おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2023.03.01column

今日から「マジック・ランタン~さまざまな幻燈の楽しみ~」展‼

つい先日新年のあいさつを交わしたばかりなのに、もう上巳の節句(桃の節句)。町家の出窓に愛らしいお雛様を飾っています。2月25日菅原道真の命日を記念して営まれた「梅花祭」の日、恒例の天神市で出会って、家族に迎えました。梅の花に、桃の花、そして桜へと季節は華やいでいきます。それに合わせて色鮮やかな「ガラス種板」の数々とそれを見るための道具「幻燈(灯)機」をズラリと並べました。

チラシ表に書きましたように3名の先生方にお願いをして「幻燈機」をテーマに執筆して頂き、小冊子2冊としてまとめました。展覧会はそれを記念して開催します。

そのうちの1冊、小冊子8『着物柄に見る幻燈・映画・映写機』が今日出来上がりました。執筆して下さったのは、早稲田大学名誉教授草原真知子先生です。表紙に描かれているような柄をネットの布地販売サイトなどでは「面白柄」と呼んでいて、最近ではドイツの美術館で“Omoshirogara”の展示があったそうです。

「ならば私も」と先の天神市で探し歩いたのですが、扱っているお店の人たちも異口同音に「見たことないなぁ」と仰って、収穫ならず…。小冊子(税込み800円)には、草原先生がこれまで集められた珍しい「面白柄」がたくさん載っていますので、眺めているだけでも楽しいです。

今準備中の小冊子9は、早稲田大学文学学術院教授細馬宏通先生の「幻燈を語る人々-映像による旅への誘い-」と中京大学教授岩田託子先生の「最盛期英国幻燈文化をおもちゃ映画ミュージアムコレクションに見る」を載せます。完成次第、改めてご案内いたします。

小冊子2冊の発行を記念して、3月19日13時半から、3名の先生によるご講演と幻燈の実演をします。幻燈の世界をより楽しんで貰いたくて、イマイアキさんにトイピアノの演奏をお願いしています。実は2月10日に行った人形展で可愛らしいトイピアノに触れるチャンスがあり、益々「幻燈にトイピアノは合う‼」と確信。大いに本番を楽しみにしています。既に予約受け付けを開始していて順調です。ご希望の方はお早めにどうぞ。

アメリカのヘンダーソン&アームス幻燈機(1905年)を用いて、大判のガラス種板を投影している様子。ランプをLEDに変えられなかったので、通電すると本体はとても熱くなります。火傷をしないよう決して本体にお手を触れないようにお気を付けください。安全の為、ご要望の折に点灯してご覧いただけるようにします。

国内外の様々な幻燈機を並べました。右端壁に16ミリ映写機が描かれた「面白柄」の着物地を掲示しました。草原先生は「『面白柄』はその時代の大人や子どもの興味をリアルタイムで表現していた」と綴っておられます。当時の最新情報、流行をいち早くキャッチした着物模様だったのですね。

大型の幻燈機。左端に写るのは東京浅草にあった池田都楽幻燈舗のもの。19世紀末か20世紀初頭で、英国W.C.Hughes社製「Methamorphoser.Lantern」を模したものかもしれません。上下駆動型でバーナー光源。壁に飾ったのはオランダで広く人気があった芸術家アントン・ピーク(1895-1987)のシャドーボックスで、幻燈師が白布に投影する絵を子どもたちが興味深く見ている様子を描いています。シャドーボックスは、各パーツを細密に何層にも切り重ねて立体感を持たせたデコパージュ技法のひとつで、17世紀中頃欧州から広まりました。

早速ご覧頂いた理科系女性3人組。知的好奇心全開で楽しんで下さいました。こちらの壁面にはいろんなガラス種板を並べています。展示場所が限られているので、所蔵品の中から迷った末選んだ幻燈機や種板をご紹介。児童文化史家アン・へリング先生遺愛品のガラス種板とレフシー幻燈画も加えています。

奥の壁に飾っているのは、アン・へリング先生遺愛品の「志ん板うつしゑ(新板写し絵)」で明治17(1884)年の辻岡屋亀吉版。「写し絵」は江戸時代の文政の頃以降に流行したようです。行灯や蝋燭しかない時代、それを光源にして、下部に描かれた眼鏡部分を切って、上部の絵に重ねて見ます。各段3回ずつ覗き、合計12の場面を写して見ながら物語を楽しんだものでしょう。

左端に19世紀頃のディスク型スライドやクロマトロープやシングル・スリッパ―・スライドも並べました。その右隣に紙芝居幻燈機の種板、その右には明治から大正時代を写した日本の幻燈種板を並べました。他に珍しいレフシー幻燈機でみた「絵ばなし」も置いています。

このコーナーには、昨年10月29日に講演して下さった東京藝術大学大学院教授山村浩二先生の絵本『やまなし』も加えました。原作は皆様よくご存じの宮沢賢治(1896-1933)。この絵本は昨年「クラムボン生誕100年祭」を記念して出版されました。お話の始まりは「小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です」。山村先生のサインも頂戴していて、タイムリーなので披露します。

正直、幻燈についても勉強中なので、展示期間中に皆様からのお教えも頂きながら内容を豊かにしていきたいです。皆様のお越しを心よりお待ちしております。

 

 

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