おもちゃ映画ミュージアム
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Toy Film Museum

2018.12.18column

没後50年記念「オールスター映画の巨匠 池田富保監督作品上映会」のレポート

1702(元禄15)年12月14日、赤穂浪士47人が本所の吉良上野介義央邸に討ち入りし、主君浅野内匠頭長矩の仇討を成し遂げました。 今から316年前のこの赤穂事件から2日後の12月16日、東京から活動写真弁士の片岡一郎さんをお招きして池田富保監督『忠臣蔵』(1926年)を上映しました。

池田富保(裏)A - コピー

片岡さんは国内外で日本の無声映画と語り芸である活弁の魅力を広めることに尽力されています。14日は国立映画アーカイブで、1910-1917年頃に横田商会と日活が作った牧野省三監督『忠臣蔵』をデジタル復元した作品の弁士を務められました。『忠臣蔵』としては、現存する最古映像とあって、大賑わいだったそうです。

そして、15日は早稲田大学演劇博物館で開催された「日本映画と語り物の文化」にも登壇されました。上映されたのは同館が所蔵する「小沢昭一旧蔵資料」から2016年に発掘された『乃木将軍』。1935年に池田富保さんが監督した日活の作品。演博HPによれば、トーキー時代になっても、スター浪曲師の声を録音した「浪曲トーキー」と呼ばれる35㎜作品が作られていたそうですが、発掘された『乃木将軍』の「フィルムには浪曲トーキーの最大の特徴である浪曲の音声がなく、字幕をくわえてサイレント映画として再編集されたものであることがわかった」そうです。ということで、演博では、片岡さんの活弁付きと、浪曲師による上映の2パターンが披露されたようです。

そして、16日の当館での池田富保監督最晩年の『(実録)忠臣蔵』上映ということで、この3日間に「忠臣蔵」「池田富保監督」つながりの連続登壇となり、超多忙な日々を過ごされました。

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片岡さんが手にしておられるのは、滋賀県豊郷町にある豊郷小学校旧校舎のパンフレット。11月20日、周防正行監督が今取り組んでおられる『カツベン!(仮)』のロケがこの校舎内講堂であった折り見学させてもらい、その時、監督にパンフレット表紙にサインしていただきました。片岡さんは俳優の高良健吾さんらの活弁指導をされたほか出演もされ、大活躍。晴れて来年映画公開の暁には、「無声映画」「活弁」が流行語大賞に選ばれるほどの勢いがあって欲しいと願っています。(写真は尾上松之助遺品保存会代表松野吉孝さん提供)

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年末の慌ただしい中、そして寒い中をたくさんのお客さまにお越しいただくことが出来て、大変嬉しく思っています。

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明治維新150年の年に相応しい『地雷火組』の一場面。片岡さんは「さすが!」のパフォーマンスで、ご来場いただいた皆さま方から「面白かった」「良かった!」の声がたくさん寄せられました。

その中のお一人から感想文を寄せていただきましたので、早速掲載させていただきます。

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16日は素敵な時間をありがとうございました。終演後お話しさせていただきました岡住容子です。

最近、昔の日本映画や無声映画、活動弁士に興味を持つようになり、色々と調べているうちにおもちゃ映画ミュージアムにたどり着き、今回の催しを知りました。池田監督のお名前は失礼ながら存じ上げず、どのような作品を手掛けた方かも知らず、何の予備知識もなく当日を迎えました。

現存している作品が少なく、資料を紐解いても殆ど評価されていないとの事でしたが、何も知らなくても充分に楽しめました。逆に知らないことで何の先入観もなく、作品そのものを楽しんで観ることが出来たと思います。見終わった後、本や資料で知ることや学ぶことも大切ですが、実際に作品を観ることが一番良いと実感しました。

池田監督の残っている数少ない作品をスクリーンで観ることが出来て本当に良かったです。『荒木又右衛門』から始まり、『地雷火組』『忠臣蔵』と鑑賞しましたが、どの作品も面白いものを作ろうという勢いや工夫を感じました。『荒木又右衛門』は6分とはいえ、観ることが出来て良かったです。『地雷火組』は、大河内傳次郎の存在が際立っており、観ているうちにスクリーンに目が釘付けになって最後まで見入ってしまいました。『忠臣蔵』は結末を知っているとはいえ、何度観ても同じ場面で感情が揺さぶられます。

昔の映画ですが、映像を観るだけでも楽しく、そこに弁士さんが説明をすることによってさらに面白くなり、このような映画をたくさん観たいと思いました。片岡一郎さんの映画に寄り添いながら盛り上げる説明がとても心地よく、もっともっと聴きたかったです。最古の『忠臣蔵』も、再演があればぜひ観に行きたいです。ご多忙の様子なので、お身体に気を付けて、これからも片岡さんのご活躍を期待しております。

また、無声映画を活動弁士付きで上映して欲しいです。今回の上映会は私にとって、新たな映画の楽しみを気付かせてくれたものでした。有名無名関わらず、昔の日本で様々な才能が色々な作品を作っていたことを知って、あらためて昔の日本映画は広く楽しめて奥が深いものだと知りました。池田監督のように残っているものが少ないと、いつの間にか忘れられてしまうのかも知れません。だからこそ、少しでも残されているものがあれば、この度の企画のように今に残る作品や写真を取り上げていき新たに着目するのは素晴らしいことで同時に必要で大切なことだと思います。

昔の良い映画から発見することや学ぶこと、楽しむことはまだまだ沢山あって尽きることはないです。これからもおもちゃ映画ミュージアムの活動に注目します。

最後になりましたが、電話での予約時にお心遣いをいただき、とても嬉しかったです。貴重な上映会と合わせて、スタッフの方の対応にも深く感謝いたします。

ありがとうございました。

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可愛らしくてお若い方が、活弁付無声映画上映会にお越しいただいたことに私の方が関心を持ち、お声がけをしましたら、「最近、無声映画と活弁に魅せられて」と目を輝かせて熱くおっしゃるので、飾っている大森くみこ弁士の写真を指し示しながら「彼女も偶然活弁上映を目にして、『やってみたい』と思って、この世界に入って、今や大活躍。あなたもどう?」と私。今はいろいろ調べて、いずれは何か書いてみたいとおっしゃるので、それなら、と感想文をお願いしました。文章からも、無声映画の面白さを、活弁の良さを心身で感じておられる様子が伝わってくると思います。こういう方に鑑賞していただけたことを嬉しく思っています。

当日は、池田富保監督の娘さんで、尾上松之助さんの姪にあたる池田富美さん(90歳)も来て下さいました。

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新聞をご覧になって、異母弟ご夫妻も観に来て下さいました。2015年12月12日の『忠臣蔵』上映の時には、尾上松之助さんのお孫さんも来て下さり、残された映画が結ぶ縁のことも温かい思い出としてあります。

他にも、上映した3作品全てに重要な役として出演されていた新妻四郎さんのご子息も来て下さいました。まだ小さいころにお父様を亡くされたことから記憶がなく、残された映像で偲んでおられます。上映後の交流会で、若者からいろいろ尋ねられたことがご自身にとっては嬉しく思われたらしく、一方の若者も「勉強になった」と喜んでおられました。

お父さまとご自身と2代にわたって大映京都撮影所で仕事をされていた土本正文さんも来て下さいました。そのお父様は「菊野昌代士」の名前で俳優をしておられ、嵐寛寿郎さんの弟子にあたるそう。うちに残っている映像にそのお名前を見付けられると良いのですが。土本さんは大映の俳優行政をしていて、市川雷蔵さんにとても可愛がられたそうです。こうした話をお聞きすると「京都だなぁ」と思います。今も映画全盛時代の記憶があり、それを大切にしておられることがよく伝わってくるからです。2015年5月にミュージアムを構えた時、映画関係で働いたことがあるベテランと映画作りに関心がある若者がここで交流できる場にしたい―という願いがありましたが、なかなか思うように実現できていません。そのことを土本さんに伝えると、「今日がそういう場になっていたよ。楽しかったから、また来るよ」とおっしゃってくださって。何よりの励ましになりました。

他にも「『忠臣蔵』が好きで好きで」という女性や市川右太衛門さんファンの方も遥々東京から来てくださいました。東京といえば、ラピュタ阿佐ヶ谷の支配人石井 紫(ゆかり)さんもおいでくださいました。11月にラピュタ阿佐ヶ谷は開館20年を迎えられ、1998年~2018年のチラシを1冊に製本した記念誌(限定500部)をプレゼントして貰いました。20年も運営を継続されたことは、ただただ凄いなぁと思うばかり。DSC08370

写真は、326枚あるうちの1枚で、当団体正会員でもある高槻真樹さんが『映画探偵 失われた戦前日本映画を探して』を刊行された記念に開催されたプログラム。当館所蔵や修復した作品も幾本か上映していただきました。2㎝を超す厚さの記念誌はそのまま貴重な資料になると思い、参加者の皆さまに紹介しましたところ、興味深く手に取ってご覧になる方が何人もおられました。

他にも、関西はもとより、名古屋からもお越しいただくなど、時代劇ファン健在に胸が熱くなりました。岡住さんが書かれたように、幸いにして断片といえども残った無声映画をこれからも機会を見付けて上映して、その魅力を発信して行かねばと改めて強く思います。

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お決まりの集合写真。ご多忙の中ご参加いただきました皆さま、そして、素晴らしい説明をして下さった片岡一郎弁士に心より御礼を申し上げます。

ありがとうございました!!!!!

 

 

 

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