おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2023.10.07column

10月6日の日記

東京都八王子市にある帝京大学総合博物館の堀越先生が見学に。よくわかっていないままにおしゃべりをしていて、随分経ってから

漸く、今月15日まで開催中の「『日本アニメーションの父』政岡憲三とアニメーションの現在」を担当されている方だと分かって、29日超久しぶりにお江戸へ行くのに、その時には展示が既に終わっていて見ることができない愚痴をツラツラと。仕方ないことだけど。。。でも、企画展実施に際してのご苦労など興味深い話も聞けました。ご都合つく方は、ぜひ堀越先生たちが精魂込めて準備されたこの企画展をご覧下さい。博物館つながりということで、次に来館されたイラン・グェン先生をご紹介出来たのも良かったです。

さて、そのイラン・グェン先生と何年かぶりに再会しました💗昨年の春まで東京藝術大学大学院で教えておられましたが、契約が満了してフランスに帰国され、現在は東フランス・アルザス地方にあるコルマール市で2027年開館予定の「ヨーロピアンマンガ・アニメミュージアム」常設展の構成を担当しておられます。その準備のために10日間ほど来日され。その行程に当館訪問を組んで下さったことに先ずは感謝です。東京新聞7月11日付け記事をネットで見つけましたが、とても面白い建物です。完成したら、ぜひ訪れてみたい博物館。きっと名所になるでしょう。
 
9月22日に訪問頂く旨のメールを受け取った時、丁度質問したいことがあったので、これ幸いに尋ねてお答えいただいたことも、再度話題に上がりました。その私の質問というのは「フランスでも、上映された後のフィルムの断片を販売していましたか?」ということ。最近フランスから出品された『クレオパトラ』(1917年)の断片(1分20秒)を落札された人が、その映像をYouTubeで公開しています。今現在で12万回も視聴されています。落札したイギリスの方とやり取りをしていて、この方は当館のことを知っておられたのにも驚きました。
 
私の質問に対して、グェン先生は「フランスにおけるフィルムの断片の販売に関しては、全く詳しくはありませんが、時代も大きく変わり、日本のように家庭用の35㎜の映写機材の販売はなかったはずですので、大きな規模のフィルム流通もあまり考えられません。けれども、骨董としての売買は、今も専門的な業者がフランス全国にいますし、年に一度のパリ郊外での数日の集まりも存在しており、そこで映画に関するあらゆるものが販売されます。基本的にはブース形式で、フィルム業者も参加します」とのお返事でした。
 
俄然、この「年に一度のパリ郊外での数日の集まり」を覗きにいってみたい欲求に駆られました。円安でなかなか実現は難しいでしょうけど。。。手にしておられるのは、この日、日本映画史家の本地陽彦先生から届いたばかりのフランス「パテ社創立50年」の記念メダル。
 
 
パテ4兄弟の中でビジネスを主導したシャルル・パテの横顔がメダル表面に刻まれています。1897年パテ社が誕生し、それから50年経った1947年に作られたメダルの直径は約8㎝。結構重いです。裏面上部中央にトレードマークの鶏、真下に映写機のクロスカムがあしらわれています。
 
丁度10月14日に上映する世界初の女性映画監督で約1000本ともいわれるフィクション映画を作ったアリス・ギイが活躍した時代。シャルルは1902年にリュミエール兄弟から映画関係の特許を取得し、やがて同社は世界の映画市場のシェアの多くを占めるまでに成長します。この会社で1922年に誕生したのがひよこのマークのパテ・ベビー(9.5㎜)。日本に入ってきたのは翌年の1923年のこと。16㎜も同じ年です。というわけで10月の展示は4日から「小型映画の展示」をしています。このメダルだけでなく、カメラや映写機などの機材やそれで撮った作品を紹介しています。ぜひ、この機会に実物を間近でご覧下さい‼
そうこうしているうちに届いたうちの一つが、コミュニティシネマセンター岩崎さんからプレゼントして頂いた「鑑賞ノート」2種。
左側は昨年制作された「セロ弾きのゴーシュ」鑑賞ノートで、右側が今年制作された「世界のアニメーション作品集①」鑑賞ノート。「世界のアニメーション作品集①」で解説などを手掛けられたのは、昨年10月29日に「スタレヴィッチとショヴォー『狐物語』の動物寓話」の演題で講演して下さった東京藝術大学大学院教授の山村浩二先生。先日、山村先生のFacebookでこの鑑賞ノートのことを知って、当館に見学に来た子どもたちの鑑賞の手引きにもなると思い、岩崎さんに少し分けて欲しいとお願いした次第です。希望を叶えて下さって嬉しいです。ありがとうございました💗 早速館内に配架しました。
 
山村先生は講演で、『狐物語』を作ったスタレヴィッチ監督のアトリエを訪問し、実際にアニメーション作りで用いた人形たちをご覧になった折の写真も見せて下さいました。どうしてこの作品を私が取り上げたかという背景には、実はグェン先生も関係していたことを昨日お話しました。そして驚いたことですが、この作品をボランティアで日本語訳して下さったお一人、オリアン・シードルさんのことをグェン先生もご存知でした。偶然、彼女たちが今住んでいる場所がスタレヴィッチ監督のアトリエの近所で、グェン先生はスタレヴィッチ監督のお孫さんともお知り合い。いくつもの面白いつながりがあったことを知りました。オリアンさんともう一人、日本語訳に尽力して下さった岡村さんは「この素晴らしい人形アニメーションの内容を日本の人々にも理解して楽しんでもらえるようにしたい」という私の希望を叶えて下さいました。けれども、中世のお話を、今ではフランス人が使わない古語で歌ったり、話したりしているので、訳すのが相当困難だったようです。お忙しい中にもかかわらず、大変な努力を重ねて訳して下さった彼女たちの努力を、何とか活かせるようにできないものかしら。そのこともグェン先生に話しました。
フランス繋がりで、フランス語の当館チラシも出来上がりました。翻訳して下さったのは、7月29日フランスのルアネックからお父様と来館頂いたCarmina Lecarpentierさん。お忙しい中にもかかわらず、1か月後にフランス語訳して送って下さいました。通りがかりで面白そうだと立ち寄って下さった父娘さんでしたが、映画が大好きで興味を示してくださり、とても楽しい時間を過ごしました。見送るときに「フランス語のミュージアムの案内チラシがあれば良いのにと思っている」と話した私の願いを聞いて、快く引き受けて下さいました。日本語で書いている私の長文のブログも読んでくださっていたことも感激でした。
 
より正確を期すために、大阪大学准教授の東 志保先生にも見て頂きました。先生には2021年12月4日ジョルジュ・メリエス生誕160年企画として「ジョルジュ・メリエスのアクチュアリティ 幻想と現実」の演題でお話頂き、それ以来のご縁です。お二人のご協力のおかげで、フランス語圏の人にも手に取って貰えるチラシが出来て、とても嬉しく思っています💖デザインはインターンシップで来てくださった京都芸術デザイン専門学校の学生さんで、彼女たちが作った日本語版をもとに英語版、簡体字版、繁体字版、そしてフランス語版の5種類が出来ました‼
昨日最後に届いたのは、おもちゃ映写機(PRINCE)とおもちゃ映画フィルム1本とVHSビデオテープ1本です。主にフリーのカメラマンとして活躍された上斗敏嗣さん遺愛の品々。おもちゃ映画は缶に入って大切に保存されていたのでしょうが、劣化が進んでいてダメな可能性大。タイトルに『脱線自動車』とあり、アメリカのアニメーションの断片です。同じ作品が当館にもありますので、ホッとしました。
 
故人をご存じだった人に尋ねたところ、元々日本映画新社(通称:ニチエイ、日映新社)という記録映画や企業PR映画の制作会社にフィルム・カメラマンとして所属され、35年ぐらい前にビデオ・カメラも扱うフリーに転向されたそうです。Facebookでお顔写真を拝見しますと、まだお若い。寝ている間に心筋梗塞で苦しまずにお亡くなりになったとか。まだまだこれからという年齢での逝去。ご縁を得た者として惜しく思うとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。大切に保存します。
 
以上、急に秋がやってきた感がある10月6日の日記です。

 

記事検索

最新記事

年別一覧

カテゴリー