おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2016.07.12column

「小川翔太さんの講演と映画上映」盛会裏に終了(1)

7月9日(土)15時、心配した雨も上がり、ノースカロライナ大学シャーロット校言語文化学部准教授・小川翔太さんの講演を聞きに、次々お客様が来館。今回も近在はもとより関東圏から何人も来てくださるなどたくさんお運びいただいて、感謝で一杯です。ナイトレート・フィルムがテーマと聞いても、一般の方には馴染みない言葉ですので、どれほどの人が関心を寄せてくださるか気にしていましたが、杞憂でした。

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 演題は写真にある通り「ナイトレートで見えるもの見えないもの:ジョージ・イーストマン・ミュージアムより」。後日小川さんからレポートが届きますので、詳細につきましてはそれを楽しみに、今しばらくお待ちください。

同ミュージアムは、五大湖沿いにあるニューヨーク州ロチェスターにあり、1889年にセルロイドを使った透明なロール・フィルムを発明したジョージ・イーストマンの豪邸に建っています。コダック社がこれまで集めたカメラや映写機のコレクションから、1階は写真部門、2階は映画部門として展示しています。映画研究は、スクリーンを分析して考えるのが主流ですが、昨春と今春に開催された同ミュージアムのナイトレート・ピクチャー・ショーでは、「モノ」を通した映像の見方が提示されました。映画研究者の大半がスクリーンに映った映像をフィルムと呼びますが、「モノ」としてのフィルム、二つを合わせて考えるのが大切だと小川さん。ロチェスターは光学の会社が多い地区なので、「モノ」の世界という印象を強く受けるそうです。

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写真は、ナイトレート・ピクチャー・ショーの概要を説明する小川さん。見ての通り、回を重ねるごとに進化していきますから、鬼が笑うかもしれませんが来春が楽しみですね。参加者の一人が早速「来年は絶対見に行きます」と話しておられましたが、私も事情が許せば見に行きたいものです。何が上映されるかは、行くまでわからないのだそうです。フィルムは経年劣化で、縮みますが、1%の収縮があれば上映できないし、可燃性ということで、税関で引っかかって上映できなかった作品もあるとか。「一回一回の偶然性、出会いがある」、「映画は一回性のもの。燃えてしまったら終わり」という言葉が印象に残りました。デジタルでは味わえない緊張感、だからこその醍醐味があります。 

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 「モノ」を使った展示の例として、1915年からのテクニカラーの過程を見せようと、2000本ほどの人工的な染料を並べた様子が紹介されました。これほど多くの染料が用いられているなんて驚きました。モノクロだった映像に色彩をつける飽くなき願望がカラー映画を発明しました。それから「良いなぁ」と思ったのは、フィルムを作るワークショップがあったこと。ナイトレートは、意外にも簡単に作れるのだそうです。フィルム製作会社が作らなくなっても、自分たちで作ろうという発想と熱意が感じられます。

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これは、ロチェスター大学准教授・ジョアン・バーナディさんからつい先日届いたばかりの写真。6月にジョージ・イーストマン・ミュージアムで開催された35㎜フィルムを作るワークショップの様子だそうです。

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映写技術やフィルム作りの技術が若者に継承されているのは素晴らしいですね。

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当館に来られる人の中には「昔のフィルムは燃えるから怖い」という人がおられますが、ナイトレートに代わる素材として安全フィルム(アセテート)の販売を促すために、危険物のイメージを作り出した金銭的な動機が背後にあるそうです。そうして、アセテートに置き換えられると、「危険物」としてナイトレートを廃棄してきましたが、今日、アセテートフィルムは化学変化による劣化(ビネガー・シンドローム)が問題視されています。

小川さんの話によれば、ナイトレートフィルムは管理が不十分だと酸性のガスが缶に充満したり、緩んだフィルムがランプの光で長くさらされて引火する場合もありますが、実験の結果では、ちゃんと管理すれば600年は持つのだそうです。この結果には正直驚きました。センチュリーという新しい上映機種は、フィルムが止まるとゲートが閉まるクリップがあり安全に配慮されているそうですし、今日のような熱を持たない光源や歯車の工夫をすれば、1%縮んでいても上映が可能かもしれません。MoMA(ニューヨーク近代美術館)は、1937(昭和12)年からフィルムアーカイブをしていると聞いて、日本との姿勢の違いに驚くばかりでした。

先日ツイッターで、「東宝が最近上映用の35ミリを大量にジャンクしているという話。ラピュタ阿佐ヶ谷の井手俊郎特集、企画の北里宇一郎氏は当初いろいろ挙げたが、蓋を開けたら全然だめ。去年やったはずの瑞穂春海『見事な娘』『ある女の場合』もない。シネ・ヌーヴォの鈴木英夫特集、『社員無頼』二部作もすでになしと。」というのを見つけ、「東宝作品は業界の中でもデジタル修復に着手したのが一番遅くて、漸く『ゴジラ』と『七人の侍』を復元したくらいです。日本映画の至宝もダメになっているのがたくさんあるでしょうね。もったいない。」とつぶやきましたら、たくさんの人がリツイート。

いつまでも映画を娯楽とみて、芸術文化と見ない姿勢が、災いしていると思われて仕方ありません。優れた作品は社会の宝だと思って、次世代に継承しようと意識転換を求めたいです。

 

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