おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2016.01.22column

国際色豊かなお客様

20日は日本列島に強烈な寒波が襲来。ミュージアムの瓦屋根も庭も一面の雪景色。雪化粧をした金閣寺を撮影しようと、「雪待ち」をしていた多くのカメラマンが駆けていく様子がニュースでも報じられていました。翌21日は大寒。正にカレンダー通りの寒い京都の町家です。こんな日に訪れる人はいないだろうと、ひっそり背中を丸めて店番をしていたのですが、それは嬉しい誤算でした。玄関の戸をガラガラと開けて入ってこられたのは、台北からのお客様。林克明さんと奥様の邱雅芳さん。二人とも台北の大学の先生で、アメリカの大学に留学経験があるご主人は映画の勉強を、東京大学に留学経験がある奥様は日本文学を研究されていて、日本語がお上手。ホームページを見てご来館いただきました。

あいにくこの日は館長不在のため、不十分で頼りない私の説明で終始しましたが、それでも一生懸命聞いてくださり、時には逆にご主人から使い方を教えてもらったりする場面もありました。ミュージアム設立に至った経緯を説明し、日本の無声映画の残存率の低さをあげ、例え短い映画の断片でも発掘して、復元し、次世代に残したいという思いを伝えました。そして、「もっと多くの人に見てもらいたいと思っているけれど、実際はなかなか難しい」という現実も伝えました。「映像学科の学生さんでも、古い映画に関心をほとんど示さず、見向きもしない人が多いとよく聞く」と申しましたら、邱さんも「留学中、周囲には谷崎や佐藤春夫、芥川、夏目漱石などの本を読んでいない学生が多く、もったいないと思った」と返ってきました。昨秋に来日し、作品上映をしたドイツのイルケル・チャタク監督は「たくさんの古い映画を見て勉強し、その中から自分の表現したいもののヒントを得た」と話しておられました。新しいものに直ぐ飛びつき、古いものを遅れたもの、拙いものとみて顧みない傾向がある日本人に、もはや「温故知新」という言葉は、死語なのかもしれませんが、古いものにはたくさんのヒントがあります。もっと見直してもらえるよう、頑張って活動しなければと改めて思いました。

戦前の無声映画を見ながら、活動活動写真弁士(活弁)のことを尋ねましたら、1920年ごろ台湾の田舎では、映写機を持って巡回しながら台湾の言葉で啓発映画を上映し、後の日本統治下では、日本人の活弁士もいましたが、台湾人の活弁士もたくさんおられたようです。林さんとは、今後お互いに映像関係で新に気付いたこと、わかったことなどがあれば相互にやり取りをして深めていきましょうと約束を交わしました。

続いて来館されたのは、マレーシアからのお二人。カメラや映写機などに興味があるナディアさんに、日本語が話せるリディアさんが付き添って来館。暖かい国からのお客様に風邪でもひかせたら大変と、早速カイロを取り出して貼るよう勧めているところに、今度はドイツ人で、フィンランドのアールト 大学で教えておられるオラフ・モラーさんと、アメリカ人のジェニー・バーカーさんがやってこられました。彼女は今京都外国語大学の先生をされていて、古いアニメーションの研究でこれまで2回来館いただいています。心優しいリディア・サフリさんの助けを得て、国内外の古いアニメーションやニュース映像を解説を交えてご覧いただきました。オラフさんの熱心さは凄くて、影響を受けたみんなで、映像のタイトルなどの情報を書き取る作業を始め、気が付いたら外はすっかり暗くなっていました。

前回、このブログでドイツの無声映画伴奏者キュンター・A・ブーフヴァルトさんについて書きましたが、オラフさんは、ブーフヴァルトさんをよくご存じでした。彼が伴奏を付けてくれた『何が彼女をそうさせたか』もご存知で、世の中は狭いなぁと、びっくりポン!そして、今日になってわかったことですが、オラフさんは短編映画祭として有名な「オーバーハウゼン映画祭」のプログラマーなのだそうです。「そうと知っていたら、館長に説明してもらえるよう段取りしたのに」と、今更ながら残念に思います。ともあれリディアさんが偶然居合わせてくださったおかげで、しどろもどろになりつつも英語でコミュニケ―ションができ、みんなで楽しい時間を過ごすことができました。それから、「マレーシアにも、おもちゃ映写機はありましたか?」と問いかけましたら、「おそらくイギリスから入っていたと思うが、今はそれを確かめるすべがないだろう」と教えて貰ったことも書き添えておきます。

DSC04220

 「観光客が少ないこの時期に来日するのが楽しみだ」と話す台北のお二人と、来年の再会を約束して見送りましたので、記念写真はその時に。残った4人のお客様と記念写真を撮影。忘れがたい思い出ができた大寒の日でした。

 

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