おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2020.01.20column

喜劇映画研究会新野敏也代表から届いた、昨年開催「レーザーポインター教室4」のレポート

昨年1月26日に開催して頂きました『レーザーポインター映画教室4』

/news/infomation/4654.html(告知)

/blog/column/9409.html(開催後記)

 

このレポートを、今になって発表するなんて…と思われるでしょう。スミマセン!

今回初めてご参加の方には、どんな講座だったのかをご了理解頂ければ、そして前回ご参加された方には想い出に…と書いてみました。やや長文ですけど、どうかご笑覧下さいませ。

 ローレル&ハーディ - コピー

第一部11001230【極楽コンビ!ローレル&ハーディ特集】

このプログラミングは、2018年11月頃に太田文代女史へ「ローレル&ハーディの伝記映画『Stan & Ollie』がおそらく来年の夏には日本公開される筈なので、その予習を兼ねた企画にしませんか?」と持ちかけたことが発端となりました。

ところが嬉しい誤算で、年が明けてすぐに『僕たちのラストステージ』という邦題にて4月19日より全国順次公開と発表され(しかも配給はEXILEが経営するHIGH BROW CINEMAだ!)、とにかくローレルとハーディのキャラクター、演技、演出をご説明することで、古い映画を知らないお客様には『僕たちのラストステージ』の予習、マニアの方にはギャグの復習に貢献できればと講座の内容を組んでみました。

実は、この『レーザーポインター映画教室4』のあとに東京へ戻ると、何と『僕たちのラストステージ』配給計画に私も関与させて頂けるオファーがありましたので、一念発起して拙ブログにローレルとハーディ解説を超ドッサリ載せました。ご参考までにご一読頂けると嬉しいです。

 ローレル&ハーディが登場するまでのプチ映画史、時代背景など

http://blog.seven-chances.tokyo/entry/2019/02/24/114614

ボケとツッコミ、コンビ喜劇の歴史

http://blog.seven-chances.tokyo/entry/2019/03/03/201100

ローレル&ハーディの芸風とギャグ分析

http://blog.seven-chances.tokyo/entry/2019/04/29/130325

ローレル&ハーディの影響力、1930年代から現代までのコンビ喜劇人

http://blog.seven-chances.tokyo/entry/2019/04/30/200508

 なので、このレポートでは、ローレルとハーディの人物像について説明は割愛させて頂いて(どうかお許しを!)上映した作品のツボだけをご説明させて頂きます。

 

まずは最初に…

 『貴様がヘタクソだ』You're Darn Tootin'  1928年

この邦題は、2001年1月20日に東京・御茶ノ水のアテネ・フランセで生演奏&活弁のイベントを行なう際に「必ず日本語タイトルをつけて下さい」との厳命を受け、ほぼ直訳ながら僕が命名したものです。しかし、2017年10月14日に京都国際映画祭での活弁上演が決まった際は、この邦題が「かなり挑発的で、世間的にいかがなものか」とのご指摘を受けて、大森くみこ弁士により『極楽うるさいヤツら』と改題されました。

タイトルは映画の内容を反映したもので、楽団に所属するクラリネット奏者のローレル&ホルン奏者のハーディが演奏会をメチャメチャにする前半部、楽団をクビにされた二人の小競り合いが市街戦へと発展する後半部、すべて「貴様がヘタクソだからこうなった」というエゴと責任転嫁がテーマとなります。コンビのお家芸となるギャグ《反覆》を確立した初期作品です。そして多くのローレル&ハーディ喜劇の基本形となる《ヒロイン不在》《男二人だけの距離感》《二人のテンポが合わない》で笑いを構築する手法が炸裂します。

それで本作の撮影法の解説において、問題点も指摘しました。

ローレル&ハーディの《反覆》ギャグはクドさが肝なので、おそらく製作の最終段階(編集)において《同じ行動の繰り返し》に対してカットが足りず、既に一度使用したカット(フィルム)の焼き直しで追加分を補ったことが窺えます。

また、エンド・クレジットの2コマ手前(THE ENDが表示される直前)でローレルとハーディが建物の蔭から演技を止めてカメラ目線で立っているのがバレます。これは多分、監督の「カット!」という掛け声で演技をやめたあともカメラが回っていて、編集段階ではラストに余韻を持たせようと《ローレルとハーディが立ち去った風景》のつもりでいたら…(まさかバレてしまうとは?)という結果でしょう。世界中でお気づきになった方が何人おられるか?という問題ですけど、僕はこの2コマを歴史的な物証として、この上映版の作成段階では加工しませんでした。

 この映画は極楽コンビの比較的初期の作品なので、わざわざ荒探しをするつもりは毛頭ありません。かような製作中の試行錯誤やギャグ展開におけるカメラの配置(カット割り)などから、飽くまでローレル&ハーディ喜劇の発展過程を考察したつもりです。

尚、本作が初公開された1928年はトーキー映画の普及期であるため、アメリカ本国では音響設備のある劇場向けにサウンド版(伴奏と効果音入り)フィルムも供給されておりました。なので、撮影も24コマ/秒ですが、これを教条的に「サイレント映画は16コマ/秒だから」とわざわざ遅いスピードで映写する輩が存在しているようで(それも拙会のつけた邦題をそのまま盗用しているのだから)困っちゃいますねぇ。

拙会所蔵のフィルムは、ハル・ローチ・スタジオズ製作のトーキー仕様で伴奏と効果音も収録されておりますけど、この『レーザーポインター映画教室4』での上映の際は、2001年1月20日アテネ・フランセ公演時の記録映像から生演奏音源を使いました。ご参考までに、アルティメット級に豪華な演奏メンバーです↓

http://www.kigeki-eikenn.com/2001/yume2001_players.html

 

『極楽ちびっ子騒動』Brats  1930年 

本作はローレルとハーディがそれぞれ父親役と息子役を演じる室内劇です。《室内劇》という訳は、子役を演じる際に家具や調度品などを特大セットで作るため(演劇的な展開を避けるためもあったと考えられますが)、まるで『ガリバー旅行記』の実写版みたいな喜劇が展開されます。

トーキー初期の短編(プログラム・ピクチャー)なので、この時代のB級作品特有のチープな演出《全編に意味のないBGMが流れ、マンガみたいに大袈裟な効果音が多用される》にやや古めかしさを感じます。が、巨大セットでの演技や《親子の対話》を特殊合成で描くなど、莫大な製作費と手間を惜しまぬスタッフの苦労が窺える傑作なので、今回の講演では、このような製作状況を推察してみました。

尚、邦題『極楽ちびっ子騒動』も僕が命名したものですが、40年くらい前に拙会の先代会長ケラリーノ・サンドロヴィッチが上映した際は『極楽こどもの国』としておりました。今や二つの邦題は独り歩きして、自称研究家、エセ評論家、ソフト販売詐欺業者どもに無断流用されております。困っちゃいますねぇ。

 

『ミュージック・ボックス』The Music Box  1932年

タイトルの《ミュージック・ボックス》とは、米語でオルゴールを意味します。以前に本作は、海外版ソフトの無断リッピングに劣悪な日本語字幕を入れての違法DVD(またはブルーレイ)を販売・上映レンタルする悪質業者によって『極楽ピアノ騒動』なる安直な邦題が付けられました。そのタイトルを基に自称研究家やエセ評論家どもが、得意げに海外文献とか他人の論文の受け売りで稚拙な感想などを拡散した結果、世間では『極楽ピアノ騒動』なる邦題が正式なものと勘違いされてしまいました…こんな不愉快きわまりない話をよく耳にしますので、ここで一発キメさせて貰います!

「ボ~っと生きてんじゃねぇよ~!」

本作のテーマは《ピアノをピアノとして扱わない》という《行為=事務的に搬入するだけ》である故、スタッフ側はよほど題名を吟味したようで、メカニカルな響きの『The Music Box』と命名したのでしょう。なので、作品の意味合いを汲み取れない『極楽ピアノ騒動』なる邦題は、ギャグの解釈自体を勘違いしていると断言できます。

(蛇足ながら、『極楽ピアノ騒動』と命名した悪質業者は、この邦題で無断上映されていると知るや、「自社の商標権が侵害された」とデッチ上げて金銭を要求するなど、詐欺にユスリのオマケ付きです!)

未見の方にはネタバラシぎりぎりとなりますけど、本作は前半が長い長い階段でピアノを担ぐ有名な反覆ギャグ、後半は今までのフラストレーションを一気に開放するかのごとき破壊ギャグで構成されております。

よくチャップリン初期の短編『アルコール先生ピアノの巻(His Musical Career)』を模倣したという文章が散見されますけど、痩せ男(ローレル)と巨漢(ハーディ)がピアノ搬入で苦労するようなルーティンのギャグはチャップリン作品になく、ただ類似点といえば痩せ男(チャップリン)と巨漢(マック・スウェイン)のコンビがピアノを階段で上まで担いで搬入する設定くらい。しかもチャップリン作品はかなりアッサリとピアノを運んじゃいます(おまけにチャップリンはピアノ演奏まで披露しますが、残念ながら無声映画なので音はありません)。

僕の私見は、この『ミュージック・ボックス』とは、ちょうど製作当時にハリウッド映画人へ衝撃を与えた『戦艦ポチョムキン』の《プロレタリアvs.ブルジョア》《階段における惨劇》《乳母車》を参考にしたのでは?というカンジです。

あと、ついでの情報になりますけど(未見の人のために詳細は述べませんが)、労働階級のローレル&ハーディに対峙するインテリのブルジョアとして、シュワルツェンホーヘン教授(ビリー・ギルバート扮)というコワイ人物が登場します。この教授が劇中で怒ってアルファベットを連呼するのですが、これは「脳神経外科」とか「循環器内科」みたいな専攻の略称だとお伝えしておきましょう。

実はこのセリフ、大抵の日本語字幕では《たけり狂った金持ちが意味不明の言葉を叫んでいる》がごとくテキトーに訳されますけど、同様に英語圏の人々もこのマニアックなギャグ(セリフ?)をすんなり理解できるのかは疑問ですね。

さらにマニアックな話を続けると、習作期のロマン・ポランスキー監督短編『Dwaj Ludzie z Szafą(タンスと二人の男)』、モーリス・センダックの絵本をアニメ化した『まよなかのだいどころ(In the Night Kitchen)』、浜岡賢次の人気漫画『浦安鉄筋家族』など、『ミュージック・ボックス』からの影響が多く窺える作品が存在します。

また、本作は製作当時に改良されたばかりのオプティカル・プリンター(特殊な画面合成をするマシン)を多用していること、トーキー初期段階ながらもオープン・ロケで同時録音を敢行していること、スタジオでのアフレコを上手に盛り込み不要なBGMを排除していることなど、現代の映画製作でもお手本となるような技術が多くあります。

 ローレル&ハーディの作品はほどんどが短編なので、遠い昔の俗っぽいB級映画に思われがちですが、本当のところ、個々の作品は《巨額の予算を投じて丁寧に製作された、実はトンデモナイ佳品》なのです。これこそがローレル&ハーディ特有のシニカルなシャレではないでしょうか。

 

第二部13201450【喜劇の帝王!マック・セネット特集その1】

追憶の道筋_01 - コピー

『追憶の道筋』Down Memory Lane 1949年 

実はこの第二部、弁当持参の昼休みアトラクションのつもりでしたけど、結局は「ガチで上映と解説を!」という嬉しいリクエストを頂戴しまして、ならばソフト化されていない珍しい作品でお応えしなければ!とセレクトしました。

本作はYouTube等の動画サービスでも視聴可能ですが、その映像はアメリカのソフト販売会社(というより個人商店の)GRAPEVINEが1980年代前半にVHSで販売したものを誰かが無断でアップロードしたようで、ボワボワの画質です。今回は当会が2015年に入手したフィルムをハイビジョンにテレシネ(フィルムをビデオ信号に変換)しました。邦題は僕が直訳しましたけど、日本語字幕は当会の翻訳家・石野たき子にちゃんと作ってもらいました。

ネタバレして困らない程度にストーリーをご紹介しますと、テレビのバラエティ番組(生放送)にマック・セネットが旧作フィルム持参でゲスト出演するところ、代理人がフィルムを届けたことから、おっちょこちょいの司会者がセネット本人と勘違いして紹介、しかもフィルムがサイレント(無声映画)とは知らずに放送、それでスポンサーからクレームを受け、慌てて即興演奏でBGMと効果音を付ける…というものです。つまり、映画の中で“ナマ番組”を放送するという趣向です。

本作の最も特筆すべき点は、マック・セネット本人の出演と、膨大な数の傑作ギャグが見られることです。製作当時は、今みたいにDVDやブルーレイ、動画配信なんて存在しておりません(当然ながら家庭用ビデオすら存在していない)ので、よっぽど有名な映画でなければ、ワンシーンはおろか、旧作を再見できる機会なんて限りなくゼロな環境でした。それが短編長編まとめてセネット喜劇の名場面をダイジェストで堪能できる(しかも、この時代はセネットのフィルムが散逸しているために、当人ですら見直すことが不可能な)訳ですから、傑作ギャグのダイジェスト版といえます。

但し、否定的に見ると、セネットと司会者の掛け合いなど新しく撮影された部分はチープなスタジオ・セットでの展開で、とにかく旧作フィルムを膨大に流用するため、事情を知らなければ単なる懐古趣味の低予算ムービーにしか思えません。まずそこンとこを弁明すれば、「何より、よぉこんだけ散逸していたセネット作品を集められたもんやなぁ!」です。本作のプロデューサーが、20世紀フォックス会長(そしてバスター・キートンやマリリン・モンローの育ての親)ジョゼフ・M・スケンクの甥っ子オーブレイ・スケンクなので(画像の版権処理も含めて)実現できたのでしょう。

それならばと、僕は日本語字幕を作成するにあたり、使われている旧作の題名と製作年度も表記しようと画策したのですが…こりゃダメでした!

理由は前述のとおり、当時はセネット作品が簡単に再見できない状況だったことです。セネットのおよそ千タイトルある旧作に対して、本人の記憶も曖昧だったようで、他社製作の《セネット喜劇の剽窃》やアトラクション的なニュース・フィルムまでもが、セネット喜劇として扱われていたからです。

一例を示すと、名物の《警官隊》も、ホンモノに混じって1924年にハル・ローチ製作でウィル・ロジャースが主演したパロディ『Big Moments from Little Pictures』の抜粋があったり、明らかにどこかローカル都市でのアトラクションみたいな《警官姿のオッサンたちが騒ぐだけ》の記録映像が流用されていたり、メーベル・ノーマンドの紹介ではサミュエル・ゴールドウィン製作の短編が使用されていたり! これらをセネット本人が自作と認定していたようで、僕なんかが調べるにも限界がありますし、わかってもなぁ…と諦めました。

とはいえ、この映画はテレビ放送の黎明期に作られておりますので、当時の製作現場を窺い知ることができる点は貴重です。まず、セネットの旧作を放送するという設定、これは最初期のテレビ界では新作だけだと製作が追いつかず、番組が足りなくなるため、古い映画を再構成(無声映画を再編集してナレーションや伴奏追加で放送)して穴埋めという手段が取られておりました。そんなウラ事情をストーリーの主軸にしている訳で、セネット本人のゲスト出演という設定にも無理がありません。

そして当時はすべてがナマ放送だったという時代背景から、ハプニングをギャグしております。これは主役(司会)のスティーブ・アレンが実際にもピアニストでもあるため、サイレント映画(無音フィルム)を持ち込まれると、慌てて即興で伴奏や効果音をアレンジする趣向となっております。実は、このスティーブ・アレンという人物、日本ではまるっきり知られておりませんけど、この映画の後、実際にテレビ司会者兼ピアニストとして全米で人気No.1となりました。

それからビデオ・テープがまだ放送局でも使われていない時代ですので、本作のようにフィルムが持ち込まれると、放送局はどのように電波へ乗せていたのか?この技術を簡単にお話させて頂きましたけど、この文章では割愛させて頂きます。

このように放送局のウラ話や時代背景がネタの作品ですので、二度とリバイバル公開や正規のソフト化もあり得ないと思い、特別上映としました。

 

第三部15201700【喜劇の帝王!マック・セネット特集その2】

この回はラジオ関西の美人パーソナリティでピアニストの天宮遥さんにライヴ演奏を付けて頂きました。上映作品は、天宮さんにご協力して頂けると伺ったので、《天宮さんによく似たコメディアンヌ》マデリン・ハーロックの出演作を選びました。

ノートルダムの仲立ち男 - コピー

『ノートルダムの仲立ち男』Half back of Notre Dame 1924年

真面目にストーリーを追うこと自体がナンセンスと思うほどに、徹底した不条理とカオスに満ちたスラップスティック・コメディ(ドタバタ喜劇)です。日本未公開だったのですが、2002年に東京のアテネ・フランセ文化センターで上映する際、「邦題を付けて下さい」と厳命され、僕が勝手に『ノートルダムの仲立ち男』と命名しました。理由は、この映画の前年1923年に『ノートルダムの傴僂男(せむしおとこ)』(原題:『The Hunchback of Notre-Dame』ロン・チェイニー主演)という映画が公開されておりまして、これはその題をもじったもの(映画の前半でフットボールのポジションHalfbackにかけている)から、原題のノリに合わせ、かつ恋の仲立ちをするという内容もふまえ、強引に『ノートルダムの仲立ち男』というタイトルを付けてみました。因みに、原題のHalfbackもフットボールの強豪校ノートルダム大学にかけたシャレなんです。

本作では、アニメと実写の合成が見どころなので、この時代の撮影方法を解説させて頂きました。

ワンダリング・ウィリーズ - コピー

『ワンダリング・ウィリーズ』Wandering Willies 1926年

一発芸的ギャグが物語進行の推進力となる、映画黎明期の娯楽要素を満載した狂騒劇です。ギャグ・アニメにも影響を与えた特殊効果は秀逸で、セネット名物《警官隊》をコマ取りアニメによって、壮絶なギャグに仕上げております。

サーカス日和 - コピー『サーカス日和』Circus today 1926年

近年は動物愛護の観点からサーカスのゾウやライオンの曲芸に批判が集まり、多くの演目が禁止されつつあります。そんな風潮をよそに、本作では道化師がライオンの脅威に曝される…今だったら、このような演出自体ゼッタイ禁止!のギャグが炸裂する作品です。僕は、このライオンを使ったギャグの撮影法を説明させて頂きました。

 

いよいよ5回目となる『レーザーポインター映画教室』、一段と気合いを入れて臨みたく存じます。宜しくお付き合いくださいませ。

第5回レーザーA - コピー

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