おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2025.06.22column

カメラを見に来館いただきました!

映写機ばかり並んでいる中、少ない映画撮影機の前で、「懐かしいカメラ」とおっしゃったので、「写真を撮りますよ」と声掛けをしたら、余所行きの表情で💗「触っても良いですよ」と声掛けをしたら、

この表情💕「若いころ周囲の人は皆、テレビから映画に行きたがったが、僕はテレビの世界でずっと行きたかった。テレビ映画は昔16㎜カメラで撮っていた。背景となるタイトルバックはこの35㎜カメラで撮った。このカメラで撮っていたので懐かしい。ピンク映画の撮影助手をしていた時などはこのカメラで撮ったな。製作費は全部込みで200万ぐらい。今じゃ考えられないね」。

展示しているこのカメラは、アリフレックス35mm Ⅱc型撮影機で、主に風景や背景描写用カメラとして、ドラマではない場面で多く使われました。セリフの同期がいらないときも使われたカメラで、香港のカンフー映画や日活のロマンポルノ映画ではメインのカメラとして大活躍して使われたようです。

指さした先の小さい窓にフィルムがかかるのですが、「ここに埃が付いているとフィルムに写り込むし、傷がつくから、鹿革でピカピカに拭いた」と懐かしそう。その右側のプレッシャープレートを閉めてフィルムを押すのだそうです。等々あちこち触れて、ご自分が一番輝いていた時代のことを思い出しながら顔が輝いていました。

マガジンの裏にフッテージ用の手動目盛りがあって、フィルムの残量を確認しますが、その設定を忘れ、冷や汗をかいた事例もあったそうです。

「昔は、カメラ、三脚、バッテリーがあれば撮影できたけれど、今はモニターやコントロールをするための調整卓、それからデジタルではケーブルが断線することもあるので、バックアップを絶えずとらなきゃならない。パソコンも含めそれぞれの機材のバッテリーも用意してとなると凄い量と重さになる。フィルムの時代は現像が上がるまで、チェックできず、カメラマンの技量を信頼していた。それまで時間がかかるのに対し、デジタルはすぐチェックができて便利な一方、他の部署の者が口を出すこともあって、デジタルになった便利さの一方、雑音が多く、面倒くさくなっただけとも言える」と現場経験者ならではの体験談を聞かせてもらったのは面白かったです。

「本当はもっとカメラを見たかったけど、見たいカメラはなかった」とおっしゃったので、連れ合いに言うと、何やらごそごそ取り出してきて。

今ある撮影用カメラを並べました。でも残念ながら、ご本人が一番見たがっていたフランス製のエクレール・カメラは無くて。その当時はアリフレックスとエクレール・カメラが主流でした。連れ合いが使ったことがあるエクレール・カメラは大阪芸大に置いてありますが、今では使える人もおられないでしょう。まだ公表はできませんが、ある映画の小道具にゼンマイ式のカメラをお貸ししました。シンプルだからこそ時代を超えて使える良さがありますね。「カメラ三脚の肩あて(三脚にぶら下がっている茶色のクッションのような布)が懐かしい。カメラは重いからね、これで肩をカバーして運んだ」と担いで見せてくださいました。この重さも懐かしく思われたことでしょう。

「このARIFLEXで、『仮面ライダーBLACK』を撮った」と。子どもが小さいとき見ていた番組名を聞いて、それを撮っていた方と出会う巡り合わせの面白さを今日も味わいました。

東京から来館いただいた川口さん。「面白かった‼」とおっしゃってくださって。昭和60年(1985)から令和4年(2022)まで撮影現場で活躍していた方のお話を聞かせてもらって、私の方こそ「面白かった‼」です。

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