おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2020.01.19column

好きが昂じて、甲冑修理請負の櫻澤正幸さん

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 ミュージアムの近くにお住まいの櫻澤正幸さんは、正会員として、資料を提供してくださるなど、いつも優しく応援してくださっている恩人の一人。その彼が、今日は「自分の名前が、初めて本に載った」と嬉しそうに報告に来てくださいました。左手指先で押さえておられる箇所、『近世の即位礼-東山天皇即位式模型でみる京職人の技術ー』の第4章「工房と職人の紹介」項目に載っています(112頁)。

そこに書いてあることを、かいつまんでご紹介すると、櫻澤さんは1964年、大阪城で開催された「日本名鎧展」で、国宝・重文などの甲冑を見て、その迫力に感銘を受けて甲冑研究の道に。全国各地にある平安から南北朝にかけての甲冑武具を見て歩くうちに、1991年、京都三大祭の一つ「時代祭」の修理を依頼されます。知識と技術の向上を目指して独学で研修に励み、1996年に鳥取県米子市の工芸会に入会して工芸について学び、1997年には日本甲冑武具研究保存会に入会して当世具足を学び、城の陳列品の修理を手掛けられました。

その後、2012年に現在地に移住してからは、この本の発行元である(株)井筒さんから、祭り甲冑の修理依頼を請け負って世の中に貢献されています。今回は、模型の近衛次将が着る挂甲(けいこう)の製作を担当されました。挂甲とは、古代の鎧 (よろい) の一種で、鉄や革などの小札 (こざね) を革紐や組糸 で綴合せて,肩からうちかけて着用して防御したもののことを言います。

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本に載っている多くの可愛らしい人形たちからなるジオラマは、2018年秋、京都市美術館で拝見した記憶があります。江戸時代の狩野景信が描いた「東山天皇御即位式・霊元上皇御譲位行列図屏風」を3D化して、実際の4分の1サイズで再現したものでした。東山天皇御即位式は貞享4(1687)年4月28日に、霊元上皇が内裏から仙洞御所に移られた行列は同年3月27日に行われました。絵はその時の記録として残すために正確に描かれたもの。

ジオラマ製作にあたっては、元宮内庁主席主殿長だった岡本和彦さん監修のもと、絵の再現そのままではなく、実際はこうであったと思われるような造りを目指されたそうです。その時拝見したジオラマの人形に、櫻澤さんが関わっておられたことを今日初めて知りました。

それぞれに見合う装束を拵えて飾られた多くの人形たち、建物の設えも大変な手間を要して作られたことでしょう。瓦、箔、御簾、畳、木製道具類、錺金具、組紐、人形、その頭部分、髪付け、礼冠・冕冠、烏帽子など、装束の仕立て、檜皮葺の屋根、幟・檜扇、高御座などの彩色、漆塗り、蟇股などの彫刻、牛車などの木製品、脇塀、衣装・調度品の絹織物、刺繍、西陣織、袴、浅沓、金属製太刀など、太鼓や鉦、絲鞋(しかい)や幾種類かの履き物、左近の桜と右近の橘、紫宸殿の蔀戸や屏風、和傘、旗、大小の鳳凰、獅子狛犬、牛の彫り物等々、実に多くの職人さんの技を総動員して作られたことが分かります。こういう伝統技術を継承した職人さんがたくさんおられことを、ページを繰りながら再確認し、京都の奥深さ、凄さ、頼もしさに感嘆しています。

惜しいかな、この本は市販されていないそうで、今日は櫻澤さんにお借りして、ゆっくり眺めさせていただきました。(株)井筒グループ代表井筒與兵衛さんの思いが詰まった結晶本。この素晴らしい一冊に、一人でコツコツ甲冑造りに日々取り組まれている櫻澤さんのお名前が載って、本当に良かったなぁと思います!!!!!

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