おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2017.03.21column

第12回大阪アジアン映画祭で嬉しい出会い


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この写真は3月9日に国の重要文化財である大阪市中央公会堂で開催された「第12回大阪アジアン映画祭」ウエルカム・パーティーの1コマ。左からオープニング作品『ミセスK』のホー・ユーハン監督(マレーシア、7日付けブログでも紹介)、特集企画《アジアの失職、求職、労働現場》『黙示録の子』(マリオ・コルネホ監督、フィリピン、2015年)のプロデューサー、モンスター・ヒメネスさん、そして彼ら3人の審査員を代表して挨拶された女優の中西美帆さん〔神戸出身)。会期中は19の国と地域から全58作品が上映され、この夜のパーティーにも映画祭の参加ゲスト、関係者、サポーターの皆さんが一堂に会し、賑やかに交流。

DSC00186昨年もお会いしたお二人。右はタイのDONSARON KOVITVANITCHRさん。見違えるほど日本が上手に。「勉強しました」と彼。昨年も彼と話したのですが、タイにも有名な無声映画に説明をするThid Khiewaka Sin Sibunruang(~1948)がおられたそうです。1902年にはタイに日本の映画館があったそうですから、何らかの関係があるのでしょうか。このことをFacebookで書きましたら、「1910年から日本統治下にあった朝鮮半島には、もちろん弁士がいましたし、朝鮮語の弁士もいました。日本移民のいる国、ブラジルにもいたと聞きます」と教えてくださった人がおられます。以前台湾の先生から「僻地への教育・啓蒙に映写機を持参して映像を見せながら説明していた時代もある」とお聞きしましたし、「日本統治下の台湾には活弁士もいた」とも聞きました。活弁士の歴史は面白いテーマでもあります。

中央におられる背の高い男性はNHKワールド日本映画紹介番組『J-FLICKS』の平澤匠さん。これまでもミュージアムを世界に紹介いただき、温かく応援して下さっています。既に放送は終わりましたが3月4日13時10分~38分、同番組内で昨秋の「第3回京都国際映画祭」も取り上げてくださり、当館のクレジット入りで小津安二郎監督『突貫小僧』が上映されたことを紹介していただきました。放送後2週間オンデマンドで配信されましたので、ご覧いただいた方も多くおられることでしょう。

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女優/映画監督/プロデューサーの杉野希妃さんとドンサロンさん。二人は小津安二郎監督が定宿にしていた茅ケ崎館を舞台にした『三泊四日五時の鐘』で共演されているそうです。私は残念ながら見逃しているのですが、「ドンサロンさん、映画ですごくいい味だされてます」とコメントを寄せてくださった方もおられます。不覚にも彼が俳優もしておられたのだと、この時知りました。次は絶対観ます。杉野さんが監督・主演を務める小泉八雲原作『雪女』(監督三作目)が今公開中です。大阪九条のシネ・ヌ―ヴォでは、4月1日(土)14時35分からの初回上映後に杉野さんが舞台挨拶される予定。お近くの方は是非どうぞ。

他にも多くの海外の映画祭や報道関係者の皆さまとご挨拶をさせていただきましたことは、大変ありがたいことでした。当日は大変いい夢を見ることができました。その最も大きな理由は、台湾のウェイ・ダ―ション(魏徳聖)監督との出会い。

DSC00205監督の人気は絶大でしたね。私は日本統治下で起こった霧社事件を扱った監督の『セディック・バレ』(2011年、第48回金馬奨で最優秀映画賞受賞)を2013年に開催された第8回大阪アジアン映画祭で観て目を見張り(その時のことをこちらで書きました)、その作品に出演していたマージ―シャンさんを監督に抜擢し、ウェイ・ダ―ションさん自身が脚本を書き、プロデューサーを務めた『KANO』を第9回大阪アジアン映画祭で観て、すっかり彼のファンになりました(その時のこともこちらで書いています)。『セディック・バレ』は第7回で、『KANO』は第9回で、それぞれ観客賞を受賞しました。

DSC00212そんなこんなを、更に昨年末に台湾国家電影中心を訪問した時のこと、その後台北映画祭・台北金馬映画祭で活躍する人たちと再会したことなどをお話させていただき、通訳の女性を介して溢れんばかりの私の思いを伝え、しまいには、

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一緒に写真も撮り、サインも貰いました。もう一生ものの宝。恥も外聞もなく、ミーハー全開です!

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今回ウェイ・ダ―ション監督は最新作『52Hz,I LOVE YOU』を日本初上映。ハリウッド映画「ラ・ラ・ランド」のミュージカルの楽しさを味わったばかりということもあり、この作品の明るさに満ちた傑作音楽劇を存分に楽しみました。『セディック・バレ』『KANO』のような重厚なものばかりではなく、「こうしたものも作れるよ」という余裕すら感じました。

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監督のデビュー作『海角七号 君想う、国境の南』(2008年)は監督も出演者も無名でしたが、公開されると台湾映画史上歴代1位を記録、社会現象を巻き起こしました。洋画を含めても『タイタニック』に次いで第2位という輝かしい記録を残しています。今回上映された最新作には、このデビュー作のメインキャストがゲスト出演されているというので、今日DVD鑑賞。昨年の第11回アジアン映画祭オープニングで上映された『湾生回家』で、敗戦後の日本人は台湾から強制引揚を余儀なくされた歴史を知りましたが、この作品も強制引揚で台湾人女性と別れざるを得なくなった日本人教師が引揚船上で綴った彼女へのラブレター7通をめぐる物語。その宛先「海角七号」は半世紀以上過ぎた今では存在しない住所。郵便配達の仕事についた青年、阿嘉(アガ)は宛先不明で未配達の郵便の中からその手紙を見つけて…。とても素晴らしい作品で、いろんな映画祭で数々の賞に輝いています。

両作品を観て驚いたのは、馬念先さんが出演されていること‼ 2015年7月の台北映画祭に招待されたとき、おもちや映画ミュージアムのアニメーションに台湾の言葉で活弁をつける体験をして下さり、大受けしたことがあったからです(中央の背の高い男性が馬念先さん)。台湾で有名なミュージシャンで俳優やMCもされていると聞いてはいましたが、そのような方に活弁していただけたのだと知って感激を新たにしました。また両作品に出演されている田中千絵さんは、台湾で人気がある日本人俳優として活躍されています。

DSC00224今年のグランプリは香港のウォン・ジョン監督『一念無明』(2016)、来たるべき才能賞はマカオ・香港合作『姉妹関係』(トレイシー・チョイ監督、2016)の女優、フィッシュ・リウさん、スペシャル・メンションはタイ・オランダ・フランス・カタール合作の『暗くなるまでには』(アノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督、2016)、ジャパン・カッツ・アワードは、日本の『恋とさよならとハワイ』(まつむらきんご監督、2017)、ABC賞は香港・中国合作の『七月と安生』(デレク・ツァン監督、2016)、薬師真珠賞は、フィリピンの『至福』(ジェロルド・ターログ監督、2017)の女優、アイザ・カルサドさんが選ばれました。そして12日のクロージング・セレモニーで発表された観客賞は、香港のキーレン・パン監督の『29+1』(2016)が選ばれました。皆さま、おめでようございます。

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17日に来館いただいた呂謙さんとお母様。年末に台北へ行った時にはご家族で大変親切にしてくださいました。彼は春から日大芸術学部で映画の勉強をします。彼のお父さんは、大阪芸大で学び、映画『非情城市』で有名な侯孝賢監督と組んだ数々のCMなど広告の世界で活躍されています。謙さんから「『海角七号 君想う、国境の南』が作られてから、台湾の人々は自分たちで作った映画を好きになり、台湾で映画を作る人が増えた。台湾の映画の歴史の中で大切な作品だ」とお聞きしました。1本の作品が与えた影響は大きいですね。彼もこの作品に影響を受けた一人。いつか大阪アジアン映画祭の舞台に立ち、そこから世界に大きく羽ばたいてもらいたいと心から願っています。

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