おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2024.06.21column

「結構知られている」毛利清二の刺青展 そのお客様

開催中の「毛利清二の世界 映画とテレビドラマを彩る刺青展」は、6月19日から第2期1980年代以降が始まりました。第1期よりも点数が多く、お楽しみいただけると思います。なお、主催者の意向で、特別展に関する撮影は一切できませんので、予めご了承くださいませ。

初日にお越し頂いたお父様は彫師の初代彫忠さん。大学生の息子さんといっしょにお越し下さいました。幾人もの方から聞いている“粋”の美学でしょうか、長袖長ズボンで全身を覆っておられました。その方曰く「この展示のことは、結構知られている」のだそうです。こういう展示はこれまでなかったのですから、刺青に関心がある方の間で広がっているのでしょう。ありがとうございます。多くの方に“伝説の刺青絵師 毛利清二”さんの素晴らしい下絵をご覧頂きたいです。

続いてお越しの男性は京都府内にお住いのカメラマンさん。お連れの女性をこの後撮影するのだそうです。お話を聞いていて好奇心のスイッチが入ったのでお願いしてみたら、見せて下さいました。

“胸割り”の刺青。ネットで検索したところ、刺青のデザインの方向性が固まったのが江戸時代で、普段は刺青を露出しないのを前提としていました。当時の服装は着物でしたので、着物の前身ごろが合わさる部分から見えそうな範囲に色を付けないでいたそうです。それを守っておられる彫りなのですね。

いやはや、見事ですねぇ。東京の女性の彫師さんによるそうです。来月13~15日金沢で刺青祭がありますが、その時、彫師の方と一緒に出演されて観客の前で刺青の実演モデルをされるのだそうです。カメラマンさんに“刺青愛好会”のハガキを頂いたのですが、それがまた凄くて。手のひらも含め、全身くまなく刺青をされた方がこんなにもおられるのかとびっくりポン!の世界です。このカメラマンさんは7年前の発足時から写真と動画を撮影されているそうです。

先日、山口記弘東映経営戦略部フェローと話していて、第1期1960年代からの東映の仁侠映画に描かれた刺青の展示を見ながら「こうした映画が一般の人々に対して、刺青を入れている人は怖いという印象を与えたのではないですか?」と話したら「そういう面もあるとは思いますが、映画によって刺青の技術が向上したとも言える」と仰いました。それは、そうかもしれません。多くの刺青愛好家が映画から学んでおられたのは事実で、そうした熱いまなざしで毛利さんが描かれた下絵をご覧になっています。今、滋賀県から来館の38歳の彫師さんは仁侠映画も見て勉強したそうですが、同行の20歳の若者はSNSで他の刺青を見て勉強しているとのこと。これには38歳の先輩だけでなく、世の中の大勢の人がそうなんでしょう。時代の流れですよね。その20歳の若者に「以前から絵が上手だったの?」と尋ねたら、「そんなにではないですが、今は型が入手できるから」とのこと。正直意外な感じを受けましたが、やりたい気持ちがあれば誰でも描けるということなのでしょう。これも時代の流れ。

第2期の展示で興味深く見たのは黒木瞳さんに描かれた緋鯉です。『姐御』(鷹森立一監督、1988年)。5月3日放送「チコちゃんに叱られる」でゲスト出演された黒木さんが、この刺青の思い出を語っておられたのを思い出して「これかぁ」と思いながら見ました。「たい焼き」ではなく、まぎれもなく綺麗な緋鯉です。「4~5時間かかって描かれた」と当時の雑誌取材に答えておられます。シャワーを浴びるスチル写真も添えられています。

もう一つ、目をとめたのは根津甚八さん。『肉体の門』(五社英雄監督、1988年)。その頃私は根津さんのことが好きだったので、この作品で森田富士郎先生が撮影を担当されると聞いて、我慢できずに「もしも可能なら、根津さんのサインをもらって欲しい」と依頼してみましたら、叶えて下さいました。有頂天になって、ずっと毎晩枕元において寝ていたものです。もうあれから36年経ったのですね。亡くなったのは2016年12月29日、まだ69才でした。

今回のグッズとして、唐獅子牡丹を描いたクリアファイルを用意していますが、第2期にも唐獅子牡丹の下絵が2点展示されています。先ほどの『姐御』でビートたけしさんに描いたものと、もう1枚あります。いずれもモノクロの作品。

上掲女性の両膝にも彫られていますが、15日に大阪からお越しになった彫師7人組のお一人にも描いてありました。

彼女の腕にセカンドスキンでカバーされている部分がありますが、彫って間もないから保護しているのだそうです。絵柄も現代的ですね。

リーダーの方に、ねだって見せて貰いました。お腹に大きな般若。そして、

背中には、縁起だるまさん。だるまさんは珍しいなぁと思ったのですが、そうでもないとのこと。ネットで検索したら、もともとだるまさんの目には魔除けの力があると信じられ、江戸時代視力を失う病が流行した時に、黒々とした両目が入っただるまさんが人気だったそうです。選挙の時によく見かける願いが叶ったら両眼を開眼させる、あのイメージはテレビの時代になってからのようです。さて、この彫師さんの願いは何だったのか、お聞きするのを失念していました。

この日の一行の中にも20歳そこそこの彫師さんが3名もおられました。昨日は彫師見習いというお嬢さんとお母様が見に来てくださいました。若い人が多いこと、それを応援している家族の存在も、これまで私が自分勝手に思っていたイメージを覆すものでした。“時代は変わっている”と実感する毎日です。

もう一人、19日にお越しの勝又つかささん。京都の松竹で松本幸四郎さん主演劇場版映画『鬼平犯科帳 血闘』で、敵役の北村有起哉さんや矢柴俊博さんの刺青メイクで参加されたそうです。毛利さんが引退された後、スタッフの人が描き手を探しておられたところ、特殊メイクの勉強をして、絵も描ける勝又さんに声がかかったのだそうです。「どうやって勉強したら良いかと思っていたところに、この展覧会があって、とても勉強になりました」と仰っていました。5月からの展覧会で、映画に刺青の絵を描いているお二人と出会うことが出来ました。今後の活躍を期待しています💗

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