2026.01.14column
12月26日NHK福井放送局で放送された100年前の映像から
昨年12月1日「映画の日」、NHK福井放送局のお若いディレクターさんが、パテ・ベビー(9.5㎜)について知りたいと来館されました。

左がその白﨑さん。「当時発行されていた『パテー・シネ』などの雑誌も寄贈されてご覧に入れることができます」と伝えたら、もう一度戻ってこられたほどの熱心な取材でした。白﨑さんはNHK福井放送局に長く保存されていたままのパテ・ベビーフィルムの存在に気が付かれ、それについて取材を重ね、福井県域版の番組ディープザウルスで紹介しようと取り組んでおられました。で、先ずは、9.5㎜のフィルムが一体どういうものかを当館に調べに来られたのです。写真で連れ合いが手にしているのが、昨年9月に寄贈を受けた多数のパテ・ベビーフィルムのうちの1本です。全てデジタル化して、もう少し作業が残っていますが、あらかたをDVDにしてこのお正月、寄贈主様にお渡ししました。
当館に辿り着かれる前に、白﨑さんもどこかで全てデジタル化を終了されていて、しかも局自前でAIによって100年前の映像を全てカラー化されたそうです。重ねた取材の成果が12月26日に放送されましたが、生憎私どもは福井県外のため、見ること叶わずでした。それで、活動記録として残しておきたいからと依頼して、DVDにして送って貰いました。それが昨日届き、早速拝見しました。

恐竜で有名な福井らしく、番組名は「ディープザウルス」でイラストも可愛らしい。この日のテーマは「福井100年前のまなざし2~ツナグ未来への記憶~」。デジタル化した映像は、昭和5~10年頃にパテ・ベビーで撮影されたもので、番組のナレーションによれば3時間半ほどあったようです。当時の福井県内の様子が記録されていて風景にしろ、服装や、人々の営みが記録されていて地元の人間でなくても懐かしさを覚えます。そこに今も住まいしている人々にとっては、その映像群は往時を知るかけがえの記録。丁度今頃の時期に撮影された大雪の景色をみているうちに、富山県の散居村で生まれ育った私は、急傾斜の屋根から積もった雪がドドドドーッと凄まじい音を立てて落ちてくる様子を思い出しました。
面白いなぁと思ったのは、海水浴を楽しむ人々の様子。三国海水浴場を行く水着姿の女性たちが手にしているのは和傘。洋装の女性も日除け対策に和傘を差して海辺を歩いています。健康回復のために潮湯治をしている人々の様子も映っていて、これには私も記憶があり、雨晴海岸へよく連れて行ってもらいました。懐かしい思い出が蘇ってきて、ツーンと込み上げてくるものがあります。海辺で蓄音機から流れてくる流行歌を楽しむ様子も。塩害はないのかしら?と思いつつ、蓄音機とレコードが大衆文化になっていた様子が分かります。その海水浴場の映像に、チラッと映っていた人が、どうやらこれらの映像を撮影した人物とかかわりがあるようです。
白﨑ディレクターが映像を見返すと、「川畑タクシー」の看板や車両、会社が映っていた映像に「粟田部町風景」とタイトルが付されていたり、バス停の看板に「鯖江行き」の文字があったことから、粟田部町(現在の越前町)や鯖江の周辺を調査。問い合わせを続けているうちに「祖父が撮影していた」という人と繋がり、そこの親戚の方々と一緒に映像を見てもらった結果、川畑久次郎さん(兄・鯖江で牧場経営)と川畑仁作さん(弟・粟田部町でタクシー会社経営)が撮影していたことが判明しました。二人はアマチュアのカメラマンとして、当時の福井県内をカメラで記録していました。
川畑久次郎さんの娘さんは、「小さい頃(撮影に)くっついていったこともある。町内の人を集めて映写機で上映もし、十畳間が満タンになって、皆が見ていた」と証言されていました。三国海水浴場の映像に、ちらっと映っていたのは川畑仁作さんで、撮影していたのは4歳違いの兄、久次郎さんだったようです。それはNHKが開局する70年前のことで、川畑兄弟は福井地方の映像メディアの先駆けとなり、今となっては凄く貴重な100年前の様子を記録していました。NHKのアナウンサーのセリフを拝借すれば「時を超える映像の力」を思わずにはいられません。
私の記憶では、最初に白﨑ディレクターから取材依頼の連絡を受けた時に、昨年が戦後80年の節目の年だということで、かつての資料を探しているうちに、このフィルムの存在に気が付いたとお聞きしたように思います。実際、これらの映像の中には、陸軍特別大演習が15万人以上の見学者を集めた様子、鯖江市神明地区にかつてあった旧陸軍歩兵第三十六連隊の様子も記録されています。16haの土地に2000人の兵士が駐屯していたそうです。出兵した兵士たちが戻ってくるのを喜び迎える鯖江駅には凱旋門まで作られていました。歓迎の旗が振られる一方、戦地で命をなくした兵隊さんもおられました。映像を御覧になり、幼かったがゆえに父親と過ごした記憶がないという男性へのインタビューも放送され、戦争さえなければという思いを一層強くしました。
いつ頃、どういういきさつで、これらの映像がNHKで保存されるようになったのかが分かりませんが、残された映像から気付くこと、学ぶことも多々あります。
同じように、まだどこかで昔撮影した貴重な映像が眠っているかもしれません。こうした番組が契機になって、埋もれたままになっている映像の発見につながれば良いなぁと思います。


