おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2021.02.07column

尾上松之助主演『実録忠臣蔵』を描いたペン画展開催が正式に決まりました‼

昨日、熊本日日新聞編集委員松尾正一記者さんのご尽力で、山鹿市にお住まいの芹川英治さんと電話でお話しをすることができました。

おじにあたる故・芹川文彰さんが中学生の時に、尾上松之助最晩年の映画『実録忠臣蔵』(1926年)を観て描いたペン画をお借りして、4~5月に展示したいという当方の希望が、正式に決定しました。

「にわか」の取材で芹川さんを訪ねた松尾記者さんに、仕舞われたままだったペン画集をご覧に入れたら関心を持たれて。ネットで検索して当館に熊本の米田さんから寄贈頂いた『実録忠臣蔵』短縮版パテ・ベビーフィルムがあることから、問い合わせをいただきました。それが上の記事です。

送信頂いたペン画がとても素晴らしいのに驚き、その場で、ぜひペン画と映画のコラボをしたいと申し出ました。それが実現に向かって動き始めたのです‼

これまで、英治さんがペン画を他の人に見せても「上手いなぁ‼」と言われて終わっていたそうで、映画が作られた京都で展示できることを、とても喜んでくださいました。そもそも忠臣蔵の発端となった「松の廊下刃傷事件」が起こったのは元禄14年3月14日で今の暦に直すと4月21日。ということで、4月17日に坂本頼光さんにお願いして、『実録忠臣蔵』を活弁上映することにしました。その頃のコロナの状況にもよりますが、ぜひ熊本から観に来ていただけたら嬉しいです。

英治さんにお尋ねしたところ、近所に商店街があって、そこに映画館があったそうです。きっと文彰さんはその映画館でご覧になったのでしょう。何か日記のようなものが残っていればと思ったのですが、残念ながらそういう類いはないそうです。

松尾記者さんに、「何という映画館で、いつ上映され、弁士はだれか、など古い新聞の広告などを探せばわかるかもしれない」と申しましたら、夕べ遅くに「宿題をもらった」形になった松尾記者さんから、「とりあえず、調べようとしたささやかな証にでもなりましたら幸いです^^;」とのお茶目なメッセージを添えた画像が届きました。

私との電話を切った後、ふと思い出して、図書館で『熊本シネマ巷談』(1978年、青潮社)を借りてこられました。そこに『実録忠臣蔵』のポスターが載っていました‼ 早速ネットでこの本購入‼ 

一番上の行に「尾上松之助追善大興行」、右から4行目に「故尾上松之助」と書いてありますから、1926年9月11日に亡くなった後の上映で、連ねている文言から、この日活直営館「世界館」で『実録忠臣蔵』が上映された最初の広告ではないかと思われます。日付のメモがあるペン画もあるとのことなので、実物を拝見するのが楽しみです。

ちなみに、これは今展示中の片岡一郎さん所蔵『実録忠臣蔵』のポスター。京都の新京極にあった日活直営の「帝国館」。これは公開されて間もないころのものでしょう。「満員御礼のため、本日より普通料金」というのが面白いですね。

『活動写真の大スター 目玉の松ちゃん-尾上松之助の世界』(岡山文庫、1995年)130頁に「松之助の声色は低音で力強く、いま思うと進藤英太郎の声に似ていたようだ。京都の千本座の滝花主任が画面の松之助にピッタリの声だというので、それを手本に各地から募集して松之助の声色を統一した。直営館30、特約館335に同じ松之助の声を配置したのは大変だったと思うが、それは観客に対する大サービスであり、商品としての松之助を会社がいかに大事にしていたかという証拠である。私たちファンはどこの館へ行っても松之助の声色だけが安定していることで満足した」とあります。この世界館でも、松之助そっくりな声の弁士さんが務めたのでしょう。

中学生だった芹川文彰少年は、松之助そっくりな弁士の声を聞き、大きなスクリーンに映る松之助が演じる大石内蔵助を記憶に刻み、帰宅してからペン画に記録したのでしょう。何回か観にいったのかもしれませんが、それが500コマもあるというのですから凄い才能です。

さて、『熊本シネマ巷談』には、「熊本市内活動弁士一覧」が14頁に亘って載っています。

1911(明治44)年~1937(昭和12)年まで、アイウエオ順で233人も載っていました。活動写真弁士に付いての展覧会をすると案内したところ、「祖父が活弁士だった」という人が2人、「地元出身で大阪で活躍した椿三郎という弁士がいる」という人もおられ、「今は10人程度しかおられず絶滅危惧種のような活動写真弁士さんですが、映画が娯楽の王者だった頃は案外と身近な存在だったのかもしれませんね」と先日書いたばかりですが、案外そうだったのかもしれません。

これを作成された著者の藤川治水さんは、熊本大学出身で熊本市立中学校の先生をされていた方。『映画地方論』『子ども漫画論』などの著作もあります。序文は牛原虚彦(きよひこ)監督が書いておられ、佐藤忠男さん、塚田嘉信さん、御園京平さんら錚々たる方々と交流して編まれています。これは熊本市内の様子ですが、他の地域にも熱心な人びとによって編まれたこうした本があるかもしれませんね。拙文をお読み頂いて、「うちにもあるよ」とお気付きの方がおられましたら、ぜひお教えください。

 

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