おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2018.11.26column

横田永之助の映像発見のニュース、そして、少年時代の横田永之助と日活副社長としての横田永之助の写真

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11月20日急遽帰省することになり出先の滋賀県・彦根駅で新聞を購入し、広げて目に飛び込んだのがこの記事。全く聞いていなかったので、連れ合いのコメントが載っていてびっくりポン! それはともかく、日本映画草創期に活躍した横田永之助が写る貴重なフィルムが、知り合いの長谷憲一郎さんによって発見されたという嬉しいニュースです。

21日帰宅後、このスクラップと一緒に、以前骨董市で見つけた少年時代の横田永之助の写真をUPしたところ「大変貴重な写真です」と反響があって、またまたびっくりポン!!

少年時代

長谷さんも少年時代のものは初めてご覧になったそうです。この写真は他3枚と一緒に売られていて、一連のものか否かは今後の研究にゆだねますが、別の3人の子どもたちの様子も如何にも「良家のおぼっちゃまたち」という風です。

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今現在では、以上3紙のほか、NHK、関西テレビ、KBS京都も報道。多くの人に横田永之助のことを知って貰える機会になって良かったなぁと思います。連れ合いのコメントのように、再評価されるようになれば良いです。

さて、当館では今、横田永之助と同時期に「日活」で活躍した池田富保監督の没後50年記念展をしています。横田、池田が揃い踏みの写真がないかと探しましたら、ありました!

 見学記念日本最初の映画スター、「目玉の松ちゃん」こと尾上松之助最晩年の『(実録)忠臣蔵』(1926年)撮影時の記念写真におさまっています。池永浩久はこの時、日活大将軍撮影所長。横田永之助は日活副社長で、翌年社長に就任します。その右隣の人がどなたかご存知でしたらお教えください。

 それぞれの記事を読み比べながら、そして今回展示をしている御園京平さんの『オールスター映画の巨匠』の池田富保年表を見ていると面白いことに気付きました。日活社長の横田が「活動写真、京が発祥」と祝辞を述べたのは1932(昭和7)年。現在の「㈱IMGICA Lab」の前身「極東フィルム研究所」竣工式でのこと。同年「不況による日活は197名の馘首問題から大争議となり、大正6年以来日活の大黒柱である山本嘉一を始め、酒井米子、梅村蓉子らを整理解雇を通告、嘉一は全所員の反対で保留されたが、争議の斡旋運動した所長池永浩久は10月に辞任した。池田も浩久には義理があり退社。同年、池永浩久は大沢商会の大沢善夫と共にJOトーキーを創立、池田はトーキー研究に没頭する」(御園京平前掲本より)。

「当時は、撮影した映像の現像に手作業で丸一日かかっていたが、映像会社の社史などによると、この映像は国内で初めて自動現像機で現像され、式典後に試写された」というそうです(前掲読売新聞記事より)。1931年に満州事変、1932年五・一五事件、1933年国際連盟脱退と時局はドンドンきな臭くなっていきます。1933年3月に帝国議会の衆議院で「映画国策樹立に関する建議案」が可決されています。映像の宣伝効果は大変大きなものがあり、勝手な想像ですが、一日かかって現像していたのでは間に合わないという、速攻・即効性を求める軍からの要請もあったのかもしれません。時代は無声映画からトーキーへと変革の時代をも迎えていました。

さて、11月20日早起きをして、滋賀県の旧豊郷小学校へ行き、周防正行監督『カツベン!』ロケを見学させてもらいました。場面はタチバナ館で楽士10人と弁士1人によって映画『十誡』を上映するシーン。チャールトン・ヘストンが出てくる有名な映画ですが、この名作の監督がセシル・B・デミルであることに、私は感動を覚えました。というのは、御園京平氏の前掲本「序」にこう綴られているからです。

「(略)時代劇映画の開拓に意を注ぎ、日活の首席監督としてスケールの大きさ、構想力の豊かさ、日本のセシル・B・デミルと評する人もあるほど、まさに池田富保は飛ぶ鳥落す勢いであった」。

何という巡り合わせでしょう!セシル・B・デミルに例えられた池田富保監督ですが、喜んでばかりもおれません。その「序」文冒頭は衝撃的です。

「いまさら、なんで池田富保監督なのであろう。この人の名など今では風化し、もうすべての人から忘れさられている。否、そんな人の名など知らないと云う人の方が多いであろう」。

『忠臣蔵』の討ち入りの日に合わせてなのでしょうか、この本が発行されたのは、1991年12月14日。この時点でさえ「忘れ去られている」と書かれていて、それから27年も経っている今日ですから、「没後50年記念企画 オールスター映画の巨匠 池田富保展」を見に来て下さる人がまばらなのも致し方ないかなぁと思います。でも、今回の横田永之助の貴重な映像発見の報道で、少しでも頭の隅っこに日本映画草創期に活躍した人々のことを記憶に残していただけたなら、それだけでも嬉しいです。

 周防監督サイン2018年11月20日 - コピー

池田富保監督は、日活に入社前の若い頃、当時流行していた活動写真の松之助映画の陰せりふ弁士を受け持っていたこともあります(御園京平氏前掲本参照)。映画『カツベン!』は、まさにこうした時代を描いていることもあり、公開されるのが、今からとってもとっても楽しみです!!!!!

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