2017.11.02column
京都国際映画祭2017、私の見聞録~10月15日編
10月15日(日)10時~11時20分、よしもと祇園花月でのプログラム「日本のアニメーション百周年記念作品『九爺一助☆新畫帖』」と『G9+1のナントカ天国』。写真は、上映後に登壇して勢揃いした「G9+1」のメンバー8人。
左からひこねのりお先生(東映動画、虫プロを経てフリー。カールおじさんのTVCM、みんなのうた「赤鬼と青鬼のタンゴ」他)、きらけいぞう先生(スタジオゼロ、不二アートフィルムを経て、′81年㈱ スリー・ディ設立。「まんが日本昔ばなし」「みんなのうた」他多数)、福島治先生(ビデオプロモーションでアニメCM制作を経てフリー。「みんなのうた」「おかあさんといっしょ」他多数)、一色あづる先生(東映動画を経てフリー。映像・レーザー等のアニメーション・イラストで活躍)、和田敏克先生(電通プロックスを経て、東京造形大准教授。「プチ・プチ・アニメ」「みんなのうた」等)、大井文雄先生(多摩美大アニメ―ション部創始者、㈱スリー・ディ設立に参加。「みんなのうた」等多数。3DCG草分け)、古川タク先生(TCJ、久里実験漫画工房を経て、フリーのひとコマ漫画家イラストレーター、アニメーション作家として活躍。日本アニメ―ション協会会長)、鈴木伸一先生(トキワ荘に住んだ後、横山隆一氏主宰おとぎプロへ。スタジオ・ゼロ設立。杉並アニメーションミュージアム館長。ラーメン大好き小池さん)。
島村達雄先生(東映動画、学研、東京コマーシャルを経て、′74年㈱白組を創立。TVCM、大型映像、映画VFX、短編アニメなど千本以上の作品を手掛ける)と西村緋禄司先生(旧虫プロ一期生として入社。退社後も手塚アニメの作画監督、キャラデザイン、演出を担当。みんなのうた「一円玉の旅がらす」。挿絵画家としても活躍中)のお二人はご都合が悪く、おいでになりませんでした。
10人の平均年齢は73.5歳で、キャリア50年以上の超ベテラン揃い。最年長は、島村達雄先生だそうです。入会条件は60歳以上なのですが、『TOKYOファンタジア』のタイトルバッグを和田先生が作られたことから、一番若い和田先生が仲間に入って+1になったそうです。和田先生は、こまごましたことを引き受けてくださる役回りで、今回の原画展をはじめ様々なことで和田先生には、大変お世話になりました。
マイクでお話されているのは、鈴木先生。「寝ていて思いつくと、起きて描かないといられない。でないと忘れる」と話しておられました。話はやや逸れますが、先日見に行ったあべのハルカス美術館「北斎-富士を超えて―」の気迫のこもった葛飾北斎晩年の「百」の印を押した作品の数々を思い出しました。己に満足せず、まだまだ高みを目指し、百歳まで生きて“一点一画にして生けるがごとく”描きたいと望んだ作品は心を打ちました。ここに勢揃いした先生方も同じ気持ちで描いておられるのでしょう。
このプロジェクトが発足して、既に7作品が完成していて、この日は9月に東京で完成披露されたばかりの『九爺一助☆新畫帖』から始まり、『TOKYOファンタジア』『穴・The Hole Stories』『G9+1のナントカ天国』を上映。テーマに基づき、それぞれの作家が制作した作品を繋げたオムニバス・アニメーションの数々。東京から見に来て下さった知人は「それぞれの個性ある短編映像はアニメ版ゲバゲバ90分みたい?」と表現していましたが、「ゲバゲバ90分」も若い人は知らないでしょうね。「こんな大きい劇場で驚いた」「劇場が作品より大きくて『負けたなぁ』」などと感想を述べておられましたが、皆さん、楽しそうな表情を見せてくださいましたので、とにもかくにも良かったです。映画祭事務局のレポートはこちらをご覧ください。
そのあと、小雨降る中、急いで大江能楽堂へ移動しました。正会員でもある池田光惠・大阪芸術大学教授率いる「錦影絵池田組」の公演は正午開演。演目は池田先生創作・演出『春朧花機巧に壁くぐるとは』と上掲写真の『花輪車(かりんしゃ)』。暗闇で上手く撮れませんでしたが、内容は下掲チラシをご覧ください。
今年7月2日に当館で錦影絵の上演とワークショップを開催した時には、大入り満員で入場をお断りせねばならない状況でした。もっと広い会場でご覧いただきたいと提案して、実現したものです。 能楽堂に錦影絵はとても似合うと思ったのですが、貴重な建物ゆえ和紙スクリーンを張るのが難しかったようです。
上演後に、池田先生からどのように作り、演じるのか説明がありました。演じ手は大阪芸術大学の学生さんたちです。
司会進行のアッパレード・木尾さん(写真左から2人目)が、「やってみたい!」ということで初挑戦。背中にバッテリーを背負い、前に「風呂」を抱えて幻燈の操作をします。
勢揃いした「錦影絵池田組」の皆さん。9月23日に東京の国立劇場で公演されたばかりでもあり、学業と並行しての練習は随分と大変だったことだろうと思います。大江能楽堂での公演は、池田先生にとって重要な節目になると思いましたので、是が非でも観に行かなかればと思っていました。伝統ある素晴らしい舞台で、公演できて本当に良かったと思います。映画祭事務局のレポートはこちらです。
続いて、14時40分から、サイレント/クラシック部門最後のプログラム「伝説のコメディエンヌ~喜劇の女王 メ―ベル・ノーマンドPart2」。上映作品は『水の妖精』(1912、アメリカ)と『臨時雇の娘』(1923、アメリカ)。
上映後のトークタイム。右から解説:喜劇映画研究会代表の新野敏也さん、活弁士の山崎バニラさん、音楽の坂本真理さん、司会進行の木尾さん。これまでバニラさんは演奏しながら活弁するスタイルでしたが、今回は活弁に集中、という珍しいパターン。
本番前に精神を集中している坂本さん。手作り楽器もたくさん用意して演奏を工夫して下さいました。バニラさんとハーモニーを披露される場面もあり、こうした無声映画の楽しみ方を初めて体験し、とても興味深かったです。
無声映画伴奏用に東京から用意して下さった楽器たち。坂本さんのアイデア満載です。10月29日に坂本さんがツイッターでアメリカの演奏家の動画をリンクし、「国立音大在学中、『楽器学』の授業でみた無声映画用の自動演奏機が、今の私の映画楽士演奏のルーツです。『荷持多すぎ』な鍵盤&打楽器&ヴォイスパフォーマ―は、ここからスタートでした」と書いておられのを拝見し、「真理ちゃん先生の演奏のスタイルは、ここにルーツがあったのかと納得!」と書き込みました。
手前右は「オルガニート」といって、坂本さん自ら手回しオルゴールのために楽譜を起こし、穴をあけられたもの。オルガニートは、当館で3月30日「かみしばいこども劇場 リズムと遊ぼう!リトミック」をした時にも披露して下さいました。その時は紙芝居の読み聞かせの時に、おもちゃ映画ミュージアムのテーマソングを手回しオルゴールの優しい音色で聞かせてくださいました。でも、今回の映画祭の時は新野さんが担当だったらしいのですが、うっかり紙を逆さに入れてしまわれたらしく…。でも海辺の効果音などは新野さん、バッチリでした。新野さんは作品選びだけでなく、解説に効果音にと一人何役もこなして大活躍。映画祭事務局のレポートは、こちらです。
最後に、大江能楽堂の前で記念撮影。後列左から私の陰になってしまい、残念ながらチロッとしか写っていない活弁士の山内菜々子さん。その隣はチャーリー・チェイスのロストフィルム『WHY MEN WORK』を発見してくださったクラシック喜劇研究家のいいをじゅんこさん、演奏の鳥飼りょうさん、活弁士の片岡一郎さんと大森くみこさん、連れ合い。前列左から新野敏也さん、演奏の坂本真理さん、活弁士の山崎バニラさんです。
サイレント/クラシック部門は、これまでの京都国際映画祭で最も多い作品を上映し、活弁士さん、演奏家の人数も最多という豪華で充実した内容でお送りしました。ご来場くださった皆様、そして出演者の皆さま、スタッフの皆さま、本当にありがとうございました。
夕方18時から、京都ホテルオークラでクロージングパーティ―が華やかに繰り広げられました。ここでも多くの方にご挨拶をさせていただきましたが、中でも印象に残ったのは京都府知事の山田啓二さん。2015年の開館に際し祝電を頂戴しましたが、直接お目にかかったのはこの時が初めて。日本の無声映画の残存率が低く、その貴重なフィルムを発掘し、修復し、保存して次世代に継承するための活動をしているとお話をさせていただきました。
吉本興業代表取締役社長の大﨑 洋さんに、古川タク先生を紹介できたのも良かったです。古川先生が差し出された「新千歳空港国際アニメーション映画祭実行委員会名誉委員長」の名刺に大変興味を持たれたようです。その映画祭は、丁度今日11月2日から5日迄新千歳空港ターミナルビルを会場に開催されます。詳しくは、こちらをご覧ください。
余談ですが、大﨑さんにご挨拶した時、昨年この会場で「超新星のソンモさんのファンがたくさん訪ねてくださって感謝しています」とお礼を申し上げたところ、「これからもドンドンやるよ」といきなりエイエイオー!とされたので、呼応して私もエイエイオー!と右手を高く挙げたのを良く覚えておられて、「確か昨年、あそこらへんの席でエイエイオー!とやったな」とおっしゃられたのには吃驚仰天しました。こんなことまで覚えておられるとは、恐れ入りました。
一色あづる先生が、美しい舞妓は~んの実佳子さんの口元について質問されたことから興味を持って聞き調べた内容は、こちらでも書きましたが、実佳子さんと出会ってから既に半月経ちました。お歯黒と先笄(さっこう)という髪型をして過ごす2週間を過ぎたので、しきたりの衿替をして、舞妓から芸妓になっておられるでしょう。漸く地毛で髪を結わなくても良くなったので快適でしょうね。貴重な時期の舞妓さんに出会えてラッキーでした。
「錦影絵池田組」の池田先生と太田美波さん。やり切った感が伝わります。
「G9+1プロジェクト」の鈴木伸一先生、一色先生、和田先生。この度は本当にお世話になりました。壇上に立たれて挨拶された古川先生が「アニメーション部門を、ぜひ毎年恒例にして下さい」と述べられましたが、きっとそうなるだろうと思います。よしもとさんがスポンサーになってアニメーションを制作されるのも良いのではないかしら?今回の映画祭のキャッチは「京都三泊四日。」でしたが、「京都でこんな盛大な映画祭を毎年やってたとは知らなかった」と古川先生。映画部門は、ほとんど東京で進められている感じがしないでもないので、動かない京都の人に対するよりは、「三泊四日」で京都観光を兼ねて来てくださる他地域の人々に向けて、もっと面白さをアピールして行く方が観光都市京都にとっても良いのではないかと思いました。
縁の下の力持ちで、最も尽力された㈱きょうのよしもと社長の木村深雪さんを真ん中に、みんなで記念写真。楽しい宴でした。ありがとうございました。