おもちゃ映画ミュージアム
おもちゃ映画ミュージアム
Toy Film Museum

2019.03.03column

紙フィルム・錦影絵・活弁に夢中のエリック・ファデン先生

先日来数度にわたってお越しの米国バックネル大学のエリック・ファデン准教授。

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一昨日、昨日もご覧の作業に熱心に取り組んでおられました。昨年末に再来日され、再び同志社大学を拠点に日本文化を学ぶ全米から集まった留学生たち(AKP=Associated Kyoto Program)に教えておられます。彼が今夢中になってコマ撮りをされているのは、当館所蔵の「紙フィルム」。二日間かかって1作品を終了されました。そこに写っていたのは、おそらく大陸へ渡った日本軍の実写映像。戦時中の家庭でご覧になっていたものです。

「紙フィルム」には、1933(昭和8)年頃に東京にあった印刷所が考案して発売した「レフシー」と後に大阪で製造販売された「家庭トーキー」の2種類がありました。モノクロの時代にあって、カラー印刷ができたことから映像もカラーで楽しむことができました。いずれにしても高価な玩具でしたが、戦争への道を突き進む中にあって1938(昭和13)年に金属玩具の製造が禁止になり、紙の入手も困難になって姿を消します。わずか5年だけ国内で流通していた日本独自の珍しいものです。

このことを私はいつも口頭で説明していたのですが、いつまでもそれではいけないと、説明文を書いて掲載しました。と同時に、海外の人にも理解して貰えるようエリックさんを介して、同僚のAKP同志社留学センター所長をされているエリザベス・アームストロング教授に英訳をお願いしました。とても美しい日本語を話されるエリザベスさんとは既に面識があり、幸いなことに快諾してくださいました。翻訳は1月19日に出来上がり、それが契機になって、エリック先生は俄然紙フィルムに心奪われてしまわれたのです!

カメラの左に立ててあるのが、エリック先生手作りの紙フィルムのコマ撮り用道具。1コマ、1コマ順送りしている紙フィルムは、前述のテレシネ化2作品目。ちなみに。1作品目はアニメーションでした。いずれも動画完成後はミュージアムでもご覧いただけるようになるでしょう。どうぞ、お楽しみに‼

これとは別に先ごろ受け取ったエリック先生からのメールによれば、映画/メディア研究者としての先生の作品が、6月21日ロンドンのゴードンスクエアシネマで上映されるそうです(オーストラリアとニュージーランドでは5月の予定)。世界中で大活躍されている様子は、なんて素晴らしいのでしょう‼

さて、AKPとKCJS(Kyoto Consortium for Japanese Studies)の皆さんは開館した2015年から何度かお見えなのですが、下掲写真は2月1日の時のもので、写っている学生さんたちは、この日が初めてのご来館。

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左端がエリザベス先生で通訳を兼ねて来てくださいました。学生さんたちは短期間滞在なのに日本語がとても上手で、会話していても理解を示して下さるので大助かり。さすがは全米中から集まったエリート留学生さんたちです。ミュージアムの説明、映像アーカイブのことなどを最初にお話して、アニメーション、時代劇、それに実写など復元し保存している戦前の映像をご覧いただきました。

IMG_2582 (2)エリック先生は、以前ご紹介した錦影絵にも興味津々で、この日たっての希望で、「錦影絵池田組」特別授業も急遽実施へ。池田光惠先生(右から二人目)が桐材で手作りした「風呂」と呼ぶ道具の扱い方を優しく伝授。留学生さんは3人ずつ「風呂」を抱えて、錦影絵(幻燈)の体験。それぞれ異なる絵を描いた種板を「風呂」に右から挿し込み、明かりでそれらを照らし出して、お話の世界をスクリーンに表現します。

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息をあわせて、種板の絵がくっついたり、離れたりしながら幻燈の世界を演出します。体を前に出したり、後ずさりしたり、右へ行ったり、あるいは左へと動かすことで映像表現も変化します。据え置きのマジックランタンとは、このあたりが大きく異なりますね。

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本当は和紙製スクリーンの裏で風呂を抱えて投影し、お客様は和紙スクリーンの表から鑑賞するですが、この時は映画用のスクリーンで代用しましたので、表から映し、表から鑑賞することになりました。

IMG_2580 (2)池田組の吉澄博道さん(大阪芸大3回生)が手伝ってくださいました。左の留学生さんは、この前日にグリーンヘアーに染めたばかり。ウォルト・ディズニーが生み出したオズワルド・ラビットのロストフィルム『Neck'n'Neck』発見のニュースをご存知でした。彼だけでなく、どの学生さんもとっても明るくて快活でした‼

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映写機の体験、展示物などを見て貰ってから記念写真を撮りました。エリザベス先生がお帰りになった後だったのが残念。ご一行は2月15日大森くみこさんの活弁と天宮遥さんの生演奏付きで無声映画を上映する「活弁ライブinOSシネマズ神戸ハーバーランド」にも出掛けて日本文化の一つ活弁を実見いただきました。大森さんは、国によって笑うところが違うのだなぁと興味深く思ったそう。エリック先生からも「学生さんたちが活弁上映を大変喜んでいました」とお聞きしました。

今日3月3日まで、アメリカのビリー・ワイルダー・シアターで大森さんも出演して「国際シンポジウム「Talking Silents」と映画上映会「Art of The Benshi」が開催されていますし、周防正行監督の最新作『カツベン!』も12月公開予定です。国内外で活弁付無声映画の楽しみ方、面白さが広がっていけば良いなぁと願っています。

【3月11日追記】

これまでエリック先生が紙フィルムを動画撮影された作品は以下の通り。

①Coloured Cartoon  CROW AND HORNEDOWL=彩色漫画『からすとみみづく』(1分49秒)…みみづくの染物屋にやって来た白いカラスが、誰も染めてない色を希望したので黒に染めてしまいました。もっと綺麗な色を期待していたカラスは怒ってみみづくを追いかけます。怖くなったみみづくは、それ以来夜にしか現れなくなりました、というお話。

②支那事変 攻略の精華 津浦戦線

③支那事変 決死の白襷 上海戦線

④支那事変 荒鷲の猛威 上海戦線  以上3作品は1本に纏めた家庭映写機㈱販売のレフシー(2分20秒)

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