おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2023.11.20column

戦時中のおぞましい人体実験を記録したフィルムが現存!

今朝の京都新聞1面トップ記事です。昨年12月5日付けでも京都新聞は熊本日日新聞と協力して、戦時中に旧陸軍が国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園(熊本県合志市)に入所しているハンセン病患者を「材料」と呼んで、非人道的な人体実験をしていたことを報じました。一連の報道に関しては「共に生きる会」のブログで書いています。もともとハンセン病は感染性が低く、早くに治療薬プロミンが開発されていたにもかかわらず、日本は1996年4月1日らい予防法が国会で廃止されるまで、実に長い間隔離政策を取り続け、元ハンセン病患者だった人々の人生を台無しにしてきました。さらに酷いことに、入所者で人体実験をしていたのです。実験に用いたのは、「虹波(こうは)」と名付けられた薬剤で、写真で用いる感光剤を合成したもの。残された資料によれば、入所者370人以上に、静脈注射、筋肉注射、座薬などいろんな方法で投与を試みています。激しい副作用に苦しむ人が続出し、9人が亡くなったことが明らかになっています。

今回のスクープは、この実験の様子を撮影した16㎜フィルム(11分5秒のモノクロ)が見つかったことです。ハンセン病は人目につく部分に変形をもたらすことが多く、上掲記事に用いられたフィルムのコマには、手指の関節が変形してバケツを持てなかった入所者が、バケツを持って運ぶ様子が記録されて、「虹波」の効果があるように見せています。

1面だけでなく、社会面の記事の扱いの大きさにも驚きますが、ここには、「材料」と呼ばれた患者が懸垂をしている様子や関節が曲がって不自由になっている手の指を曲げ伸ばししている様子が記録されています。「症状改善に効果があるから」とか言われて薬剤を使用され、カメラマンや宮崎松記監督(恵楓園園長で、兵器の開発を担当した第七陸軍技術研究所嘱託)が見つめる中でやらされた患者の気持ちは如何ばかりかと。投与後、激しい副作用に苦しんだ入所者が続出したと文書記録があるそうですから、「材料」に選ばれた人の恐怖も大きかったことでしょう。

社会面の記事最後から2段落目に連れ合いのコメントが載っています。これまでやってきた経験から意見を求められたことは嬉しいですが、映画に関わってきた立場から言うと、何でフィルムの感光剤に目を付けたのかが気になります。ゼラチンの効用かしら???旧陸軍資料に書かれていた研究目的は「戦闘に必要なる人体諸機能の増進」「極寒地作戦における体感機能向上」などだそうです。ついでに言えば、何で「虹波」という名前を付けたのかも気になります。激しい苦痛記録もあるというのに…。命名は宮崎松記園長かしら?

説明がありませんこれは、熊本日日新聞の1面。

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そして、これは21面。京都新聞岡本晃明記者様、熊本日日新聞臼杵大輔記者様、スクープ、おめでとうございます👏👏この快挙に少しでもお役に立てたのでしたら、何よりです‼

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