おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2020.02.02column

「新野敏也のレーザーポインター映画教室5」寒波を伴わずに盛況

第5回レーザーA - コピー1月25日予定通り「新野敏也のレーザーポインター映画教室5」を開催しました。「予定通り」と書いたのにはワケがあって、その2日後の27日朝に新野さんの義理のお父様がお亡くなりになったからです。それ以前の1月10日に一時心停止になり、集中治療室で意識が戻らないまま亡くなりました。京都入りの前にも病院へ行って顔を見てこられたので、いつその時が来るかと心を悩ませながらの映画教室でした。

娘夫婦を応援して、講演が終わるのを見届けて天国に召されたのでしょう。今も、そしてこれからもずっと天国からご家族のことを見守っていてくださることだろうと思います。心よりお悔やみを申し上げます。

2014年12月13日には、新野さんのご紹介で、このお義父様と連れ合いがお会いしているそうで、活動写真弁士の坂本頼光さんもご一緒だったとか。ご縁を頂きましたこと感謝しております。話しぶりから新野さんは、この画家であったお義父様をとても尊敬されていると感じます。さらに、新野さんの恩師の方のご子息の訃報も重なり、とても喜劇映画を語る心境ではなかったはず。

でも、そういったことは一切漏らさずに、計画通り「お茶目で庶民的なシュールレアリスト⁉︎ルネ・クレール」を開催しました。私も、途中で電話がかかってこないことを祈っていましたが、新野さんの奥様は「不測の事態が起こっても、映画教室優先で」と仰っていたとか。とにもかくにもご家族の思いが通じたのか、無事に映画教室を乗り切ることができました。

DSC03186 (2)喜劇映画研究会代表の新野敏也さんです。開館以来毎年この映画教室をお願いして、数えること5回目。昨年は欲張ってしまい、昼食持参にして11時開始で夕刻までの濃厚な一日でしたが、今年は他の催しと同様13時半開始に。事情が事情だけに正解でした。

DSC03188 (2)この日は2部構成で、第1部はルネ・クレール特集と銘打って、『幕間』(1924年)と『空想の旅』(1926年)を解説付きでご覧頂きました。残念ながら、今回レーザーポインターをクルクル回す場面が少なかったのですが、検証しようにもあいにくカメラ修理中のため、記録映像なし。それで、新野さんが落ちつかれたら、振り返りを書いて貰う約束をしましたので、もう暫くお待ち下さいませ。

遠くからもお越し頂き、誠にありがとうございました。どっちが興味深かったかというと『幕間』かしら。テンポの良いタッターララ♪タッターララ♪が今も頭の中に賑やかにグルグルと響きます。エリック・サティが作曲したこの音楽、良いですね。音楽と共に頭に残ったのが踊るバレリーナを下から撮った映像が繰り返し映し出されたこと。普段はチュチュに隠れている下着がチラリ、チラリと映り、「嫌だわ」と思っていたら、徐々に顔がアップになって、それが髭面の男。「あっちゃ~、やられた」って感じ。

スウェーデンバレエ団の公演『本日休演』の幕間(まくあい)に上映された作品で、アヴァンギャルドの作家たち(エリック・サティ、フランシス・ピカビア、マルセル・デュシャン、マン・レイ、ジャン・ボルラン、インゲ・フリス、ルネ・クレール)が出ていて、スローモーション、ストップモーション、多重露光などを用いて、様々な映像表現を試みた前衛作品。100年近く前に、このような映像表現ができていたことに驚きます。当時劇場で見た人々は、どのような感想を持たれたのかしら。「度肝を抜かれた」という表現がピッタリ当てはまったのかも。

『空想の旅』は、昨年世界中に衝撃を伴って報道されたフランスのノートルダム大聖堂がクライマックスのシーンで出てきます。大聖堂焼失と、その後沖縄の首里城も焼失という誠に残念な出来事を悼み、こうして記録しておくことの重要性を訴える意味もあって選びました。日本未公開で、海外でもソフト化されていないとあって、今回の上映は貴重な場でもありました。

DSC03191 (2)毎度お決まりの記念写真。前列の方々が覚えて下さっていて、恒例の腕組みで、にこやかに応じてくださいました。

DSC03196 (2)今回はお客様として参加いただいた活動写真弁士の大森くみこさん(ベレー帽を被り、チラシを手にした女性)の催し(2月22日と3月14日13時、活弁ライブinOSシネマズ神戸ハーバーランド▼2月15日13時、大阪のTORII HALLでの活弁ワークショップ)のお知らせ。続いて、3月8日13時半、当館で開催するサイレント映画ピアニスト天宮遙さん(白い上着姿)と河田隆史さん(マイクを手にした男性)出演による「天宮遙ピアノシアターin京都2」のご案内をして頂きました。3月8日の催しについては近日新着情報でご案内します。

DSC03206 (2)続いての第2部は懇親会を兼ねて、希望者を対象にサプライズ上映会。最初に見せてくださったのは『デブの妄想狂』(Buzzin'Around、1933 年、監督:アルフレッド・E・グールディング)で、デブくんこと、ロスコー(ファッティ)・アーバックルの声を聴くことができてびっくり。この後に3作品発表して、ファッティは亡くなったそうです。

続いて「This is Your Life/Buster Keaton」(1957年4月3日アメリカのNBCで放送された番組)

DSC03209 (2)晩年のバスター・キートンが、彼に内緒で呼ばれたゲストのエディ・クライン、ドナルド・クリスプ、レッド・スケルトン、ドナルド・オコナーと対面するトーク番組。こういう映像を見られるとは思ってもいなかったので、みんな見入りましたね。表情を変えずに一切感情を見せない演技をするキートンも、感無量になり、少し涙を浮かべていました。

おまけに『バークにまかせろ』も。これは、映画評論家で大正時代からの資料を集めておられることで知られる児玉数夫先生が新野さんに提供された1970年代前半のTV録画で、晩年のバスター・キートンがチョイ役で登場します。無表情な彼は、風邪で声が出ないという設定で笑わせます。サイレント時代の大スターへの尊敬でもあったのですね。

児玉数夫さんのお父様は、日本に最初にキネトスコープが入ってきたときの検閲官だったそうで、日記にその日付けが入っているそうです。

他に、新野さんが初めて活弁デビューされた謎の映像や、せっかくの機会なので、開催中のアニメーション作家・岡本忠成さんの代表作『おこんじょうるり』も観ていただきました。

DSC03205 (2)新野さんから、お約束の「ガトー・サンマルク」を皆さんにプレゼント。東京にあるサンデゥニの冷たいスイーツで、前回も好評でした。他にも日本酒の銘酒とワインのプレゼントもして頂き恐縮至極です。参加者の皆さんからもミカンやお菓子の差し入れを多く頂き、こちらにも感謝感謝です。賑やかな懇親会が遅くまで繰り広げられ、無事に終了することができました。

講師の新野さんには、お義父様のご容体が心配な中、最後まで精一杯講師を努めて頂き、心から御礼を申し上げます。

最後に、当日参加いただいた清水信行様が、その場で感想を書いてくださいましたので、それをご紹介。

………………

今日は東京からお越しの新野敏也さんのコメディ映画史「レーザーポインター映画教室」でした。毎年新春恒例のこの企画も今年で5回目。今年はフランスから、シニカルな笑いの「ルネ・クレール」特集。一本目は『幕間』。舞台劇の幕間にお客さんを退屈させないように作られたショートフィルム。バレリーナを下から撮ったり、傘がぐるぐる回っていたり、ファンタジーな映像が、多重露光を使って撮られている。「FIN」と書いた紙を突き破って出てきた男が、バカヤローと殴られて、フィルムが逆回転して、男は紙の中に消えて行く。お客に“まだ終わっていないよ”というメッセージ。

二本目は『空想の旅』。内気な銀行員・ジャン君と美人タイピストのルーシーのラブコメ。ジャン君は、占い師の老婆と知り合って夢の世界へ。蝋人形館の人形が、夜12時の鐘とともに動き出す。“これって、ナイト・ミュージアムやん⁉︎”カギを握るのはカーテンレールから落ちた「輪っか」。夢が覚めたジャン君、勇気を出して恋仇たちを撃退!この作品は、誰か活弁でやってほしいなぁ~

………………

大森さんの活弁を一度でも聞いたことがある人は、その殆どが映像を見ながら、大森さんの活弁の様子を想像しながら見ておられたことと思います。当の大森さん自身も「私ならこうしゃべる」と思いながら観たと挨拶で話しておられました。いつか実現すると良いですね。

DSC03216 (2)新野さん差し入れの赤ワイン。ラベルに「ARANO」と書いてあります。新野さん自身、このラベルをご覧になって、興を覚え買ってきてくださいました。皆さんで美味しく頂きました。左から、この日の主役の新野さん、大森さん、天宮さん、そして、画家でパーカッショニストの渡辺亮さん。

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渡辺さんとは「レーザーポインター教室1」の時、新野さんのご紹介で知り合いました。最新版の妖怪イラスト画集『箱根の話』をプレゼントして貰いました。いくつもの才能に恵まれた渡辺さんについては、こちらをご覧下さい。

2018年3月8日ウード奏者の常味祐司さんと一緒に出演していただいて「EXHIBITION &LIVE 音と妖怪」を開催し、木造の京町家に素敵な音楽が響き、200点の妖怪原画も披露していただきました。今振りかえったら、そのときのことを書いたつもりで、うっかりホームページに載せていないことに気がつき青ざめています。遅まきながら、Facebookに載せた当日の写真を掲載して、お詫びします。

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28619156_1554115554705946_5729196633460544336_oアット・ホームでとても良い催しでした。あれから来月でもう2年になるのですね。渡辺さんには、この空間を活用して、また夜に演奏会ができないか持ちかけました。「とてもいい音がした」と覚えてくださっていましたので、いつか実現して、こちらも恒例行事になれば良いなぁと願っています。

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そして、つい先日新野さんからプレゼントしていただいたばかりの貴重で高価な本です。発行は1992年9月30日。映画全般に疎い私には、 こうした喜劇映画で活躍した人々のことが網羅されているのはありがたいことです。勉強に重宝させていただきます。

しかし、28年も前と言えば、ネット環境はまだまだで、ワープロが活躍しだした頃かしら? だとしたら、よくこんなに多くの情報を集められたものだと驚くばかり。こういう素晴らしい仕事をされる新野さんと知り合えてラッキーです。そして、その新野さんの解説を聞きながら映画を見せていただけた皆さんも、ラッキーです。今回参加できなかった方は、ぜひ秋の京都国際映画祭、来年の「レーザーポインター教室6」をお楽しみになさってください‼

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