おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2017.12.31column

岡本忠成夫人のさと子さん、人形作家の保坂純子さんを訪問

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いよいよ明日が2018年元旦。すっきり晴れ上がった青空に雪をいただく富士山が見られたら良いですね。元旦ではなかったですが、次男が子どもの頃、一緒に富士山へ登り、ご来光を眺めたことを思い出します。写真は、12月12日早起きして、新幹線に乗り東京へ向かった折のもの。裾野が広がり、きれいでした。

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さて、東京へ向かう最大の目的は、お借りしていた岡本忠成さんの人形アニメーション『おこんじょうるり』の「おこんさん」と「婆さま」の2体のお人形をお返しに行くこと。小さな靴箱くらいの箱に入って、持ち主の手にしっかりお返しするのが任務その1。大切な人形なので、居眠りすることなく東京に11時頃到着。電車を乗り継いで、目指す駅に到着。改札口まで、岡本忠成夫人のさと子さんが迎えに来て下さいました。手紙や電話でやり取りを幾度も重ねましたが、お会いするのは初めてなので、お互いにキョロキョロしながら、それでも「この人に違いない」と思いながら、声かけをしました。無時に出会えて安堵。

おしゃべりしながら歩いて、岡本さん宅に到着。都と県の境界という珍しい位置にありました。駅に着くまでも、電車を乗り違えたり、乗り過ごしたりといつもの間抜けぶりでしたが、一番の失敗は人形を入れたキャリーバッグの鍵。詳しくは恥ずかしいので述べませんが、さと子さんを最初からハラハラさせてしまい大失敗。似たような経験をこの後訪問する保坂さんからも味わったことがあると、思い出を話して下さいました。一緒にしたら叱られるかもしれませんが、ちょっと私、保坂さんと似ている点があるのかもしれません。

お仏壇の岡本先生の遺影に手を合わせ、さと子さんから何枚かの貴重な写真を見せていただきました。そして任務の2つ目に着手。日頃からお世話になっている渡辺泰先生は、さと子さんから岡本忠成さんの洋画のことをお聞きになり、「(奥さまの介護のこともあり)その作品を見に行くことができないから、代わりに見てきて欲しい」と依頼されたのです。

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洋画は大小3枚あり、ここでは、その内の一枚を紹介します。渡辺先生は「岡本さんが絵を描いておられたことは知らなかった」とおっしゃっていましたし、さと子さんも「知り会った頃は写真に夢中だったから知らなかった」とおっしゃっていました。とてもお上手ですね。渡辺先生の目の代理を務め、19日に写真を差し上げたところ、大変に喜ばれたので、この点についても安堵しました。

お昼ご飯をどこかでご一緒に、と思いながらタイミングを逃していましたら、さと子さんが「残りものですが、一緒にご飯を食べましょう」と言ってくださり、厚かましくもご相伴にあやかりました。何とお赤飯!むかごの佃煮、野菜の煮しめ、美味しい漬物、具だくさんの味噌汁等々、全て手作りの美味しい料理が並び、遠慮の二文字を知らない私は、お代わりまでして満腹に。良い年をしているのに、いつまでも末っ子気分が抜けない私は、すっかり母の手料理を久々に味わったような幸福感で満ちました。

その後は、任務その3に着手。それは、岡本さんのアトリエにある線画台の様子を見てくること。かつて岡本さんが譲り受けたその線画台は35㎜用と思われ、想像していた以上に大きなものでした。

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岡本さんの作品が最初に載っている小学1年生の教科書『かざぐるま』と比べても、その大きさがおおよそ見当つくのではないでしょうか?最初に口をついて出たのが「でかい‼」の一言でした。渡辺先生は当館に資料として置けばいいと思われたのですが、想像以上に大きいので断念しました。他の施設に声かけをしていますが、無事にそこに引き取っていただけたら良いなぁと思っています。たくさんの名作を生み出すのに貢献した道具ですから、渡辺先生がおっしゃるように「何としても、スクラップにだけはしたくない」と私も思います。

日が落ちるのが早いので、16時半を目途に保坂さんの家に歩いて向かいました。位置的には駅の反対側。

DSC03579 (3) - コピー向かって右が岡本さと子さん。左が保坂さん。前回ブログで書いた阿佐ヶ谷にあるラピュタビル内「アート・アニメーションスクールちいさな学校」で特別講師をされている人形作家さんです。「ちいさな学校」の記述では「人形座で民話を題材にした人形劇の美術を担当。60年代以降は岡本忠成作品の人形を作り続ける。代表作に『花ともぐら』『さるかに』『モチモチの木』『おこんじょうるり』『死者の書』など」とあります。

私の訪問の為に、広島国際アニメーションフェスティバルの思い出の写真アルバムも用意してくださいました。持永只仁さんと伯子さん、川本喜八郎さん、岡本さと子さん、保坂さんも写っていました。皆さん楽しそうな写真ばかりでした。

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保坂さんが、桧垣理緒さんが日本人形玩具学会年会誌『人形玩具研究』26号(2016年3月刊行)に当館を紹介して下さった文章をお読みだったことにも驚きました。忝いことです。このお二人が、とても仲良しだという雰囲気が、写真からも伝わってきますね。保坂さんのご主人は、絵本作家で挿絵画家の田畑精一さん。「おしいれのぼうけん」(1974年)や「さっちゃんのまほうのて」(1985年)は、長く読み継がれている児童絵本としてよく知られています。残念ながら、この日はお出かけのようでした。

お二人は私が帰る電車の時間を心配して、おしゃべりもそこそこに、早速人形工房を案内して下さいました。

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普通だったら、滅多に見ることができない人形工房の様子。特別に写真撮影を許可して貰いました。

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そこで、作業中なのは保坂さんの教え子の女性4人。写真は右から、青木友香さん、青柳清美さん、山本アンナさん、保坂純子さん、岡本さとこさん、﨑村のぞみさん。前回ブログで紹介した「アート・アニメーションスクールちいさな学校」第一期生髙野真さんの同級生もおられるようです。貴重な作業時間中にお邪魔して申し訳ありませんでした。良い作品をどんどん生み出して、多くの方を喜ばせてください。楽しみにしています。

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保坂さんからお土産にいただいた作品集のハガキ一式。作品にはお人柄が現れるのでしょう、どの作品も優しくて温かみが溢れています。

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そして、この焼菓子は、岡本さと子さんが作ってくださったもの。もったいないのでずっと保存していましたが、年を越すのもどうかと思い、先ほど胃袋に収めました。岡本先生は、こうした心のこもった食事やお菓子を召し上っておられたのですね。それにしても病気で早くお亡くなりになられたのが惜しまれます。

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3つの任務を果たし、12月19日、渡辺泰先生に報告しました。先生はとても喜んでくださり、私としても大いに安心した次第。来年は、再度、渡辺先生のコレクションをお借りして、アニメーションの催しをする計画です。詳細は追ってまた、お楽しみに‼

では、皆さま、この一年も拙い文章をお読みいただきまして、誠にありがとうございました。新しい年も、引き続き応援をよろしくお願い申し上げます。

どうぞ、良い年をお迎えくださいませ。

 

 

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