おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2017.12.11column

「京都ニュース」の保存と活用について掲載していただきました

京都民報2018.12A - コピー

12月10日付け京都民報の論壇・オピニオン面で、大きく掲載していただきました。

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先に京都新聞で掲載していただいた「京都国際映画祭2017」での記事を読まれた記者さんからお声がけをいただき、書いたものです。これまで京都市歴史資料館を3回訪ね、調査を実施しました。先ずは、どういう状態で保存されているのか、フィルムが劣化していないか、何が記録されているのかを調べる目的だったのですが、457本もあるので、鉄錆びたフィルム缶を開け、保存状態を見るだけで精一杯。現段階では、フィルムをほどいて見ることも、中身を細かく調べることもできていません。

フィルムに何が記録されているのか、詳しい調査が必要なのですが、台本や紙資料が残っていないために、フィルムを巻き戻しながら、表題などをチェックし、リスト化するほかありません。特に、画ネガと音ネガ原版なので、フィルムの扱いをよく知った専門の人の手で調べる必要があります。調査だけでも、1ヵ月以上はかかると思われます。そのためにかかる人手と経費が必要なため、京都市や市民の方々のご理解と協力が欠かせません。DSC03104 (2)

「京都ニュース」は、7月15日の祇園天幕映画祭や10月の京都国際映画祭で上映し、また、新聞でも大きく報道されたこともあり、反響は大きく、市民の方たちから多くの声を聞きました。また、月刊『ねっとわーく京都 』からも、京都市職労委員長・NPO法人「ねっとわーく京都21」理事長の小林竜雄さんとの対談を申し込まれ、同号12月号(№347)の「とーく」というページで9ページにわたって掲載いただき、その中でも触れています。

残念ながら、映画フィルムの劣化は止めることが出来ません。ただ、劣化の速度を遅らせたり、修復や復元という形で、新たなフィルムやデジタル化することで鑑賞していただけるようにすることはできます(劣化が著しいフィルムは隔離が必要)。先ずは何よりも、保存状態が問われるのです。書籍や紙資料の場合は、常温の20度、湿度40%とされていますが、フィルムは低温の5度、低湿度が求められます。保存状態が延命に欠かせないのです。

「京都ニュース」は1956~1994年までの39年間にわたって作られました。1950年代は日本映画の黄金期です。海外でも高い評価を受け、観光ブームに火をつけます。製作本数も多く、京都映画界絶頂期でもありました。全国映画館での観客動員数が11億2700万人という記録を残した時期で、映画館での上映を試みたのも当然でした。その後、テレビの普及に伴い、映画撮影所閉鎖や映画館閉館が続き、映画の観客数は下降線をたどります。特に90年代になると、ビデオ・レンタルやDVDの普及によって、ますます映画館での観客は減っていきました。シネコンができ、下降線はようやく歯止めがつくのですが、1994年の平安建都1200年を最後に、「京都ニュース」は映画館での上映を止めることになります。正に映画界の衰退と重なります。

ただ、1956年に「京都市市民憲章」の広報目的で始められた市政ニュースには、歴代の市長の施策が記録されています。市民憲章は謳います、「美しいまちを築きましょう。清潔な環境をつくりましょう。良い風習を育てましょう。文化財の愛護につとめましょう。旅行者をあたたかく迎えましょう」。これらの施策を始めた第19代の高山義三市長から、20代井上清一市長、21代富井清市長、22代船橋求己市長、23代今川正彦市長、24代田邊朋之市長まで、歴代市長の39年間の施策や活動も映像から見えてくる筈です。また、その時々の市民生活の移り変わりや行事など貴重な映像が記録されているに違いありません。

これらを少しでも延命させ、10年後100年後にも映像が活用できるように、より良い保存方法を京都市に提案しています。

京都市歴史資料館だけでなく、フィルム素材を保存している博物館や資料館、図書館では、フィルムの保管に頭を悩ませています。ナイトレート(セルロイド)のフィルムは、引火しやすく、消防法でも危険物と指定されているため、ほとんどのフィルムは廃棄されています。第2世代の安全なはずのアセテート・フィルムは、時間が経つと、酢酸臭を発しながらフィルムが縮み、画像が剥離したりして経年劣化を起こします。映画フィルムだけでなく、ビデオテープ、マイクロフィルムなどアセテート素材でできたものが同じように劣化を始めています。今、フィルムは第3世代に入り、ポリエステル(PET)での素材になり、500年は持つとされています。ただ、感光乳剤は100年とされていますから、どのように保管するかが課題となります。

京都に文化庁が移転するのを機に、広く共同で使えるフィルム保管庫が西日本にも建設できれば、公的資料館・博物館・図書館などの施設だけでなく、愛好者が持っているフィルム(劇映画フィルムに限らず、16ミリや9.5ミリ、8ミリの映像、ビデオテープなど含む)も集まれば、映像の時代に相応しい膨大な動く映像の歴史アーカイブができると思うのです。

鉄錆びたフィルム缶を目にしながら、一日も早く専用のフィルム保管庫ができることを夢見ています。

 

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