おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2016.12.12column

盛会!武部好伸さん講演会「映画の渡来、120年目の真相~日本の映画発祥地は京都ではなく、大阪だった~!?」

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12月8日付け読売新聞京都版に、大きく武部好伸さん講演会の様子を掲載していただきました‼

dsc08737-2ネットが普及した今なら、瞬時に世の中の動きが把握できるのですが、舞台は明治29年~30年にかけての京都と大阪でのこと。更にいえば他に2ルートからも入っていて、それぞれが「我こそは、一番だ!」と思っていたことでしょう。どこが一番乗りか把握するのは難しい時代のことです。情報検索が容易になり、史資料にあたれる時代になった今だからこそ、明らかにされる日本に於ける映画黎明期の事実。大阪生まれで、大阪が大好きな武部さんの精魂込めた努力の成果を、たくさんの資料を示していただきながら、わかりやすく話していただきました。

dsc08722-2大阪人の旺盛なサービス精神の上に、巧みな話術で、お客さんの心を鷲掴みにした武部さんの講演。ご覧のように皆さん終始笑顔で、楽しんでくださいました。

dsc08744武部さんはたくさんの史資料の中から、「日本で活動写真なるものの映写された最初で明治29(1896)年の12月のことであった」という記述を見つけられました(大阪朝日新聞1922<大正11>年6月29日付け荒木の回顧談他)。場所は大阪難波の福岡鉄工所。

掲載写真「まとめ」最後の一行「(福岡鉄工所跡地の)『難波中』交差点に『ヴァイタスコープ初上映地』のモニュメント設置を!」に関連し、当日参加いただいたアートポリス大阪協議会代表の木村さんがFacebookで「120年後の12月に荒木のメッセージが、武部さんを通じて、届きました。『大阪を世界に誇れる映像都市に!』と、26年間活動しているアートポリス大阪協議会でも、碑の実現のため活動したいと思います」と綴っておられます。私も「何かできないか」と思いながら聴講しました。

dsc08748-2これが、難波の福岡鉄工所で初めて上映されたと思われるニューヨークのヘラルド・スクエアで撮影された映像(『日本映画大観』<1924年春草堂、大阪毎日新聞社・活動写真研究会編>の荒木回想録から)。1896年5月11日、エジソン社が撮影した僅か15秒ほどの映像ですが、YouTubeでご覧になれるそうです(『大阪「映画」事始め』39頁)。

講演で貴重な映像を見せていただいた後、当館所蔵のリュミエールの映像、「見ていた人が思わず逃げ出した」というエピソード付きで語られることが多い『列車の到着』や『雪合戦』『消防訓練』、『オーギュストの家族』、『リュミエール工場の出口』などの映像もご覧いただきました。リュミエールは最初に10本の作品を作っていて、フランスの国宝に指定されています。結果的に見ればシネマトグラフの方が簡便で映像も綺麗でした。

『映画伝来 シネマトグラフと<明治の日本>』(岩波書店、1995年)に掲載された「大阪初上映プログラム(南地演舞場)」によると、一番最初に上映された映像は、リュミエール映画コレクションの『バッテリー・プレイスに到着する列車』だそうです(武部さん本64頁)。おそらく当日皆さんにご覧いただいた映像ではないかと思います。その上映会は、1897(明治30)年2月15日のこと。稲畑勝太郎のシネマトグラフが、大阪の難波にあった南地演舞場で一般客を入れて公開し、この日が、日本で最初に映画興行が行われた日とされています。

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この後は、お残りいただいた方々で、いつもの記念写真。この日はドキュメンタリー映画の撮影もあったので、特別に料理上手な知り合いに頼んでオードブルを作ってもらいました。映像、フィルム、リールをイメージした創作料理を囲んで乾杯。盛り上がった、とっても楽しい交流会でした。

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チラシを見て参加して下さったお二人は、深作欣二監督の『新仁義なき戦い 組長の首』(1975年)、『新仁義なき戦い 組長最後の日』(1976年)、『その後の仁義なき戦い』(1979年)の撮影をされた中島徹さんと奥様。交流会をとても楽しんでいただけて、サポーター会員にもなってくださいました。現場での思い出をこれからお聞きできる機会も増えてくると思います。嬉しい出会いでした。

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この二人の若者との出会いも大きな喜びでした。立命館大学に通う浅井開世(かいせい)さん(左から3人目)と龍谷大学大学院生の木村光さん(右端)。浅井さんは、北村順生先生の授業の一環で館内を見学に訪れ、武部さんの講演も興味深く聴いていただきました。その間に交わした会話から「じゃ、僕が来年1月から手伝いに来ますよ」と申し出てくださいました。木村さんは今は他で手伝いをしておられますが、ひょっとしたら、うちでも手伝っていただけるかもしれません。上映会の計画も持ち込んでくださっています。常日頃は二人だけで試行錯誤しながらやっていますので、いろんなことが未着手で、肩身が狭い思いをしてきました。若者の協力があれば百人力。来年に向けて、本当に心強い味方を得ることができました。有難いことです‼

最近は大学生の方の見学が相次いでいます。北村先生のように映画の初期のことについて学ぶ施設として勧めていただいているおかげです。1月には米国大学生の団体見学の予定もあります。ネットでホームページをご覧になって声掛けをいただきました。国内外を問わず多くの若者に学びの施設として活用していただけることは、本当に嬉しいことです。期待に添えるように、彼らの協力を得て充実した館運営ができるよう努めます。

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最後に、当日講演で大活躍されたエッセイスト・武部好伸さん(写真右)と読売新社後輩記者にあたる京都出身の編集委員・森恭彦さん。この日のやり取りで、森さんは、1月28日に「反論!…日本『映画』事始め」を急遽開催することになりました。このお知らせは、近日UPします。お二人のバトルも、大いに楽しみです。ご期待ください。

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