おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2016.03.08column

台湾映画『湾生回家』

3月4日、仕事を途中で片付けて、急ぎ大阪の梅田ブルグ7へ。午後7時からの第11回大阪アジアン映画祭オープニング・セレモニー&TAIWAN NIGHTを観に行くためです。

DSC04548-1.jpg郭さん (2)丁度この日、おもちゃ映画ミュージアムに、台北からチャーミングな郭庭胎さんが来館。日本に1年留学していた経験があるそうで、流暢な日本語を話され、書くのも上手。彼女も台北映画祭、金馬映画祭のスタッフとして活躍しておられるので、昨年の台北映画祭におもちゃ映画ミュージアムが招待され、玩具映画を上映したことをよくご存じでした。台北映画祭が契機になって、これまでいったい何人の台湾の方が、ミュージアムへ足を運んでくださったことでしょう。古い映画を通じて、日本と台湾が交流を深められることの喜びで胸が熱くなります。若い彼、彼女たちは、とても賢く、台湾を代表するエリートたちなのでしょうが、決して偉ぶることなく、年配の私どもに温かく接してくださいます。そのことが嬉しくて、嬉しくて。一昨日と昨日は、着物姿で京都市内を散策している写真をFacebookで拝見しました。とても似合っていて、可愛らしかったです。娘がいない私どもには、娘を持つ親の気分を味わわせて貰っているようなもの。

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その郭さんも梅田ブルグ7の会場におられないかとキョロキョロしたのですが、見つけることができませんでいた。後で確認したら「観たかったけれど、チケットがとれなかった」のだそうです。と言いますのも、オープニング作品に選ばれたのは、台湾:電影ルネッサンス2016の『湾生回家(わんせいかいか)』だったからです。この夜の上映が海外初。私も初めて映画で「湾生」という言葉を知りましたが、「台湾で生まれ育った日本人」のことです。

当日刷り上がったばかりのカタログから引用すれば、「敗戦後、台湾では日本人に対して暴行や略奪はほとんどなく、台湾に残りたいという日本人も多くいた。しかし、中華民国の指示で台湾にいた日本人48万人が平和裏に日本に引き揚げた。その中には“湾生”も多くいた。彼らは『台湾を故郷』と思い、生涯、台湾を心に抱きながら生きてきた」。

オープニング・セレモニーに引き続いて行われたTAIWAN NIGHTで、台湾文化省副大臣・陳永豊さんが、この作品に触れ、「70年前、40~50万人の台湾で生まれた日本人が強制的に日本に戻されるという歴史的事実があり、このような歴史の悲劇、過ちは決して忘れてはなりません。今申し上げたいのは一つ。心があるところ、そこが一人一人の故郷です」と述べられたのが強く印象に残りました。

DSC04600出演者の一人・家倉多恵子さん(向かって右から3人目)が、全く知らない日本へ向かう船の上から、弟さんと一緒にどんどん離れて小さくなる台湾が、視界から見えなくなるまで口ずさんだと述懐された童謡『ふるさと』が、映画に何度も流れ、こぼれる涙を抑えることができませんでした。国民の声を無視し、どんどん戦前に戻るかのような今の日本政府のありかたを思うと、決して同じ過ちを繰り返してはならない、と強く思うのです。

写真右端が、ホァン・ミンチェン監督。その左隣が出演者の中で最年長の冨永勝さん(89歳)。監督がさりげなく冨永さんの肩に手を置いておられるのが、信頼関係を表していると私の涙腺を刺激します。監督は「70%以上のセリフが日本語なので、観客がどのように感じられるかワクワクしています。実際湾生の30数名が、私を信用して出演してくださった。とても温かいストーリーなので、この映画によって、日本と台湾がもっと温かい関係になることを祈っています」と挨拶されました。

出演者を代表して冨永さんは「撮影中に感動したのは、台湾の若い人が日本に対して興味や親しみをもって、一生懸命接してくれたこと。ありがたいことです」と挨拶されました。ここに登壇しておられる一人一人の「湾生」たちの、引き揚げ前の記憶をたどり、心のふるさと台湾や旧友を訪ねた時の様子を昔のフィルムや、写真、アニメーションなどを用いて描いたドキュメンタリー作品です。

この映画で、台湾の若者も、「湾生」の存在を知り、心を通わせる両国の人々の心情に共感を覚えたのでしょう。台湾での興行収入は約1億2千万を挙げ、大ヒットを記録しました。日本でもぜひ劇場公開して、一人でも多くの人に知ってもらいたいなぁと思います。

台湾の若者と交流するとき、いつもつい口に出してしまう問いかけがあります。「どうして、台湾の人は、そんなに優しいの?」。その答えを、この映画が教えてくれたように思います(あぁ、いけない、また涙が出てきました)。

DSC04572順番が後先になりますが、オープニング・セレモニーの集合写真です。右から4人目が陳永豊・台湾文化省副大臣。左から2人目の永瀬正敏さんは、オーサカAsiaスター★アワードを受賞され、「アジアの映画人の皆さん、ようこそ大阪へ。一緒にこの場に立たせていただいていることを非常に嬉しく思います」と挨拶されました。

同映画祭は、3月13日まで大阪市内各地で過去最多の55本が上映されます。おもちゃ映画ミュージアムでも撮影していただいた中島貞夫監督『時代劇は死なず ちゃんばら美学考』(2015年)は、3月10日午後2時から、国立国際美術館で上映されます。ご覧いただければ、幸いです。

問い合わせは、大阪アジアン映画祭運営事務局☎06-6373-1211

 

 

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