山の金さん』などで主人公が背中の桜吹雪を見せるのは毎週土曜日だったなどと話しておられますが、『徳川いれずみ師  責め地獄』では、ほぼ裸での撮影が毎日行われていましたので、女優さんたちは毎日こうした絵を描いてもらっては、撮影後にベンジンなどで落としてから、すぐ隣のお風呂で洗い流しておられたのだそうです。「まだ二十歳で若かったから肌ももったのでしょう」と話しておられましたが、なかなか女優業も大変です。3月10日のトークイベントで、毛利さんは「シャワーで毛穴を開かせてからシャンプー、ベンジン、コールドクリームで落とす」と話しておられました。

来館の記念に色紙にサインして貰いました。1968~76年に人気を博したテレビドラマ「プレイガール」に、片岡由美子役で出演されていました。今は兵庫県内にお住まいだそうです。5月5日にX(旧Twitter)で「2017年6月17日中川信夫監督の“酒豆忌in京都”の折に、片山由美子さんが来館。展示中の刺青下絵には、片山さんに描いた“血染の生首”も含まれ、ポスターや“責め地獄”の映像も流しています。背中に刺青の絵がある12人の女性がズラッと居並ぶ写真もあって、描く方、描かれる方とも大変だったでしょう」と書いたところ、片山さんが「いいね」を押して下さり、リポストまで。更にはフォローまでという奇跡が起こりました。そして、「お友達からこの投稿を知らせていただきました。 毛利さんのお元気なお姿を拝見しましてとても懐かしく嬉しかったです 。是非とも近日中にお伺いしたいと思ってます。よろしくお願いいたします」との書き込みまで頂戴し、天にも昇る嬉しさよ、でした。そして、それが6月5日に実現したのでした。毛利さんに事前にお伝えしてお二人をお引き合わせすることまでは出来ませんでしたが、懐かしく思って来て下さったことは毛利さんに忘れずにお伝えします‼

片山さんから頂戴した写真です。片山さんがトークイベントに出演される時には「刺青の絵をベンジンで落としたのですよ」と話すのだそうです。記憶に深く刻まれた体験なのだと分かります。それで、「今の撮影現場ではどんな方法で刺青絵を落とすのかしら?」と気になったので、先月半ばに知りあった肌絵師さんに尋ねました。

……メイクオフにベンジン。はい、僕も25年ほど前の駆け出しの頃、撮影後に某俳優さんの肌絵をバラす際に、「ベンジンないのか?儂ら昔から顔でもベンジンで落とすんやで」と言われた経験があり、その後の作品でベンジンを用意し別の俳優さんに使用しようとした所、「え?それ誰に使うの?」と聞かれ脳裏に「あ、これ違う。マズい。」と察して、筆の手入れ以外、人の肌には使用した事がありません。 現在、僕の肌絵の場合は、手法によって扱う材料が違うのでお風呂でボディソープで落とす場合や特殊リムーバー、アルコールを使う場合など色々になります。……

とのことでした。さらにネットで検索したら「介護施設でオストメイトの方のパック交換時にシール跡をベンジンで拭き取っている」という書き込みを見つけて驚きました。まさか、今はそういうことはされていないだろうと思い、念のためブーケ〈若い女性オストメイトの会〉の知り合いに尋ねてみました。看護師さんにも尋ねて下さり「30~40年前には使われていたかもしれません。当時はみんな手探りだったかもしれません。現在は専用の剥離剤(リムーバー)がいろいろと販売されているので、そちらが普通になってきていると思います」」と返事が来ました。

片山さんとあれこれ話をしていたら小田原市立白鳳中学の5人が見学に来館。せっかく訪ねてきてくださったのですから、館長の説明付きで、常設展のところと戦前のアニメーションに活弁と音楽を付けたバージョンを観て貰うだけのコンパクトバージョンで見学してもらいました。それでも喜んでくれたので片山さんと一緒に記念撮影。

良い思い出の一つになって欲しいです。皆さんようこそ訪ねて下さいました。

さて、今日は大阪の彫師さん5人が連れ立って来館。刺青は江戸彫友会からだんだん波及して来て関西でも広がったそうで、やはり東と西では地域性を反映してか違いがあるそうです。「首」の付く部位が痛いらしく、首まわり、乳首、手首、足首が痛く、お尻も痛いと仰っていました。それでも刺青を入れるのが、我慢の美学なのでしょう。下掲写真は、中央彫師さんの首から頭にかけての刺青。見ているほうが「オオッ、痛い!」。

先日来館の岐阜の若い女性は「大阪の彫師さんに8時間かけて施術してもらう」と話しておられましたが、その彫師の方はこの中にはおられなかったです。「1回に8時間とは長い」とびっくりしたので、昨日高知県から来られた彫師さんにも問いかけましたが、特に驚くことではないようです。彫って貰う人の根性が違うと言いますか、我慢が半端ないですね。写真右端の人の経験では11時間が最も長かったそうです。それはハワイから来られた人で、11時間、10時間、8時間、5時間の施術をしたそうですが痛がらなかったとか。不死身‼ 別のオーストラリアの人の場合は、翻訳アプリで「痛みが凄すぎる」と訴えて直ぐ帰った人もおられたとか。右から2人目の彫聖さんは彫り物が外から見えないお洒落を貫いておられます。左端の20才の女性は1年半前に弟子入りし、お客様に彫ったのは、つい2週間前が初めてだそうで、感想を聞いたら「楽しかった‼」。刺青に関する意識が変わっていることを実感します。

第1期は16日までで、19日から第2期が始まります。高倉健さん実物大のパネル『昭和残侠伝 人斬り唐獅子』(1969年)や毛利さんの刺青絵師デビュー作で思い入れが最も深い『博奕打ち一匹竜』などの下絵やポスターなどの展示をご覧いただけるのも16日までですから、まだご覧になっていない方はお急ぎください。今展示している3点の下絵を除いて総入れ替えをします。毛利清二さんの下絵は、どんどん手慣れてきて緻密になり絵も大きくなっています。『緋牡丹博徒』や『極道の妻たち』などよく知られている作品が多いので、どうぞお楽しみになさって下さい。入場いただいた折にお渡ししている記念ハガキも2種類からお選びいただくようにします。目下、16日の毛利清二さんをお迎えしてのギャラリートークの参加申し込みを下記QRコードで受け付け中。

定員に達し次第締め切りますので、希望される方はこちらもお急ぎください。どうぞ、宜しくお願いいたします。

 

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