2016.11.21column
「人形劇の図書館」所蔵映像調査
11月18日(金)正午に、滋賀県大津市にある「人形劇の図書館」の潟見英明館長夫妻、岩田託子・中京大学教授、池田光惠・大阪芸術大学教授、吉岡映像の吉岡博代表と衣川太一さんが集合して、同図書館が所蔵されている映像を調査しました。
この日に合わせて映写機にかけられるように処置を担当された衣川さんが書かれた「作業内容報告書」(16㎜、8㎜、35㎜の合計18巻。報告書はA4、全9枚)と今回の仲介役岩田先生が用意された吉岡映像で作業依頼された映像の一覧表(A3、1枚)をそれぞれ手にスタンバイ。「おっと、それより腹ごしらえが先」とばかり、岩田先生が用意して下さった京都祇園新門前の創業天保初(1830)年の老舗「菱岩」の豪華弁当を輪になっていただきました。
「食べるのがもったいない」とか何とか云いながら、すっかり平らげました。186年の由緒あるお店の味は、手間暇をかけた上品なお味で、大満足。
連れ合いが暫く前の骨董市で買った幻灯機初使用。あまり区別が付かない私は「似たようなものが沢山あるから、もういいではないか」と口を尖らせたものですが、こうして人様の役に立つ瞬間が訪れました。セットして下さっているのは吉岡映像のお二人。暗い写真で恐縮ですが、手前右の男性が潟見英明さん、同左が奥様の文子さん。お二人で人形劇・トロッコも運営されています。文子さんは人形作家としても活躍。
お二人が運営する図書館(☎077-578-5455、ファクス077-578-5662、電子メールtorokko@nifty.com。要事前予約)は、日本で唯一の人形劇の専門図書館であり研究施設。人形劇・トロッコが創立20年を迎えて1991年に設立されました。所蔵は、近代・現代人形劇、伝統人形芝居、海外人形劇、人形からくり、影絵など幅広い分野にわたり、腹話術、人形、紙芝居、見世物など人形劇の周辺分野の図書・資料も蒐集。その数は図書1万冊以上、各種資料は数万点に及ぶそうです。それに比べれば、うちはまだかわいいものなのかもしれません。それでも収集癖の連れ合いを持つ者同士、「困るわねぇ。継承はどうするの?」という話で文子さんと意気投合。
35㎜幻灯機スライド上映を初鑑賞。
とっても美しく、丁寧な手仕事で、今見ても充分に思いが伝わる作品です。
人形劇団プークと光影社が提携した光影スライド「世界名作物語」の一つ、『春香伝』。韓国では知らぬ人はいないというほど有名で、ロミオとジュリエットのようなお話。スライド(全42コマ)の最初と最後に、子どもたちのレリーフが映し出されていますが、これは人形劇団プーク(1929年設立)の創立者で24歳の若さで夭折した川尻東次のお墓のレリーフだそうです。この作品の美術を担当した泰司はその弟で、兄の死後、劇団を継承します。
11月13日に木村荘十二について講演して下さった鷲谷花先生は、こうした類の幻灯資料を探しておられたのでしょうが、調査に来られた11日には用意できず残念でした。また機会があればと思います。
他にも白黒フィルムに彩色した『ノンキナトーサン』(全80コマ)もありましたが、残念ながら劣化がひどく、幻灯機での鑑賞は見送りました。
16㎜フィルムでは『サンダー・バード SOS原子旅客機』(大阪映教㈱)、『おこりじぞう』(翼プロ)、8㎜では『長靴をはいたネコ』(NHKサービスセンター)、35㎜では『人形と舞台』(学習研究社、図画工作スライド全集・工作編)を見ました。
岩田先生も人形劇団プークの『野ばら』を持参され、一緒に鑑賞しました。上掲光影スライド「世界名作劇場」のシリーズの一本です。この作品は神戸映画資料館にもあるらしく、昨年1月3日に同館で開催された「新春幻灯会 幻灯の運動表現」で、鷲谷花先生の出演で上映されました。『野ばら』は1952(昭和27)年に製作され、原作は小川未明、脚色は高橋克雄、演出は川尻泰司、美術は田畑精一、石井マリ子、撮影は佐竹春雄、制作は厚木たか。オープンセットを手作りして、そこに実際の植生、水、空を使って撮影した作品。
もう一人の池田先生は、6日に大阪府富田林市内の重要文化財・旧杉山家住宅での公演を終えたばかり。昨年はミュージアムに来館いただいた米国の大学生さんが大勢見学し、「漫画のルーツだ」と大喜びしていました。とっても綺麗なので、いつかミュージアムで小規模な公演ができないかと思っています。杉山家での公演に先立つ10月6~9日には、ニューオリンズで開催されたマジックランターン・ソサエティー・アメリカ&カナダの国際会議最終日に「錦影絵池田組」のプレゼンテーションとして「古狐輪廻之理」を上演。スタンディングオベーションの拍手に包まれ、この国際会議での最高賞を受賞したそうです。
そんな土産話も聴きながら、つるべ落としの秋の日は更けていきました。