おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2016.02.06column

2月5日朝日新聞夕刊で、「青空天使」上映が紹介されました

昨日の朝日新聞夕刊で、今月21日に開催する「美空ひばりの『青空天使』特別上映+対談」のことが紹介されました。

スキャン_20160205 (3)記事の主体は、館長と対談する相手・高槻真樹さんが昨年出版された『映画探偵―失われた戦前日本映画を捜して』。この本では、タイトル通り戦前の「幻の映画」を捜す人々に光を当てていますが、今回上映するのは戦後の1950(昭和25)年に作られた作品。戦後にも失われた名作がある例として上映します。監督は斎藤寅次郎。『男はつらいよ』シリーズで、渥美清さんが演ずる「車寅次郎」の名前は、山田洋次監督によれば、この「斎藤寅次郎」に由来するとか。まだ子どものころの美空ひばりさんが少女マリ子を演じ、花菱アチャコ、横山エンタツ、伴淳三郎、清川虹子ら芸達者な役者さんが脇を固めています。

青空天使A - コピー

「エンタツ、アチャコ」の名前を今の若い人たちはご存知ないかもしれませんが、エンタテイメントの世界で活躍する吉本興業(略称・よしもと、吉本)の土台を築いたビッグネーム。お笑い界で仕事している人、興味がある人は、ぜひご覧ください。もちろん、ひばりさんファンも必見です。本作品は、DVD発売されていないため、通常では見られません。館長が発掘、復元したことで、2004年の京都映画祭で完成復元披露をしましたが、今回はそれに次ぐもので、貴重な機会です。

この上映会の前日にも、貴重な映画2本の上映会と関連する研究の発表会を開催します。20日午後3時と5時からの2回(入替制)で、タイトルは「石田民三監督生誕115年記念上映+研究発表会in京都」。以前『花ちりぬ』(1938年)を見たとき、女性しか出てこない演出で、その斬新さにびっくりしましたが、石田民三(1901-1972年)は女性の描写で高い評価を得ていた監督です。元新劇俳優だった石田は、映画界にも俳優として入りますが、後に監督に転身して、『花ちりぬ』などを作りました。戦後は20年間にわたって「北野をどり」の創作・演出を担い、上七軒の芸の継承に貢献しました。

今回上映するうちの1本『おせん』は、1934年に作られた作品の断片ですが、昨年新たに見つかったもの。わずか16分とはいえ、長く「幻の映画」とされてきたフィルムの発見は貴重で、今回が初上映となります。フィルムを所蔵する「古書からたち」の佐藤圭一郎さんは、その伝記を今執筆中の若き研究者。その成果も大いに楽しみです。もう1本上映する石田の遺作『古代の奈良』は、近畿日本鉄道株式会社が創業50周年を記念して、1960年に作られたもので、同作は観光映画コンクール優秀賞を受賞しています。製作に猪熊兼繁さんの名前があります。今回は、そのご子息で考古学者、猪熊兼勝・京都橘大学名誉教授のご厚意により、学術研究のため特別に上映することが可能になりました。ここに厚く御礼申し上げます。

研究発表するのは、長年花街、とりわけ上七軒について研究をされている中原逸郎さん。彼には、「花街の芸の再創造―京都上七軒における石田民三の寄与を中心に」(『慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要:人間と社会の探求』第73号、2012年)の発表があり、今回はその調査研究の続編が聴けると楽しみにしています。 

石田民三(2月10日)今年も、京都の春の風物詩「北野をどり」が、3月25日~4月7日の14日間にわたって行われます。京都の五花街(先斗町、祇園甲部、祇園東、宮川町、そして上七軒)の一番最初を飾ります。華やかな舞台を見る前に、その背景を一人でも多くの方に知ってもらえたら良いなぁと願っています。皆様のご来場を、心よりお待ちしております。

 

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