おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2016.05.24column

盛会御礼! 開館1周年記念上映会「何が彼女をそうさせたか」

昨日、ミュージアムの玄関をガラガラと開けたら、フワァ~と良い香りが漂ってきました。前日に開催した開館1周年記念上映会「何が彼女をそうさせたか」に合わせて、東京のラピュタ阿佐ヶ谷さんから贈っていただいたカサブランカの芳香。

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支配人として頑張っておられる方のお母様が、全くの偶然でしたが私がかつて主宰していた会メンバーでもありました。そのお母様も私がミュージアムを手伝うことで脱会した昨年1月に、綺麗な花束を贈ってくださいました。大切な節目に心のこもった花束を贈るきめ細やかな心遣いは、お母さまから娘さんに引き継がれていているのですね。スクリーンに映っているのは主人公の「彼女」中村すみ子を演じる高津慶子さん。すみ子は、一度もこのような美しい花を貰ってしあわせを味わうことのない不憫としか言いようのない人生を送ります。

昨年12月20日~今年2月27日にラピュタ阿佐ヶ谷で開催されていた「映画探偵の映画たち~失われ探し当てられた名作・怪作・珍作」では、当館所蔵作品も何本か上映され、そのうちの1本が今回上映した「何が彼女…」でした。ラピュタ阿佐ヶ谷では、ドイツのギュンター・ A・ブーフヴァルトさん作曲・演奏にルーマニアのオーケストラによるサウンド盤、片岡一郎さんの活弁付き、今回同様上屋安由美さんの演奏に片岡さんの活弁付きの3通り上映だったようです。

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京都映画祭プレイベントとして1997(平成9)年2月22日に復元後初披露した時には、欧州の文化や芸術を学んだ鈴木重吉監督の意図でもあろうと、ドイツのギュンター・A・ブーフヴァルトさん指揮の京都市交響楽団の演奏上映でしたが、そのブーフヴァルトさんから昨日Facebookの友達リクエストが届いたのにはびっくりしました。どこかでこの作品上映のことを知られたのかもしれません。彼にとってもこの作品は思い入れのあるものなのでしょう。改めてサウンド盤を拝見すると、映像と音楽の素晴らしさに圧倒されます。何語のサイレント映画であろうと、良い作品というものは、観る人の心に直球で届き、揺さぶります。サウンド盤は世界各地で上映され評価を得ただけでなく、昨年来館されたニューヨーク大学の先生によればテキストにも使っていただいているそうです。

さて、午後2時を回ったころから予約をいただいた方が次々来館。ありがたいことに前日で満席になり、狭い会場であることから心苦しくもお断りせざるを得ない状況でした。「そんなことがあるの?」と驚きの声を上げた人もおられましたが、いつも集客に苦労しているので、本当に感謝で一杯です。お客様の中には、23年前にロシアで見つけたこのフィルムを、懸命な努力で持ち帰られた帝国キネマ演芸初代社長の孫・故山川暉雄さんのご子息、その里帰りしたばかりのボロボロになっていたフィルムを映画記者時代に見た人、映画公開当時の主題歌「彼女の唄」をSP盤から復刻するのに活躍された音楽ライター・毛利さん、東京の文学研究者、映像アーカイブ研究者、『映画探偵』著者高槻さんなどがおられ、多彩な顔ぶれでした。件の元記者さんは、その日のFacebookで「かくも甦るとは、ほんまに吃驚しました‼」と書いておられます。

ほとんどが欠落し、字幕で補う方法で復元した作品ですが、片岡一郎さんの抑揚の効いた語り、場面に添えられる上屋さんの演奏は心の機微を見事に表現し、とりわけクライマックスへ向かう片岡さんの全身全霊、力をふり絞った語り、強いタッチの上屋さんの演奏は素晴らしく、息をつめてスクリーンに見入りました。上映後もその余韻はホールに満ち溢れていました。おそらく居合わせた皆様も同様に感じられたのではないでしょうか。

当日の参加者からメールをいただきましたので、許可を得て引用させていただきます。

…小津安二郎や清水宏の「傾向映画」的映画を見て、本物の「傾向映画」はどんなだったんだろう?と楽しみにしていましたが、想像をはるかに上回る素晴らしい作品でした。アヴァンギャルド的とも言える構図は、おそらく失われた冒頭と結末の燃え上がる教会場面のことだと思いましたが、「写真家出身の鈴木重吉監督は、塚越成治カメラマンと組んで随所に絵画的な見事な構図の場面を作り上げ、ヒロインのあわれさと対比的に、偽善的なブルジョアを、やや戯画的なまでに誇張して、観客大衆を熱狂させ」(佐藤忠男『日本映画史Ⅰ』)たように一場面一場面の構図もサイレントならではの沈黙の饒舌を感じさせ、すみ子の薄幸に涙誘われました。高津慶子さんがよかった!「彼女の唄」が、悲哀に満ちた曲でありながら、お涙頂戴の情緒に流れすぎないところがよけいに胸に沁みました。…

傾向映画(左翼的傾向のある映画)は、1920年代末から盛んに作られましたが、溝口健二監督「都会協奏曲」(1929年)のように検閲で多くの作品が無残なカットを受けました。でもこの作品は、前々回紹介した新聞記事にもありますように僅か1メートル半のカットで済み、大ヒットを記録し、タイトルは流行語にもなりました。明かな政治色を除き、「人生は歩みなり そは死に至るまでの いとも苦しき 歩みなり」と普遍的テーマで描いたのが検閲官の心を打ったのでしょう。けれども次第に思想弾圧が強化され、傾向映画は短期間で終焉の時を迎えます。

毛利さんは「上屋さんのピアノ伴奏もオデオンから発売された主題歌『彼女の唄』をよく活かした音楽で、この主題歌を気に行って収録した監修者として冥利に尽きました」と書いておられます。最後に念願だった復刻版「彼女の唄」を皆さんに聴いていただけたのも良かったです。そういえば、春休みに開催したSPレコード展のおかげで、わがままな秋山家ご令嬢に「お嬢様、ジャズにいたしましょうか?」と蓄音機でSPレコードをかけるシーンに目がとまりました。私のことだから春の企画展をしなければ、きっと気にも留めずに見過ごしていたでしょう。知ることは次への興味を湧かせますね。

上映後に、差し入れをしていただいたお菓子と飲み物で和やかな茶話会。私どもだけでなく、それぞれが今後の活動に繋がる話を展開できたようです。ミュージアムを情報交換の場にしたいという目標がまた一つ、二つと花咲きました。たとえ今は小さな蕾でも、いずれカサブランカに劣らない美しい花が咲くことでしょう。DSC05152 - コピー (3)

 いつものように集合写真。ご多忙の中参加いただいた皆様、心から御礼申し上げます。2年目も変わらぬご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

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