おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2025.03.25column

漆のフィルム

新拠点の近く、一条戻橋に咲く河津桜が見頃を迎えました。春風に吹かれて気持ちよさそう。毎年確定申告に西陣織会館に行って帰りに見るのを恒例行事にしていましたが、今年は例年より遅かったです。昨年の今頃はこの直ぐ近くに拠点を構えることを想像もしていなくて、どこかにふさわしい物件がないかと家探しをしていました。ご縁があって、ここから歩いて4分程度のところをお借りできることができ、4月4日の再開館を前に慌ただしい日々を過ごしています。

そんな折の24日午後、ベルギーからお客様が来館。先にメールをお送りいただいていたようですがうっかり見過ごしていたらしく、直接訪ねて来て下さいました。ローレンス・アデアガさん、195㎝もあるノッポさん。Jester のResidency プログラムに採択されたベルギー生まれのMathias Prenenさんのプロジェクトの関係で当館にある幻燈機、古い時代の妖怪が登場するようなサイレント・アニメーションで協力を求めて来られたようです。

これまでのマティアスさんの仕事を見ていて興味深かったのは漆への着目。おそらく金沢美術工芸大学で漆や繊維技術を学んだことが大きかったのでしょう。プロフィールには「日本の伝統技法である漆の物質的・視覚的特性に関する深い研究を行い、アナログ写真、幻灯機、写し絵、幻燈などのアナログ・デジタル映像技法を統合することで、芸術分野における理論的・実践的な知見を生み出しています」とあります。

そして今度のプロジェクトでは、漆を用いたフィルムでも実験です。これまで考えたこともない取り合わせです。以前金継技法とおもちゃ映画を取り上げたドイツのアーティストがおられましたが、それもユニークでしたが、漆で作られたフィルムを用いる発想もまた奇想天外。写真は35㎜漆膜のハッセルブラッドスキャンによるフィルム実験の様子。

他にもスーパー8サイズの漆膜の端の写真なども。伝統工芸と現在美術が融合する革新的なインスタレーションを様々に展開しておられます。うちのフィルムスキャナーの画像も手にしておられましたから、それを用いて実験してみたいのでしょうか。送り孔もつけるように仰っていたような。映し出す映像にはサイレント時代のアニメーションで、しかも妖怪が出てくるのがご希望だそうです。先ずはご本人に何が自分の実験に仕えるのか直接見て頂きたいところ。次回来日は来年らしい。ユニークな実験に協力できるのは面白いですね。

彼の作品はフランドル政府、ヘント大学芸術コレクション、金沢市美術コレクションなどにも納められているそうです。果たして漆で作られたフィルムで映像を見ることができるのでしょうか、興味津々。

予備調査に来られたローレンス・アデアガさん。幻燈機や古い写真をカメラに収めておられました。おもちゃ映画のアニメーション特集もご覧頂きました。マティアスさんの創作意欲が湧くような素材が見つかると良いけど。

私はと言えば、ローレンスさんの左腕のtattooに目が行って。絵画的ですよね。

背が高いので体を折り曲げるようにして世界地図にマーク。ベルギーからはお二人目でした。

一段高いところに立っても、この身長差。ようこそ新拠点に訪ねてきてくださいました。今後の展開を楽しみにしていますよ。

【追記】

3月25日午後、フランス哲学者の依田義右先生ご夫妻が新拠点を訪ねて下さいました。良い場所が見つかったことを喜んで下さり、83年来のアメリカの友人をお連れできたらと楽しみにして下さって。帰りに河津桜のところで記念に写真を。

昨年は義右ご夫妻のご尽力で、3~4月に「シナリオライター依田義賢生誕115年記念展」をしました。期間中に新たな資料が見つかって展示に加えるなど面白い展開になりました。あれから、もう一年ですか。季節の巡りは、本当に早いです。

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