おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2016.09.30column

充実の9月振り返り③パテ・ベビー~研究発表会と第2回上映会

9月1日から始まった企画展「パテ・ベビーと小型映画機材」は24日に無事終了しました。正会員でもある小型映画研究家・飯田定信さんのコレクションを展示しました。期間中には催しがいくつかあったこと、団体の来館もあったことから、これまでで一番多くのお客さまにご覧いただけたように思います。その最終日に、飯田さん本人による「機材と技術からみたパテ・ベビー~カメラから現像・編集、映写機まで~」と題した研究発表と、6月25日に続いて2回目のパテ・ベビー・上映会を開催しました。

dsc07197どちらかといえばマニアックな世界なので、一体どれくらいの人が集まってくださるのかと心配していましたが、全くの杞憂でした。参加者の顔ぶれは、4つの大学の先生方、2つの大学の大学院生、2人のNHK放送局記者、チャップリンの研究家、スイスの映画関係者と新聞記者、フィルムアーカイブの専門家たち、2人の映画関係ライター、映画を愛する人々と錚々たるもの。発表内容につきましては、後日飯田さんからレポートが届くと思いますので、もうしばらくお待ちください。

dsc07177向かって左で、マイクを手にしているのが発表者の飯田さん。展示していた実物を指し示しているのは、翌日の8㎜フィルム現像ワークショップ講師を務める石川亮さん(東京国立近代美術館フィルムセンター技術スタッフとして、主に小型映画の検査を担当)。

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 12日付け新着情報でキネマカラー方式のフィルムをYouTubeに一部UPして触れましたが、研究発表会でも説明されました。

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所蔵する短いループのフィルムです。赤と緑に交互に染色されています。この後のパテ・ベビー上映会でも上映して、カラーに見えるのを体験していただきました。

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横浜から奥様の直和子さんと一緒に参加して下さった塩澤昂一さん。7月2日に来館いただいたときに、自らパテ・ベビーを使った経験を話して下さったので、ぜひ他の方にも聴いていただきたいとお手紙を差し上げました。後で奥様にお聞きしたところ、随分この日の来るのを楽しみにしていてくださったようです。

dsc07250-2当日、これらの機材とフィルムを寄贈いただきました。この中から2本を映写機にかけて、皆さんと一緒に拝見。その映像はいずれも面白く、とりわけ強烈な印象を残した1本は、いずれ、より多くの人にご覧いただく機会があろうかと思います。

 

◎塩澤さんのお話しを聴きながら書いたメモからいくつか

・戦前から戦中、戦後の進駐軍が闊歩してい時代、塩澤さんは、発表会でも頻繁に名称が出た「中村パテー商会」に入り浸って教えてもらったそうです。昭和の初めにサラリーマンの間で最初のパテ・ベビー・ブームが到来。サラリーマンの初任給が100円から不況で70円に下がった時、映画の道楽は16㎜より割安のパテ・ベビーに移って普及。オルソクロームフィルムは感光が低いので、明るい天気の良い時しか映らなかった。

・既製品のフィルムを仲間で買って、今でいう読書会のように鑑賞会や回覧をした。

・戦前にカラーのマンガを見た記憶がある。非常に進化していて、流行っていた。

・当時の8㎜は四分の一の画角なので見るには今一つだったが、9.5㎜は真ん中に送り穴があり、データ量が多いので16㎜に匹敵した。明るくすれば良く見えた。

・昭和20~30年初めまでフィルムを買い、中村パテが現像をしていたので、利用していた。

・ドイツ製のカメラを持参した(上掲写真右下。会場で参加者に順番に回し、実際手で触れ、音も体験)。ドイツのカメラは頑強にできていて、クランクで巻き戻しもできる。オーバーラップができたので挑戦した。

・昭和20年代初めに闊歩していた進駐軍が、キーストンの16㎜カメラを持ってきた。

・中村パテ—に残っていた機材類は、その後全て日本大学芸術学部の博物館に寄贈された。

・ドイツのゲバルト・フィルムは、今、ベルギーで作っている。等々。

 

 ◎その他会場から出た意見もいくつか。

・発表でも触れた吉川速男は、パテシネの顧問で『アルス最新写真大講座第15巻 小型映画の写し方』(1935年)を書いているが、ご子息が亡くなって以降、パテを子供だましのように言って、余り良く言っていない。

・伴野商会のマークに大阪の澪標のマークが入っているものもある。日活は昭和8年に東京に移るまで京都にあったので、大阪でフィルムをプリントして作っていたのではないか。

・79年年鑑に、パテの新製品が載っている。どれくらいまでヨーロッパであったのか?(まだ調べ切れていないので、今後の課題に)

 

◎休憩をはさんで、映写機で上映したパテ・ベビー・フィルムは、バラエティ豊かな以下7本。

①『ナポレオン』(1927年、フランス、アベル・ガンス監督)

②実写とアニメが混在したフランスの作品。フィルム缶には『漫画マリとニクの魚釣』と表記。

③京都旅行のホームムービー

④服部茂コレクションから前衛的な実験映像『?』

⑤キネマカラー(前述)のホームムービー(2倍のスピードで上映)

⑥『弥次喜多伏見鳥羽の巻』(1928年、日活、池田富保監督、大河内伝次郎主演)

⑦ハロルド・ロイド『ロイドの自動車狂(Get out Get Under)』(1920年、アメリカ)

服部コレクションの映像は、先日ヤフーオークションで秋田の業者が一挙に50本以上出品したことから話題になりました。服部茂氏は、戦前小型映画界の有名作家で、流行歌「東京行進曲」に合わせて昭和初期の東京の姿をテンポよく見せたフィルムが評判を呼び、アマチュア作品としては異例の商業発売もされ、かなりヒットしたようです。会場におられた松本夏樹先生は「アマチュア映画作家というよりは、ほぼセミプロの域にあった人」と称賛されていました。まとめてフィルムセンターに寄贈されていれば、貴重な資料となったのでしょうが、ヤフオクにかけられてコレクションが散逸してしまったことが惜しまれます。

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予定より大幅に延長になりましたので、ロイドを観ずして帰られた方が5人。申し訳ないことでした。残っていただいた方でいつもの記念撮影。

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そして、その後の交流会。塩澤直和子さんが、4月2日午前4時過ぎからのNHK大阪放送局発「ラジオ深夜便」をお聞きになって、出演した連れ合いの話をその朝、昂一さんにお話されたことから、この日の会の充実に繋がりました。会場には同大阪放送局の人も私的に参加されていて、素敵な縁続きに乾杯しました。

手前のテーブルには、紹介した機材類とフィルムがたくさん。前回紹介した台北出身陳さんが送ってくださったメール3行目の文章を思い出します。感謝の気持ちを込めて、彼女の言葉を日本語翻訳して再掲します。

「同じ情熱を持って多くの人々が出会い、意見交換しているのを見られたのが良かった。本当に素晴らしいです!」 ありがとうございました‼

 

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